サイエンス

音楽を習わせても子どもは賢くならないとの研究結果


楽器を演奏すると脳が活性化し、老化が遅くなるといわれてきましたが、新たに「楽器を演奏に子どもを賢くする効果はほとんどない」という研究結果が発表されました。

Put down the banjo, Timmy: study finds learning music won’t make children smart - The National
https://www.thenational.ae/arts-culture/music/put-down-the-banjo-timmy-study-finds-learning-music-won-t-make-children-smart-1.1055974

Music training may not make children smarter after all -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/07/200728201550.htm

楽器の演奏と子どもの知能の関連について研究を発表したのは、日本の藤田医科大学に所属するジョヴァンニ・サラ准教授と、認知心理学の権威として知られるロンドン・スクール・オブ・エコノミクスフェルナンド・ゴベット教授です。サラ氏らは1986年から2019年の間に実施された54件の研究をメタアナリシスで分析し、音楽教育が認知機能や学業成績に及ぼす影響を調べました。

その結果、ダンスやスポーツなどの音楽とは違う技能を学んだ子どもたちを対照群とするといった質の高い研究では、音楽教育が認知機能や学業成績を向上させるという効果は認められませんでしたが、対照群や介入群などの無作為化を行わなかった研究は「わずかな効果が見られた」と結論付けていたことが判明。以上の結果を統合したサラ氏らは、「音楽教育は種類・期間や被験者の年齢に関係なく、認知能力や学業成績を高める効果を持たない」と結論付けています。

従来の調査では、「音楽は子どもを賢くする」といった結論が導き出されることが多く、1990年代に行われた心理学研究が「モーツァルトの『2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448』を聞かせた学生は、空間認識テストにおいて高い成績を示すようになった」と結論付けていたことから、モーツァルトを聴かせると頭が良くなるという「モーツァルト効果」という言葉まで誕生。音楽は知能に良い影響を与えるというのが通説でした。


しかし、サラ氏は「私たちの研究は、『音楽は子どもたちを賢くする』という通説が間違っていることを示しています」と述べ、音楽教育の意義について「子どもの認知能力や学力を高めることを目標に音楽を教えても、無意味かもしれないということです。音楽を演奏することで音楽が得意になるように脳を鍛えられるかもしれません。一方で、音楽を演奏して数学が得意になるというような、一般的な効果は存在しないでしょう」とコメントしました。一方、ゴベット氏は「音楽のトレーニングは社会的スキルや自尊心を高めるという点で、子どもにとって有益である可能性があります」と、知能向上以外の音楽教育の意義について語りました。

なお、日本の文部科学省は中学校における音楽教育の目標について、「表現及び鑑賞の幅広い活動を通して,音楽を愛好する心情を育てるとともに,音楽に対する感性を豊かにし,音楽活動の基礎的な能力を伸ばし,音楽文化についての理解を深め,豊かな情操を養う」と記しており、音楽を通して知能を高めるということは目的にしていません。

第2章 各教科 第5節 音楽:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/on.htm

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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