サイエンス

磁石で強制的に口を開かなくさせる究極の肥満対策器具が登場、「拷問器具」との批判も


世界的な問題となっている肥満を解決するため、ニュージーランドとイギリスの研究チームが「磁石で強制的に口を開かなくさせる肥満対策器具」を開発しました。ところが、口を閉じさせて流動食のみの生活を送らせるこの器具については、非人道的だと批判する声も挙がっています。

An intraoral device for weight loss: initial clinical findings | British Dental Journal
https://doi.org/10.1038/s41415-021-3081-1

28 June 2021, Researchers develop world-first weight loss device, Media releases, University of Otago, New Zealand
https://www.otago.ac.nz/news/news/releases/otago830110.html

Researchers trial magnetic 'lockjaw' against obesity - France 24
https://www.france24.com/en/live-news/20210629-researchers-trial-magnetic-lockjaw-against-obesity

Mouth torture or weight loss? This device clenches jaws for diet - Afrinik
https://afrinik.com/mouth-torture-or-weight-loss-this-device-clenches-jaws-for-diet/

ニュージーランド・オタゴ大学の研究者らがイギリスの研究者と協力して作った肥満対策器具「DentalSlim Diet Control(デンタルスリム・ダイエット・コントロール)」の写真が以下。独自に製造した締め付けボルトで奥歯の上下に取りつける口腔(こうこう)内器具であり、磁石の力によって強制的に口を閉じさせるため、装着中はわずか2mmしか口を開くことができないとのこと。


デンタルスリム・ダイエット・コントロールを装着しても呼吸や発話が妨げられることはありませんが、口が開かないので固形の食べ物を口に入れることができなくなります。そのため、食事を流動食のみに制限することができ、肥満に苦しむ人の減量を助けられると研究チームは主張しています。

研究チームは、実際に7人の肥満の被験者を集め、デンタルスリム・ダイエット・コントロールを装着して2週間生活してもらう実験も行いました。被験者は2週間にわたり市販の流動食を飲んで生活し、装着から1日後、7日後、14日後、そして器具を外してから2週間後のタイミングで面談を行い、生活の質や器具の快適さに関して回答しました。被験者は全員が女性であり、平均年齢は36.71歳、平均体重は107.98kgでした。また、被験者のうち1人が研究とは関係ない理由で装着から8日後に器具を外し、1人が器具を外してから14日後の面談に出席できなかったとのこと。

実験の結果、被験者は平均して6.36kgの減量に成功したことが判明しました。また、面談では味覚の変化や何かを飲み込む際の不快感などはほとんど報告されませんでしたが、いくつかの言葉を発するのが困難だったり、たまに不快感や生活の質の低下を実感したりするとの報告もあったそうです。しかし、被験者は今回の結果に満足しており、今後の実験にも参加する意欲を見せたと研究チームは述べています。


論文の筆頭著者であり、オタゴ大学の健康科学部で副学長代理を務めるポール・ブラントン教授は、デンタルスリム・ダイエット・コントロールは肥満と闘う人々にとって効果的かつ安全で、手頃な価格で入手可能なツールになるだろうと主張。「減量の成功における主要な障壁はコンプライアンスです。この器具は人々が新たな習慣を確立するのを助け、低カロリーの食事を一定期間順守できるようにします」と述べています。

また、1980年代には人々の顎を外科的にワイヤーで固定する減量手法も存在しましたが、これは嘔吐(おうと)や窒息のリスクを伴ったほか、歯周病や精神面の問題も生じるものだったとのこと。一方、デンタルスリム・ダイエット・コントロールは非侵襲的であり、緊急時には取り外したり再び装着したりすることも可能です。ブラントン氏は、「この器具の美点は、患者が装着してから2~3週間で磁石を外すことができる点です。その後、食事制限がない期間を過ごしてから、再び治療に戻ることができます」「これにより、栄養士のアドバイスに基づいた段階的な減量アプローチが可能になり、長期的な減量目標を実現できるようになります」と述べました。

研究チームはデンタルスリム・ダイエット・コントロールの有用性をアピールしていますが、研究結果を発表して以降、ソーシャルメディア上でさまざまな批判を浴びています。かつて親から自分の意思に反してワイヤーで顎を固定する減量手術を受けさせられたというJacqui Cheng氏は、「これは恐ろしいものです。間違いなく、子どもを支配する虐待的な親によって使われるでしょう」とコメント。

This is horrifying and it’ll definitely be used by controlling, abusive parents on their kids. https://t.co/yxy4Zr1ZF0

— Jacqui Cheng, PhD Blogger School of Hard Knocks (@ejacqui)


また、「あなたたちは気持ち悪い。恥を知るべきです」という痛烈な意見や……

Y'all are creepy, get help, please acquire a sense of shame

— Kristin Chirico (@lolacoaster)


「流動食ダイエットに、この拷問器具は必要ありません」という非難の声も寄せられています。

You don’t need this torture device to go on a liquid diet. I did slimfast in the 90s and lost a tonne of weight quickly. I also started vomiting, taking laxatives and exercising obsessively. I put all the weight back on when I gave that up, but the damage it did is still with me.

— Platinum Pixie (@platinumpixienz)


こうした状況を受けてオタゴ大学は、デンタルスリム・ダイエット・コントロールが迅速または長期的な体重減少ツールとして開発されたものではなく、減量手術を受ける必要があるものの、手術を受けられない人向けの器具だと補足のツイートを行っています。また、2~3週間で器具を外し、食事制限がない期間を過ごしてから治療に戻れることも説明しました。

After two or three weeks they can have the magnets disengaged and device removed. They could then have a period with a less restricted diet and then go back into treatment. This would allow for a phased approach to weight loss supported by advice from a dietician.

— University of Otago (@otago)

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
胃の中から電気パルスを流して脳を「満腹だ」と錯覚させる減量用デバイスが開発される - GIGAZINE

食べ物を胃の中から直接チューブで外へ出して体重を減らしダイエットを助ける「AspireAssist」 - GIGAZINE

ダイエットせず脳をだまして肥満を終わらせる画期的な器具が登場 - GIGAZINE

食べ物の大きさを変えることで満腹感をもたらすダイエット装置 - GIGAZINE

着るだけでカロリーをどんどん消費していくベストをNASAの科学者が開発 - GIGAZINE

肥満の人の体重を平均で約15%も減少させる薬が発見される - GIGAZINE

体重を15%減らす薬「Wegovy」が当局の承認を受け2021年6月中に発売予定 - GIGAZINE

in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.