サイエンス

「ワキガ」の原因となる酵素を研究者が特定、ワキガ臭を抑えるデオドラントの開発につながるかも


脇の下から放たれる刺激的な臭いはワキガとも呼ばれ、体臭のケアに苦心している人もいるはず。2020年7月27日にヨーク大学ユニリーバの合同研究チームが、学術誌のScientific Reportsに掲載した論文で「ワキガの原因となる酵素が特定された」と発表しました。ワキガの原因となる酵素が特定されたことで、ワキガの臭いを効果的に防ぐデオドラントの開発につながる見込みもあるとのことです。

The molecular basis of thioalcohol production in human body odour | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-68860-z

Life in the pits: scientists identify the key enzyme behind BO - News and events, The University of York
https://www.york.ac.uk/news-and-events/news/2020/research/enzyme-body-odour/

Know sweat: scientists solve mystery behind body odour | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2020/jul/27/know-sweat-scientists-solve-mystery-behind-body-odour


人間の体には2種類の汗腺が存在しており、そのうちの1つがほぼ全身の体表面に分布しているエクリン腺、もう1つが脇の下や乳首、生殖器の周囲などに分布するアポクリン腺です。エクリン腺が分泌する汗と比較してアポクリン腺が分泌する汗は成分が濃いため、アポクリン腺はワキガの原因であるといわれています。

しかし、人間の体そのものはワキガの最も刺激的な臭い物質であるチオール化合物を直接生成しておらず、問題は人間の体表面に存在する微生物だとのこと。皮膚に住む微生物が、アポクリン腺から分泌される汗に含まれる化合物を食べることで、ワキガの原因となる物質が副産物として生まれると研究チームは指摘しました。

研究チームは過去の研究で、皮膚に住むほとんどの微生物はチオール化合物を生成しないことを明らかにしました。この時、ワキガの原因となっていたのは主に脇の下に住むStaphylococcus hominisと呼ばれるブドウ球菌の一種で、この微生物がアポクリン腺から分泌される汗に含まれる「Cys-Gly-3M3SH」という無臭の化合物を分解すると、ワキガの悪臭が発生することも判明したそうです。


今回の研究では、さらにStaphylococcus hominisが悪臭を発するメカニズムを詳しく調査して、Cys-Gly-3M3SHからチオール化合物が作られる方法について調べました。その結果、研究チームはStaphylococcus hominisが持っている酵素が、アポクリン腺から分泌されたCys-Gly-3M3SHをチオール化合物に変換することを突き止めたとのこと。

ワキガの原因となる酵素を発見した研究チームは、通常は体臭に影響を与えないタイプのブドウ球菌にこの酵素を分泌する遺伝子を加え、Cys-Gly-3M3SHを与えてみる実験も行っています。その結果、本来はワキガの原因物質を放出しないはずのブドウ球菌が、ワキガのような悪臭を発するようになったと研究チームは述べています。

ヨーク大学の微生物学者であるギャビン・トーマス教授は、「私たちの鼻はチオール化合物を非常に低い濃度で検出することに優れているため、チオール化合物は体臭にとって非常に重要です。チオール化合物はチーズや玉ネギのような非常に特徴的な香りで、信じられないほど刺激的です」とコメントしました。


また、研究チームは何十種ものブドウ球菌間の遺伝的関係を調べ、Staphylococcus hominisがワキガの原因となる酵素を約6000万年前の先祖から受け継いできたことを突き止めました。この結果は、人間が誕生するずっと以前からワキガの原因酵素は存在しており、霊長類の祖先における社会的コミュニケーションにおいて重要な役割を果たした可能性を示唆するとのこと。

トーマス氏は、「私たちが言えるのは、ワキガは新しいプロセスではないということです。人間が進化する過程で、ワキガは間違いなく存在していました」とコメント。今回の研究はユニリーバの研究開発にとっても重要な発見であり、脇の下に住むほとんどの微生物に影響を与えることなく、Staphylococcus hominisを選択的に排除する新しいデオドラントの開発にもつながるかもしれないそうです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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