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テスラが航続距離をごまかして週に2000件もの苦情に対応していた疑い


テスラが航続距離推定ソフトウェアを不正に操作し、車両の航続可能距離を水増ししていたとロイターが報じました。この件に関する顧客からの苦情が多すぎて、テスラは苦情対応用の専門部署を作ったそうです。

Tesla’s secret team to suppress thousands of driving range complaints
https://www.reuters.com/investigates/special-report/tesla-batteries-range/


Tesla exaggerated EV range so much that drivers thought cars were broken | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2023/07/tesla-exaggerated-ev-range-so-much-that-drivers-thought-cars-were-broken/

ロイターによると、2013年頃のテスラではソフトウェアの不正操作がまん延しており、満充電で走行できる最大距離を水増しして車のダッシュボードに表示するようなアルゴリズムがいくつか組まれていたとのこと。この不正を指示したのはCEOのイーロン・マスク氏だったと、ロイターが取材した関係者は証言しています。


水増しプログラムが作成されたとされる時点で販売されていた車種はModel 3Model Sだけでした。10年が経過した記事作成時点でもこのプログラムが引き続き使用されているかどうかは不明です。

航続距離の不正表示はユーザーにもわかるレベルだったため苦情が殺到、あまりの多さにテスラは2022年に航続距離に関する苦情に対応する専用部署を立ち上げました。この部署が処理する苦情の数は週に2000件に上るとのこと。

ロイターによると、この部署には対応をキャンセルすることが良しとされる風潮があり、メンバーは極力車両を整備に持ち込ませないようにしていた可能性があるとのこと。「管理職が『予約のキャンセル1件につき約1000ドル(約14万円)を節約できる』と従業員に伝えていた」と関係者は話しています。


実際にテスラに苦情を訴えたというアレクサンドル・ポンサン氏は、2021年式 Model 3で航続距離が正しく表示されないという問題が発生したとのこと。満充電で353マイル(約568km)走れるという表示にもかかわらず、特に寒い天候下では表示の半分しか走れないこともあったそうです。

ポンサン氏はテスラに連絡して車両整備に出すという予約を取りつけましたが、後に「遠隔診断でバッテリーに問題ないことが判明しました」という内容のテキストメッセージを受け取り、整備がキャンセルされてしまったと話しています。

ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも同様の苦情が相次いでおり、「山の中で予想よりも早くバッテリーが消耗してしまい立ち往生した」などのコメントが寄せられています。別のコメントでは「少なくとも25%は誇張して表示されていますが、なぜか目的地を設定すると正確な数値が得られます」との情報が伝えられていました。


公称航続距離の詐称問題については各国の機関も調査を進めており、2023年には韓国の独占禁止法規制当局から「公称値と比較して最大50.5%の減少が見られた」として約220万ドル(約3億円)の罰金を科されています

アメリカの環境保護庁(EPA)もテスラ車を調査しており、公文書公開請求を通じてロイターが入手したデータによると、テスラは同庁から「すべての車の推定航続距離を平均3%引き下げること」を要求されているそうです。

また、電気自動車のバッテリーを調査する民間企業のRecurrentが独自の調査を行ったところ、季節によって航続距離にばらつきがあるとの数値が得られたことが分かっています。


Recurrentは「電気自動車の航続距離というものは、決して一定ではありません。EPAによる航続可能距離の推定値、車両のダッシュボードに表示される航続可能距離の推定値、そして実際の航続可能距離という3つの数字があるのは多くの所有者が知っていることです」と指摘。

さらにEPAの調査について「EPAの基本的な試験プロトコルは、室温の実験室で60mi/h(約96.5km/h)を超えることなく実施されるので、実際の航続距離とはほとんど一致しません」と意見し、EPAが行う電気自動車に対する調査はすべて間違いがあると述べています。

Recurrentの調査により、ダッシュボードに表示される航続距離には気温や運転効率などの外的要素が考慮されず、こうした要素が考慮されるのはドライバーが目的地を設定した時だけであることが分かっています。このため、暑さ寒さによる気温の変化により航続距離が変わるのはもちろん、バッテリー加熱システムの有無や、向かい風や起伏の多い地形といった要因によっても変化し、目的地を設定していない状態で表示される航続距離は実際の航続距離とかけ離れたものになるだろうとRecurrentは述べています。


Recurrentは「他のメーカーも正確な航続距離の推定を完璧にできているわけではない」としつつ、それでも多くのメーカーはテスラ以上に現実に近い数値を出す傾向にあると指摘しました。

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in 乗り物, Posted by log1p_kr

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