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ビットコインの採掘企業が「原子力発電」と手を組む動きが進んでいる、環境に優しい電力源として


ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、取引の処理に必要となる複雑な計算作業にコンピューターの演算能力を提供する「マイニング」で採掘することが可能であり、近年は仮想通貨のマイニングを専門とする企業も設立されています。マイニングは多くの電力を消費することから「環境に悪い」と批判する声も上がっていますが、ビットコイン採掘企業が環境に優しい電力として「原子力発電」に目を付けていると報じられています。

Bitcoin Miners Eye Nuclear Power as Environmental Criticism Mounts - WSJ
https://www.wsj.com/articles/bitcoin-miners-eye-nuclear-power-as-environmental-criticism-mounts-11632654002

Bitcoin Miners Go Nuclear in Search of Clean Energy - Decrypt
https://decrypt.co/81974/bitcoin-miners-go-nuclear-search-clean-energy

仮想通貨のマイニングを効率的に行うには大量のコンピューターを導入した大規模な施設が必要であり、稼働するために膨大な電力を消費しています。この点から、仮想通貨は環境に悪いと批判する声が上がっており、過去にはMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏が「ビットコインは必要電力が大きいため地球の気候によくない」と発言したほか、テスラのイーロン・マスクCEOは「私は仮想通貨を信じていますが、仮想通貨により化石燃料の使用、特に石炭の使用量を大きく増加させることはできません」と発言しています。

イギリスのケンブリッジ大学が公開した「ビットコイン電力消費指数(Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index/CBECI)」によると、ビットコインのマイニングによる消費電力量は、世界の総消費電力量のうち0.57%を占めているとのこと。マイニングによる1年当たりの消費電力は、オランダやアラブ首長国連邦の1年当たりの総消費電力量よりも多く、国ごとの総消費電力量ランキングに並べると31位に相当するなど、1国の総消費電力を上回っていると指摘されています。

国家レベルの電力を消費するビットコインマイニングの消費電力量をケンブリッジ大学が分かりやすく解説 - GIGAZINE


環境問題に関する批判が強まる中、エコでクリーンな電力源を求めるビットコイン採掘企業は、「原子力発電企業」と手を組む動きを加速させています。2021年8月には発電会社のTalen Energy Corpがビットコイン採掘企業であるTeraWulfとの合弁事業を開始することを発表し、ペンシルベニア州の原子力発電所に隣接する敷地にアメリカンフットボール場4つ分の広さを持つマイニング施設の建設を開始。また、原子力発電事業を手がけるEnergy Harbor Corpは2021年12月から、ビットコイン採掘企業のStandard Powerがオハイオ州に持つ施設に電力を提供することを発表しています。

ビットコイン採掘企業と手を組むのは既存の原子力発電企業だけではありません。出力1.5メガワットの小型原子炉「Aurora」を開発するスタートアップ・Okloは、ビットコインのマイニング設備を提供するCompass Miningと20年間の電力供給契約を締結。この契約では電力価格の設定は含まれておらず、記事作成時点では連邦政府の承認を得られていないAuroraの稼働は2023年以降になるとみられていますが、Compass MiningのCEOを務めるWhit Gibbs氏は、収益性の高い仮想通貨マイニングを可能にする価格で両社が合意できると確信していると述べました。

これらの提携は、環境問題で批判にさらされているビットコイン採掘企業だけでなく、原子力発電企業にとってもメリットがあるものです。原子力発電は炭素を排出しないクリーンな電力源としてもてはやされてきましたが、近年は再生可能エネルギーや安価な天然ガスを用いた発電との競争に苦戦しており、多くの原子力発電所が電力の販売先を見つけられず廃炉に追い込まれているとのこと。アメリカエネルギー情報局(EIA)によると、原子力発電所の廃炉のペースが建設のペースを上回っており、アメリカの発電比率における原子力の割合は今後数年で減少すると予想されています。

また、フランシス・スアレス市長は、発電会社のフロリダ・パワー・アンド・ライトネクステラ・エナジーが所有する原子力発電所をアピールし、暗号資産の採掘業者や取引所の誘致を行っています。スアレス氏は、マイニングによる環境への懸念はその多くが石炭生産国で行われていた事実に起因すると述べており、原子力発電と手を組むことでクリーンなマイニングが可能だと示唆しました。

エネルギーアドバイザリー企業・Customized Energy Solutionsでディレクターを務めるBill Dugan氏は、今後も原子力発電とビットコイン採掘企業の提携は増えると予想していますが、マイニング事業だけでは閉鎖の危機に直面する全ての原子力発電所を救うことは無理だろうと指摘しています。


ビットコイン採掘企業が原子力発電企業と手を組む動きが活発化する一方で、化石燃料に由来する燃料を用いる発電企業も、採掘企業と手を組む動きを活発化させています。

Bitcoin miners align with fossil fuel firms, alarming environmentalists
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/bitcoin-miners-align-fossil-fuel-firms-alarming-environmentalists-n1280060

ペンシルベニア州で石炭加工の廃棄物である廃炭を利用する発電を行うScrubgrass発電所は、ビットコイン採掘企業であるStronghold Digital Miningと提携しています。近年は財政破綻の危機に瀕していたScrubgrass発電所ですが、記事作成時点では発電所に隣接するコンテナに設置された約1800台の暗号資産採掘コンピューターに電力を供給しているとのこと。

仮想通貨が環境に与える影響を追跡するオランダの経済学者・Alex de Vries氏は、ビットコインのマイニングには安価なエネルギーが必要なだけでなく、マイニング設備を年中無休で稼働させられる安定性も重要だと指摘。化石燃料を用いた発電はこの点を満たしているため、ビットコイン採掘企業は既存の化石燃料を用いる発電施設を復活させていると述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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