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「見知らぬ他人のことを思いやるかどうか」を31カ国で比較した実験で日本が1位に


「友人や知人ではない見知らぬ他人」に対して思いやりの気持ちを示すかどうかは、個人の性格や信念だけでなく、文化によっても左右される可能性があります。新たに、31カ国の研究者が参加した国際的な研究チームが、「31カ国に住む8354人の被験者」を対象に見知らぬ他人を思いやる傾向について調べた結果を発表しました。

Social mindfulness and prosociality vary across the globe | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/35/e2023846118

Social mindfulness varies across the globe - Leiden University
https://www.universiteitleiden.nl/en/news/2021/08/social-behaviour-niels-van-doesum

Not All Cultures Are Equally Mindful of Strangers – Here's How Your Country Ranks
https://www.sciencealert.com/not-all-cultures-are-equally-mindful-of-strangers-here-s-how-your-country-ranks

近年は、現在の自分が体験していることに注意を払う「マインドフルネス」が重視されていますが、これとは対照的に他人の状況や意思に注意を払うことを「Social mindfulness(社会的マインドフルネス)」と呼びます。社会的マインドフルネスを強く持っている人は、自分の選択が他人にどのような影響を及ぼすのかを考え、「他の人が望んでいるかもしれないもの」に応じて自分の行動を変える傾向があるとのこと。

31カ国の合計64人の研究者からなる国際的な研究チームは、それぞれの国に住む被験者を対象にして、社会的マインドフルネスの度合いを調べる実験を行いました。実験では、被験者に「1個の赤いリンゴと2個の青いリンゴが入ったボウルから1個を選んで持っていく。その後、知らない誰かが同じボウルに残った2個から1個を選んで持っていく」といった架空の状況を提示し、どのリンゴあるいは他のオブジェクトを持っていくのかを尋ねました。


もし被験者が青いリンゴを持っていけば、次に選ぶ人物は「1個の赤いリンゴと1個の青いリンゴ」から好きな方を選択できますが、被験者が赤いリンゴを持っていけば次の人物は「2個の青いリンゴ」から1個を取るしか選択肢がなくなってしまいます。このシチュエーションでは、青いリンゴを選択することで次の人に選択肢を残した被験者が、「社会的マインドフルネスを持っている」とみなされます。研究チームはリンゴを他のオブジェクトに変えたり、個数を変えたりして同様のシチュエーションを複数回提示し、被験者の社会的マインドフルネスを測定しました。

今回の実験で被験者となったのは主に18~25歳の学生であり、31カ国から合計8354人の有効回答が得られたそうです。参加した国の内訳は、アメリカ・カナダ・メキシコ・チリ・アルゼンチン・イギリス・スウェーデン・フランス・スイス・オランダ・ドイツ・スペイン・ポルトガル・ベルギー・ポーランド・オーストリア・チェコ・ルーマニア・ギリシャ・ロシア・日本・韓国・中国・香港・シンガポール・インド・インドネシア・トルコ・南アフリカ・オーストラリア・イスラエルでした。

実験の結果が以下の通り。「SoMi」(緑色の棒)は社会的マインドフルネスの度合いを示しています。


社会的マインドフルネスの度合いが高い国は、1位から順に日本、オーストリア、メキシコ、イスラエル、チェコ、スイス、オランダ、シンガポールと続いており……


低い国はアメリカ、カナダ、韓国、ギリシャ、香港、南アフリカ、インド、トルコ、インドネシアとなっています。論文の筆頭著者であるオランダ・ライデン大学の心理学者であるNiels van Doesum氏は、「私たちは研究結果に価値基準を付けることはありません。重要なのは『違いがある』ということです。それは私たちが期待していたことですが、科学的に証明されていませんでした」とコメント。あくまでも今回の結果は文化的な違いを示すものであり、「社会的マインドフルネスが高い国の方が優れている」といった優劣を付けるものではないと述べました。


今回の実験は物質的なコストがほとんど介在しないものであり、測定された社会的マインドフルネスは「小さな注意や親切」を伴うものでした。研究チームは論文中で、「コストが低い他人との協力はかなり一般的な現象ですが、経験主義的にほとんど注目されていません」と述べ、金銭や大きな労力が介在する状況とは分けて研究する必要があると主張しています。

なお、社会的マインドフルネスの違いは「他人への信頼感」「教育のレベル」「経済的な状況」「宗教的価値観」などに影響を受けているとみられていますが、この点を理解するにはさらなる研究が必要です。研究チームは、社会的マインドフルネスなどの研究が「人が他人をどのように扱うのか」に関する理解を深め、移民や外交といった問題を考える上でも重要だと考えているとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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