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AppleはAmazonとだけ「手数料を半額にする密約」を交わしていたことが判明

by Henk-Jan van der Klis

2020年7月29日に、アメリカ下院司法委員会の反トラスト小委員会が開いた公聴会で、「AppleがAmazon Prime Videoから受け取るApp Storeの手数料について特別な取り計らいをする」ことに両社が合意していたことが分かりました。一方、公聴会ではAppleのスティーブ・ジョブズ元CEOが関与した、「iOSでAmazonの書籍を購入できないようにする決定」に関する内部文書も公開されています。

Apple Halved App Store Fee to Get Amazon Prime Video on Devices - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-29/apple-considered-taking-40-cut-from-subscriptions-emails-show

Read Steve Jobs’ emails about why you can’t buy digital books in Amazon’s apps - The Verge
https://www.theverge.com/2020/7/30/21348130/apple-documents-steve-jobs-email-books-amazon-apps-antitrust-investigation-schiller

Documents show Apple gave Amazon special treatment to get Prime Video into App Store - The Verge
https://www.theverge.com/2020/7/30/21348108/apple-amazon-prime-video-app-store-special-treatment-fee-subscriptions

大手テクノロジー企業による、反トラスト法(独占禁止法)違反の調査を目的として開かれた7月29日の公聴会には、Amazon・Google・Facebook・Appleの各CEOが出席し、証言や答弁を行いました。そこでは、公聴会を主催した反トラスト小委員会からさまざまな資料や内部文書が提示され、GAFAの4社による市場の支配や反競争的行為について厳しく追及されました。

Googleのサンダー・ピチャイCEO、Amazonのジェフ・ベゾスCEO、Facebookマーク・ザッカーバーグCEO、Appleのティム・クックCEOによる発言の模様は以下の記事を読むとよく分かります。

Google・Amazon・Facebook・Appleはライバルを一掃して市場を独占しているのか、各CEOの発言はこんな感じ - GIGAZINE


公聴会に出席したクックCEOに対し、反トラスト小委員会は「App Storeにおける手数料が売上の30%もある上に、さらに40%に引き上げることを検討していること」を念頭に、「App Storeの手数料が法外に高い」と指摘しました。これを受けてクックCEOは、「App Storeは門を広く開いています」「すべてのアプリ開発者に対して平等にルールを適用しています」と答弁し、搾取的であるとの嫌疑を否定しました。

App Storeは「門を広く開いている」とティム・クックCEOが市場独占を否定 - GIGAZINE

by YunHo LEE

「すべてのアプリを平等に扱っている」とのクックCEOの答弁に対し、反トラスト小委員会はさらに以下の文書を提示しました。AmazonのベゾスCEOに宛てた2016年のメールの中で、Appleのインターネット関連ソフトウェア・サービス担当シニアヴァイスプレジデントであるエディ・キュー氏は、「ご一緒した時間は本当に楽しかったです。以下は、Prime Videoについて話し合った内容の詳細です」と切り出し、なんらかの会合があったこと示唆。会合で合意に達した事項を要約して、「iOSとApple TVで、Amazon Prime Videoのアプリを使ってサインアップした顧客の売上の15%をシェアする」「アプリ内のストリーミングサービスをアップセルするにあたり、Apple経由でサインアップした加入者の場合は15%のみの支払いとする」などを列記しました。


前述のとおり、App Storeは配信されているアプリ内での売上の30%を手数料として要求していますが、売上の15%を分配する合意をしたということは、事実上手数料を半額にすることを意味しています。


この問題を取り上げた経済紙Bloombergは、「両社の契約に基づき、AppleはAmazon Prime Videoのサブスクリプション料金を15%減らしました。この取引は、『すべてのアプリが平等に扱われているわけではない』という反トラスト小委員会の主張を裏付けているように思われます」と指摘しました。

IT系ニュースメディアThe Vergeによると、この資料を突きつけられたクックCEOは「30%の手数料は初年度のみで、2年目に入ると15%になります」と繰り返し抗弁しましたが、反トラスト小委員会の理解を得ることはできなかったとのことです。

公聴会の調査により、映像配信分野におけるAppleとAmazonの蜜月関係が明かされた一方で、書籍の分野では厳しい対立関係があることも浮かび上がりました。公聴会で示された、Appleのジョブズ元CEOからAppleのワールドワイドマーケティング担当シニアヴァイスプレジデントであるフィリップ・シラー氏に送られた2010年のメールには「彼らが、私たちの決済メカニズムを使用するか、それとも身を引くかを決める時が来ました」と端的に記載されています。


また、ジョブズ元CEOがキュー氏にあてた別のメールには「iBooksがiOSデバイス上で唯一のブックストアになるでしょう」と書かれています。


The Vergeによると、ジョブズ元CEOが最初のメールで「彼ら」と呼んだのはAmazonのことであり、このメールは「Appleが、iPhoneやiPadのユーザーがAmazonのアプリから電子書籍を購入できないようすることを決定した」ことを示すものだとのこと。

かねてから、iPhoneやiPadではAmazonアプリやKindleアプリでの電子書籍購入ができないことが知られており、Amazonの公式サイトでも「iOS版のKindle無料アプリおよびAmazonショッピングアプリは、アプリ内でのKindle本の購入をサポートしていません」と説明されています。

ブラウザを使ってAmazonから購入すれば、iOSユーザーでもiPhoneでAmazonの電子書籍を読むことができるとはいえ、アプリから直接購入できないのは不便です。このことについては、かねてから「電子書籍市場をめぐるAppleとAmazonの確執が原因」とささやかれてきましたが、ジョブズ元CEOが幹部に宛てたメールが公開されたことにより、ウワサが裏付けされた形となりました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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