サイエンス

翼幅が最大6メートルという「空を飛ぶことが可能な限界サイズの鳥」に関する研究結果が発表される


約5000万年前の南極大陸には、翼の幅が最大で約6メートルと、既知の飛ぶ鳥の中では最大級の体格を誇る鳥が生息していたことを示す研究結果が発表されました。

Earliest fossils of giant-sized bony-toothed birds (Aves: Pelagornithidae) from the Eocene of Seymour Island, Antarctica | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-75248-6

Scientists Reveal What May Be the Largest Flying Bird Ever | Science | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/science-nature/scientists-reveal-what-may-be-largest-flying-bird-ever-180976128/

Antarctica Yields Oldest Fossils of Giant Birds With 21-Foot Wingspans, Fearsome Toothed Beak
https://scitechdaily.com/antarctica-yields-oldest-fossils-of-giant-birds-with-21-foot-wingspans-fearsome-toothed-beak/

今回、空を飛ぶ鳥の中では最大級の鳥についての論文を発表したのは、カリフォルニア大学バークレイ校の古生物学者であるPeter Kloess氏らの研究グループです。同校の古生物学博物館に保管されていた1万点を超す資料を研究していたKloess氏は、その中に「歯が生えた鳥のクチバシ」の化石があるのを発見し、詳しく調べることにしました。

その化石の写真が以下。この化石は、Pelagornithidaeと呼ばれる先史時代の鳥類の下顎の化石です。このクチバシには偽歯と呼ばれる歯のような突起があり、Pelagornithidaeがエサとなる魚類を捕食するのに役立っていたと見られています。


この化石は、カリフォルニア大学リバーサイド校の発掘チームが、1980年代に南極半島東岸のシーモア島で発掘したもの。Pelagornithidaeの化石自体は世界各地で発見されていることから、発見当初この化石は特に注目を浴びず、公開もされないまま大学の博物館に収蔵されていました。

化石の分析を始めた当初の心境について、Kloess氏は「私はこの研究プロジェクトを、クールな鳥類の豆知識を増やすちょっとした報告書になると思っていました」と語っています。

しかし、研究チームが化石を残した個体の頭蓋骨を復元したところ、この個体が既知のPelagornithidaeとしては最大級の体格を誇る個体であると判明。Kloess氏は、偽歯と偽歯の間隔から割り出した体の大きさや、Pelagornithidaeの大きさについて考察した過去の研究結果から、問題の化石の持ち主は翼の幅がおよそ5~6メートルで「これまでに発見された最大の遠洋鳥類の可能性がある」と結論付けました。


現存し、なおかつ空を飛べる鳥類として最大のワタリアホウドリは、広げた翼の幅が最大約3.6メートルとされていますが、Pelagornithidaeはこれを優に上回る体格を誇り、「空を飛ぶことが可能な限界のサイズ」だったとされています。

さらにKloess氏は、博物館にPelagornithidaeの化石がもう1点あるのを発見。この化石は当初、約4300万年~3500万年前の時代のものだと推測されていましたが、Kloess氏らが化石が発掘された地層を改めて検証した結果、この化石は今から約5000万年前のものであることが判明しました。


論文の共著者であるThomas Stidham氏は、Pelagornithidaeについて「現代のアホウドリに似た生活をしていたと思われるこの絶滅した巨鳥は、非常に長く鋭い形状の翼を持ち、クジラなどがまだ海を支配していなかった時代の外洋を飛び回っては、鋭利な偽歯が並んだクチバシで魚やイカを捕食していたと考えられます。Pelagornithidaeは、大きな個体ではアホウドリの2倍近くにまで達するとみられるため、生態系の頂点に君臨すべく進化した恐ろしい捕食者だったはずです」と話しました。

またKloess氏は、1980年代に発見された化石が今回新たな知見をもたらしたことについて、「この標本が人目に触れなければ、今回の発見はなかったでしょう。この化石が、研究者が調査できるような形で存在しているという事実は、信じられないほどの価値があることです」とコメントしました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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