サイエンス

ニューロンのイオンチャネルが電位差を調節する仕組みをざっくり図解するとこんな感じ


脳を構成する細胞、ニューロン(神経細胞)の仕組みは専門用語が多く、素人にはなかなか分かりにくいものです。そんなニューロンの神経信号伝達に関わる「イオンチャネル」の仕組みについて、神経科学を学び始めた人向けの図表付き解説を、財務会計ソフトウェア「Vena Solutions」技術チームのイオウリ・クラムツォフ氏が公開しています。

The magic of ion channels in the neurons | Iouri Khramtsov
https://i-kh.net/2020/08/26/the-magic-of-ion-channels/

クラムツォフ氏はニューロンにおけるイオンチャネルの仕組みを下記のように解説しています。なお、クラムツォフ氏の解説は主に書籍「Fundamental Neuroscience(神経科学の基礎)」から引用しているとのこと。

まず、ニューロンは細胞体樹状突起(Dendrites)軸索(Axon)によって構成されています。細胞体から分岐した複数の樹状突起は他の細胞から信号を受信する役割を担っており、軸索は他の細胞へ信号を送る役割を持っています。


ニューロンの細胞体はカルシウム・カリウム・ナトリウム・塩素などのイオンに覆われています。ニューロンの表面に存在するイオンチャネルは、特定の条件が満たされた場合にイオンを通過させる小さなバルブのようなものです。イオンチャネルは神経伝達物質などの特定の化学物質と結合して開いたり、細胞内の電位差が高くなると開いたりするものがあります。電位差が高くなると開くイオンチャネルは「電位依存性イオンチャネル」と呼ばれ、ナトリウム・カリウム・カルシウムなどそれぞれのイオンに対応したチャネルが存在します。

以下の図は安定時におけるイオンチャネルの活動について表しています。青い点はナトリウム、青線は電位依存性ナトリウムチャネル、赤い点はカリウム、赤線は電位依存性カリウムチャネルです。中央の黒線の上部がニューロンの外側、下部がニューロンの内側を表します。左上にあるのは細胞内の電位差を示すグラフ。安定時の電位差は-70mV前後で、チャネルはどちらも閉じた状態。


しかし、何かしらの理由でニューロン内外の電位差が-55mVを超えるとナトリウムチャネルが開き、多くのナトリウムイオンをニューロン内に取り込みます。取り込んだナトリウムイオンは正の電荷を持っているので、ニューロン内の電圧は+30mVまで上昇します。その後カリウムチャネルも開き、ナトリウムの正電荷に対抗していくつかのカリウムイオンを放出することで電位差の上昇をゆるやかにします。


ナトリウムチャネルが閉じた後、カリウムイオンを放出させることで電位差が低下し、電位差が-70mVの安定状態に近くなるとカリウムチャネルが徐々に閉じ始めます。各チャネルの開閉は数ミリ秒のスパンで行われており、各プロセスを通して取り込んだり放出されたりするイオンの総数はわずかであるため、ニューロン内外のイオンの全体的な濃度はほとんど影響を受けません。


軸索のイオンチャネルは等間隔に配置されています。イオンチャネルが存在するのは、ニューロン内のミエリン鞘(Myelin layers)という軸索同士の信号伝達を遮断する絶縁体のような物質に覆われていない部分。


ミエリン鞘は中央にシュワン細胞(Schwann cell)を持ち、数十µmの間隔で軸索を覆っています。ミエリン鞘がないランヴィエの絞輪と呼ばれる部分にイオンチャネルが集中しており、以下の青線で書かれた部分がイオンチャネル(Ion channels)です。ミエリン鞘によってイオンチャネルが等間隔に配置されることで、電位差の調節を効率よく行うことが可能になります。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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