ソフトウェア

Microsoft製品で最も売り上げが悪かったソフトウェアは「OS/2 for the Mach 20」

Computer History Museum/Gift of Douglas Flock

MicrosoftはOSの「Windows」やオフィススイート「Microsoft Office」など数多くのソフトウェアを販売しています。その歴史上、最も売り上げが悪かったソフトウェアが「OS/2 for the Mach 20」だったことが、開発者でありMicrosoftの半公式歴史家でもあるレイモンド・チェン氏によって明かされています。

The worst-selling Microsoft software product of all time: OS/2 for the Mach 20 - The Old New Thing
https://devblogs.microsoft.com/oldnewthing/20221226-00/?p=107615


Microsoftは1980年代半ばに、IBM PCおよびIBM PC XT向け拡張カード「Mach 10」を製造しました。Mach 10には9.54MHzの8086CPUが搭載されており、オンボードの8088CPU(4.77MHz)を外して空いたソケットに取り付けることでIBM PCの性能を2倍に引き上げることができました。マウスポートも備えていたので、拡張スロットを増設することなくマウスを接続できましたが、残念ながら失敗作でした。

それでもめげることなく、Microsoftは1987年に「Mach 20」を製作しました。基本的な思想は「Mach 10」と同様で、8MHzの80286CPUを搭載していました。さらに、80287浮動小数点コプロセッサ用の拡張スロットや高速RAM用・フロッピードライブ用のドーターボードを装備していました。そもそもIBM PCには5つの拡張スロットがありましたが、ハードドライブコントローラー・フロッピードライブコントローラー・ビデオカード・プリンターのパラレルポート・マウスで埋まるため、PCのスロットを消費せずに拡張可能なことは重要なポイントでした。


IBM PC・IBM PC XTの次の世代にあたるIBM PC ATがすでに登場してもなお前世代機を拡張して対応していた理由としては、シンプルに「IBM PC ATを新規導入するよりはIBM PC・IBM PC XTを拡張した方が安い」というのが1つ。そして、当時コンピューターの減価償却期間が7年だったのでそうそう新機種の導入はできず、一方で減価償却まで使っていると陳腐化してしまうため、アップグレードカードによって対応していたという事情が1つです。なお、アップグレードカードはコストが安価なので、オフィス機器予算としてこっそり計上できたというのもメリットだったようです。


チェン氏によると、Mach 20はMach 10よりは売れ行きが良かったとのこと。

そしてMicrosoftはMach 20向けにカスタマイズしたOS/2、「OS/2 for Mach 20」を販売しました。しかし、パフォーマンスに大きな問題があり、当時のサポートスペシャリストによると販売数はわずかに11個。8個は返品されたため、顧客はわずか3人でした。サポートスペシャリストはこのうち2人と連絡を取ることがあったそうです。

チェン氏は、これらの数字が正確であれば、「OS/2 for Mach 20」は出荷されたMicrosoftのソフトウェアの中で史上最悪の売り上げを記録する候補だと思うと述べています。

ちなみに、「OS/2 for Mach 20」を購入した残り1人がどういうユーザーなのかはわかっていません。

Hacker Newsでは、副業でテキサスA&M大学のMicrosoft製品サポートをしていたころに「OS/2 for Mach 20」を触ったというjohnhattan氏がコメントを寄せています。johanhattan氏によれば、大量の古いIBM PC XTをアップグレードする機会があり、DOSとWindows 286は動いたものの、「OS/2 for Mach 20」はどうやってもインストールが完了しなかったとのこと。johnhattan氏はこのことを上司に報告、しばらくして上司は「『機能しない製品』扱いになったので、すぐなくなるでしょう」とjohnhatta氏に告げたとのことです。

Oooh I remember having one of these (with OS/2, no less) back when I had a side-... | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=34139142

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in ソフトウェア, Posted by logc_nt

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