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「1月分が10万円超」と高騰するインスリンを「バイオハッカー」が団結し自ら開発


糖尿病患者に必要とされるインスリンは、アメリカにおいてその価格の高騰が問題視されています。企業に頼らず自分たちの手でインスリンを開発しようともくろむ非営利組織のオープンインスリン財団が、次第に活動の輪を広げつつあります。

Biohackers Figure Out How To Make Insulin 98% Cheaper | Freethink
https://www.freethink.com/shows/just-might-work/how-to-make-insulin

オープンインスリン財団は「オープン・インスリン・プロジェクト」という名前で2015年に発足した組織です。1型糖尿病を患うコンピューター科学者だったAnthony Di Franco氏がインスリンの価格高騰の波を受け、「自分たちでインスリンを作ってしまえば価格高騰問題を解決できる」と考えたのが始まり。生化学者ら20人が参加するこの組織は「自身らで開発した薬でFDAの承認を得ること」「製造レシピをオープンソースにして病院や患者向けに提供すること」を目標に活動を行っています。

「薬が高ければ自分で作ればいい」とバイオハッカー集団が特許フリーなインスリンの開発を目指す「オープン・インスリン・プロジェクト」 - GIGAZINE


こういった活動が大きな注目を集めているのは、アメリカで大きな問題となっているインスリンの価格高騰に理由があります。インスリン接種の方法は、一般的にバイアルという容器に入った製剤を注射器で吸い出して体内に注射する方法と、注射針を取り換えて使うペン型の機器を使用する方法の2種類があります。ペン型より安価なバイアルでも、1つあたりの価格は約160ドル(約1万8000円)~約450ドル(約5万円)ほどで、諸外国の10倍以上の値段が付けられています。糖尿病患者の約90%を占めるとされる2型糖尿病患者は月に3つほどのバイアルを用意する必要があり、さらに注射器などの消耗品の購入にも出費がかさみます。


このような価格である理由は、アメリカの複雑な保険制度が絡んでいるためであったり、インスリンの市場の90%を大手製薬会社3社が独占しているためであったりとさまざま。アメリカ糖尿病学会も低所得者層の糖尿病有病率が近年上昇していると指摘し、下院エネルギー・商業委員会でインスリンの価格を引き下げるよう述べたとのこと。

オープンインスリン財団は6年にわたりインスリンの開発を続けていますが、目標の実現には至っていません。しかしオープンインスリン財団は発足当初にクラウドファンディングで1万6000ドル(約180万円)を集めたほか、2020年11月30日にはクラウドファンディングで約1万2000ドル(約140万円)を集め、注射器を製造するプロトコルでアメリカ食品医薬品局の承認を得るなど、大きな進歩の兆候が見られます。オープンインスリン財団はインスリンの価格を大手会社の2%に抑え、バイアル1つあたり5ドル(約550円)~15ドル(約1700円)という低価格で提供できると見積もっています。


Franco氏は「私たちの計画は、必要とされる地域のどこででも運用できる現地生産のシステムを作り上げることです」と述べており、学術機関やNGOと協力して活動を進めています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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