サイエンス

アマゾン奥地でこれまで知られていなかった「古代都市」の遺跡を上空からのLIDAR調査で発見


南アメリカ・ボリビアの熱帯雨林に覆われた「古代都市」の存在が、ヘリコプターに搭載したレーザースキャナーを用いたLight Detection and Ranging(光検出と測距/LIDAR)による調査で明らかになりました。古代都市を建設した人々はかなり高い文明を持っており、巨大なピラミッドを中心に道路や運河のネットワークを築き、農耕や魚の養殖を行っていたとみられています。

Lidar reveals pre-Hispanic low-density urbanism in the Bolivian Amazon | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-022-04780-4

Large-scale early urban settlements in Amazonia
https://doi.org/10.1038/d41586-022-01367-x

Forgotten Ruins of 'Monumental' Amazonian Settlements Discovered in Bolivian Jungle
https://www.sciencealert.com/ruins-of-monumental-settlements-uncovered-in-bolivian-jungle

Lasers reveal 'lost' pre-Hispanic civilization deep in the Amazon | Live Science
https://www.livescience.com/lidar-reveals-pre-hispanic-amazon-settlements

今回ドイツやイギリスの国際的研究チームが行った調査は、ボリビア北東部ベニ県リャノス・デ・モホス(モホス)という地域にあった古代カサラベ文化(Casarabe culture)の遺跡を見つけることが目的でした。500年~1400年頃に繁栄したとみられる古代カサラベ文化については、これまでいくつかの遺跡が発見されていたものの、リャノス・デ・モホスの貧しい熱帯土壌では大規模な文明や都市は維持できないとみられていたとのこと。

研究チームはヘリコプターに搭載したLIDARを使用して、古代カサラベ文化の中心部とみられる合計204平方キロメートルにまたがる6つの地域をスキャンし、熱帯雨林の下に隠された遺跡の痕跡を探しました。その結果、2つの大きな遺跡と24の小さな遺跡からなる広大なネットワークが発見され、これらのネットワークが道路で結ばれていたこともわかりました。それぞれ「Cotoca」「Landívar」と呼ばれる2つの大きな遺跡と、15の小さな遺跡の存在は以前から知られていましたが、9つの小さな遺跡は今回初めて発見されたとのこと。

Cotocaを撮影したLIDARデータに高低差を示す色を着けたものがこれ。広範囲にわたり土地が盛り上がった場所に都市が建設され、中央には最大22mのピラミッドがそびえ立っていることがわかります。古代カサラベ文化の人々はCotocaの建設に当たり57万立方メートルもの土を動かしたとみられており、当時の人々は高度な土木建築技術を有していたことが示唆されています。なお、CotocaとLandívarはいずれもピラミッドを有しており、何かしらの宗教的世界観を有していたことは確かですがその詳細は不明です。


CotocaとLandívarは道路・貯水池・運河からなる地域ネットワークの中心的なハブとなっており、道路や水路は放射状に広がっていました。これは古代カサラベ文化における景観と労働の管理を示すものだとのこと。大きな集落の外側にある24の小さな集落でさえ、それぞれ数千人もの人々が住んでいた可能性があるそうです。論文の筆頭著者であるドイツ・ボン大学の考古学者Heiko Prümers氏は、「1時間歩くだけで別の集落にたどり着くことができます」「これは、スペイン統治前のこの地域が非常に人口密度が高かったことを示しています」と科学系メディアのLive Scienceに語っています。


リャノス・デ・モホスは低地の熱帯サバンナであり、乾期にはまったく雨が降らないものの11月~4月の雨期には大部分が浸水するとのこと。古代カサラベ文化では運河や貯水池により季節的な洪水を管理し、隆起した地域でトウモロコシなどの作物を栽培したほか、いくつかの貯水池では魚の養殖を行っていた可能性があるとみられています。

古代カサラベ文化はスペイン人の入植が始まる100年以上前、1400年頃に衰退したと考えられているとのこと。Prümers氏はその理由について、気候変化により雨期に依存していた水管理システムが崩壊し、水不足が発生したことが原因ではないかと推測しています。


今回の研究結果は、スペイン統治以前のアマゾン西部にはまばらな集落しかなかったという説を否定し、古代カサラベ文化が高度に統合されて密集した入植システムと、階層化された複雑な社会システムを持っていたことを示すものです。

コロラド州立大学の考古学者であるクリストファー・フィッシャー氏は今回の研究結果を受けて、かつては過酷なフィールドワークを数年継続して収集できたデータが、今ではLIDARにより1回のフライトで可能になっていると指摘。しかし、依然として現地調査から発見される古代の遺物は過去を知る重要な手がかりであり、完全に考古学的な証拠がなくなる前に調査する必要があると主張しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
絶滅した巨大動物などが描かれた1万2000年前の壮大な壁画がアマゾンの熱帯雨林で発見される - GIGAZINE

アマゾン盆地に点在する「小さな森」が1万年以上昔に農業が行われていた痕跡だと判明 - GIGAZINE

古代人が行った土壌改革がアマゾン川流域の生物多様性を生み出しているとの研究結果 - GIGAZINE

古代マヤ文明の都市が放棄されたのは「水が毒で汚染されたから」という可能性 - GIGAZINE

マヤ文明のエリート外交官の栄華と没落が発掘調査により明らかに - GIGAZINE

15歳の少年がマヤ文明の失われた都市をGoogleマップで発見したというのは間違いだと報じられる - GIGAZINE

ドローンがアマゾンの奥地で外界と接触したことがない部族の激写に成功 - GIGAZINE

ストーンヘンジのように奇妙な環状構造をしたクモの巣「シルクヘンジ」 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.