生き物

恐竜は小惑星衝突の前から衰退の道をたどっていたという研究結果


恐竜はかつて地球上に広く生息していましたが、約6600万年前に直径およそ10~15kmの小惑星が地球に衝突した影響で絶滅したと言われています。ところが、新たな研究結果により、「小惑星が衝突する前から恐竜は衰退し始めていた」可能性が示唆されています。

Dinosaur biodiversity declined well before the asteroid impact, influenced by ecological and environmental pressures | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-021-23754-0

Dinosaurs were in decline before the end, according to new study
https://phys.org/news/2021-06-dinosaurs-decline.html

Large Dinosaurs Were Prone to Extinction Way Before The Asteroid, New Study Argues
https://www.sciencealert.com/non-avian-dinosaurs-were-in-decline-before-extinction-asteroid-hit-earth

約6600万年前、音速の60倍というスピードで大気圏に突入した巨大な小惑星が、メキシコ・ユカタン半島に衝突しました。この衝突によって核兵器数十億個分ものエネルギーが放出され、小惑星自体はすぐに蒸発し、半径約1500kmに存在する全てのものを焼き尽くしたとのこと。

その後、小惑星の60倍に相当する質量のデブリが宇宙空間にまき散らされ、マグニチュード11クラスの衝撃が地球全域に伝わり、インド亜大陸で3万年にわたる火山噴火が続き、高さ1000mの津波が発生するなど、信じられないほどの大災害が動植物を襲ったそうです。そして、衝突に伴って蒸発した岩石や山火事で発生したすすが太陽光を遮り、蒸発した大量の硫黄が空気中の酸素と結びついて生成された硫酸塩エアロゾルが地球を冷却した結果、大規模な気候変動が起きて大量の生物が絶滅したと考えられています。


一般的には、それまで繁栄していた恐竜が小惑星の衝突によっていきなり絶滅したという認識がありますが、古生物学者の間では、「小惑星が衝突する以前から白亜紀末の地球では大陸分裂に伴う海面上昇や寒冷化といった環境の激変が生じており、恐竜はその影響を受けて絶滅に向かっていた」という可能性についての議論がなされてきました。

2016年には「小惑星の衝突以前から恐竜が衰退していた」という系統学的な研究が発表されましたが、これは化石記録に基づいた分析であり、不確実性が高いことから論争の的になっているとのこと。そこで、フランス・イギリス・カナダの国際的な研究チームはベイズ統計に基づいたモデルを使用し、白亜紀のものである1600を超える恐竜の化石について、化石データのバイアスや年代に関する不確実性を考慮に入れた上で種分化や絶滅率を評価しました。

分析の結果を示したグラフがこれ。縦軸が恐竜の種類、横軸が時間を示しており、茶色が「Ankylosauridae(アンキロサウルス科)」、オレンジ色が「Ceratopsidae(ケラトプス科)」、緑色が「Hadrosauridae(ハドロサウルス科)」、青色が「Dromaeosauridae(ドロマエオサウルス科)」、紫色が「Troodonitdae(トロオドン科)」、赤色が「Tyrannosauridae(ティラノサウルス科)」を表しています。小惑星の衝突を示す右端のK-Pg境界に至る1000万年ほど前から、徐々に恐竜の多様性が減少していることがわかります。


以下のグラフは、左が恐竜全体の種分化率(青色)と絶滅率(赤色)を表したもの、右が恐竜全体の多様性率を表したもので、いずれも横軸が時間を示しています。両グラフを見ると、小惑星が衝突する以前から恐竜の絶滅率が上昇し、多様性が減少していることが見て取れます。


研究チームによると、小惑星が衝突するより1000万年も古い7700万年前頃から、恐竜の多様性が減少し始めていたとのこと。フランス・モンペリエ大学の進化科学研究所に所属するFabien Condamine氏は、「私たちは1億5000万年前から6600万年前までの白亜紀全体にわたって、最も繁栄した6つの恐竜科を調べました」「7600万年前に、彼らは突然下降線をたどりました。絶滅率は上昇し、新種の発生率が減少する場合もありました」と述べています。

白亜紀末における恐竜の衰退は地球の寒冷化が原因の可能性があるそうで、研究チームは論文の中で「今回の結果は、暖かい時期は恐竜の多様化に有利でしたが、寒い時期は絶滅を促進したことを示唆しています」と指摘。特に大型の恐竜は、体温を安定させるために温暖な気候が必要だったため、寒冷化の影響を受けやすかった可能性があるとのこと。また、ウミガメのように温度によって胚の性別が変化する場合、気温が下がったことで子孫の性別に偏りが生じ、多様性を喪失させたという仮説も考えられます。

さらに、恐竜の生態系がどのように衰退していったのかを見ると、草食の恐竜が最初に絶滅する傾向が明らかになりました。草食恐竜は食物連鎖の下層をなしているため、先に草食恐竜が消えたことでその上層に位置する肉食恐竜も影響を受けた可能性があるそうです。

Condamine氏は、「これは生物の進化において重要な瞬間でした。地球は1億6000万年以上にわたって恐竜に支配されており、彼らが衰退すると共に哺乳類を含む別のグループが支配的になりました。恐竜の多くは巨大だったので、毛皮のある小さな哺乳類が足元にいることに気付きにくかったでしょう。しかし、恐竜が絶滅する前に哺乳類の数が増え始め、小惑星が衝突した後に今日のような新たな生態系を作るチャンスを得たのです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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