サイエンス

短時間の昼寝「パワーナップ」が記憶力や生産性の向上&ストレス軽減などさまざまなメリットをもたらす


近年は適度な昼寝がさまざまなメリットをもたらすことが明らかになっており、短時間の昼寝は「パワーナップ」とも呼ばれ注目を集めています。そこで、パワーナップがもたらすメリットと適切な昼寝の時間について、テキサスA&M大学の臨床准教授であるスティーヴン・ベンダー氏が解説しています。

Short naps can improve memory, increase productivity, reduce stress and promote a healthier heart
https://theconversation.com/short-naps-can-improve-memory-increase-productivity-reduce-stress-and-promote-a-healthier-heart-210449


ベンダー氏は、「日中の昼寝は古代から世界中で行われてきた習慣です。昼寝をぜいたくな楽しみだと考えている人もいれば、覚醒と幸福を維持するための手段と見なしている人もいます。しかし、昼寝にはデメリットとメリットが伴う可能性があります」と述べ、昼寝には豊富なメリットだけでなくデメリットも存在すると指摘しています。

昼寝がもたらすメリットについては多くの研究が行われており、午後の昼寝が認知機能や記憶力を改善するという研究結果や、覚醒度や注意力、反応速度などを改善するという研究結果が報告されています。中国の研究チームが60歳以上の人々を対象に行った研究では、「午後に昼寝をする習慣がある」と答えた人の認知パフォーマンススコアが有意に高いことが判明しました。

「定期的に午後の昼寝をすると認知能力が向上する」という研究結果 - GIGAZINE


また、短時間の昼寝は生産性や創造性の向上にも関連していると考えられており、一部の企業は従業員のクリエイティビティを高めるために昼寝取り入れています。

脳は寝ている間に収集した情報を処理していると考えられていますが、これは昼寝でも同様に見られるため、昼寝が問題解決能力の向上やさまざまな運動スキルの向上につながるそうです。小規模な研究では短時間の昼寝をした人は欲求不満や衝動性が少なく、仕事関連のタスクを実行する際の集中力と効率が向上することも確認されました。

さらに、昼寝はストレスの軽減心血管リスクの低下と関連している可能性も示されています。これは睡眠によって体内のストレスホルモンが減少し、血圧と心拍数が正常化するためだと考えられているとのこと。

スイスに住む約7500人の被験者を最長8年にわたり追跡調査にした研究でも、週に1~2回の昼寝をする人々は心血管疾患を患う危険性が低いことが明らかになっています。

昼寝は心臓発作や脳卒中などのリスクを低減することが研究で明らかに - GIGAZINE


以上のように昼寝には多くのメリットがあることが知られていますが、ベンダー氏は昼寝の欠点についても説明しています。たとえば、約20分程度の昼寝が被験者の気分を改善するという研究結果がある一方で、30分以上の昼寝は気分の改善や幸福感の増加と関連していないとのこと。

また、30分を超える比較的長い昼寝は、「睡眠慣性」と呼ばれる起床直後の強い眠気や不機嫌さをもたらす可能性があります。通常、昼寝する時間が長くなればなるほど睡眠慣性も強くなり、起床後数分~30分にわたり認知機能が損なわれる可能性があるとベンダー氏は指摘しています。多くの場合、睡眠慣性の影響は昼寝の直後にカフェインを摂取することで最小限に抑えられるそうです。

昼寝の時間が長すぎたり、昼寝する時間が夜遅くになったりすると、本来寝るべき時間である夜に眠りにくくなってしまうというデメリットもあります。無理に昼寝をしたせいで定期的な睡眠と覚醒のサイクルが混乱すれば、結果として全体的に睡眠不足となり、健康に悪影響が及ぶ可能性があるとベンダー氏は警告しています。

さらに、高齢者では1時間を超える昼寝が血圧の上昇・高血糖・過剰な体脂肪・メタボリックシンドロームといった問題のリスクを高めるという研究結果もありますが、この理由については詳しくわかっていないとのこと。ベンダー氏は、「高齢者は夜間に眠りにくいこともあって、若い人よりも頻繁に昼寝をする傾向があります。これは、睡眠を妨げる痛みやその他の健康要因、睡眠に影響する薬、加齢に伴う睡眠リズムの変化に関連している可能性があります」と述べました。


ベンダー氏は昼寝のデメリットを軽減しつつメリットを最大化するためのヒントとして、以下の点を挙げています。

・睡眠慣性と夜間の睡眠への悪影響を避けるため、昼寝の時間を短くする。
・可能な限り午後の早い時間帯に昼寝をして、少なくとも就寝時間の4~6時間前には昼寝を終える。
・日中の眠気に苦しんでいる場合は昼寝だけに頼るのではなく、「カフェイン摂取量を減らす」「定期的な睡眠習慣を維持する」「夜に十分な睡眠を取る」といった根本的な対処を行う。

ベンダー氏は、「昼寝は健康的な睡眠ルーチンを補完するものであるべきで、夜間の睡眠の代わりとなるべきではありません。昼寝へのバランスの取れたアプローチにより、活力があって集中でき、回復力のある生活に貢献することができます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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