里見香奈女流四冠が女性初となるタイトル戦本戦進出を達成

第48期棋王戦コナミグループ杯の予選で、里見香奈女流四冠が古森悠太五段を下し、本戦への進出を決めました。女流棋戦ではないタイトル戦で、女性が本戦に進出したのはこれが史上初のことです。

棋王戦コナミグループ杯 ｜棋戦｜日本将棋連盟
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戦いはお互いに飛車を振る相振り飛車で始まり、その後、里見女流四冠が居飛車に戻すという形で進行。里見女流四冠が盤面右側から押し込んでいき、自玉を安全に保ってしっかりと勝ちきりました。

本戦進出を決めたことについて、里見女流四冠は「自分でもここまでは勝てると思っていませんでした。実力以上のものが出せたかなと思います。もう1局多く指せることがうれしいです」と語りました。

また、今回の勝利を受けて、直近の公式戦成績が10勝4敗となった里見女流四冠はプロ棋士編入試験の資格を獲得。これも女性としては初のことで「すごく光栄なこと」と述べた一方、試験受験については「あまり考えていなかったので(笑) 今日も勝てるとは思っていなかったので、また考えたいと思います」と語りました。

古森五段は、里見女流四冠がさまざまな将棋を指すことから、どういった戦型で来るか予想が付かず、結果的に「想定外の将棋になってしまった」と振り返りました。

「出雲のイナズマ」の異名を持つ里見女流四冠は女流育成会を経て2004年に女流棋士としてプロ入り。2008年に初タイトルの倉敷藤花を得ると、2010年には女流名人と女流王将も奪取し、史上最年少の女流三冠に。

2011年からはプロ棋士の養成機関である奨励会に入会。2012年に女流王位を獲得して女流四冠に、2013年には女王を獲得して女流五冠となりました。このあと、タイトルはいったん二冠まで後退するも、女流王座を獲得して三冠に復帰。また、女性初となる奨励会二段、そして奨励会三段への昇段を果たしました。

しかし、四段昇段(プロ入り)を賭けた三段リーグ開幕の前から体調不良のため約2年間休場。女性として初めて三段リーグで勝利を挙げるも、2018年、26歳の年齢制限により奨励会退会が決定。以後は女流棋士として活躍し、史上初の六冠も達成しています。

ちなみに、プロ棋士編入試験の試験官は「新四段5名を棋士番号順に選出」と定められているので、もし試験官をただちに選出するとすれば棋士番号328・高田明浩四段、棋士番号329・横山友紀四段、棋士番号330・狩山幹生四段、棋士番号331・岡部怜央四段、棋士番号332・徳田拳士四段の5名ということになります。

・追記
19時36分ごろから里見女流四冠による記者会見が開催されました。以下、内容を簡潔にまとめました。

共同通信：
本戦入りした気持ちは？

里見香奈女流四冠(以下、里見)：
今日の対局を含め、ここまで勝てると思っていなかったので、また1つ多く対局できるということで、すごくうれしいです。

共同通信：
まだ本戦の組み合わせは決まっていませんが、意気込みをお願いします。

里見：
ずっと厳しい戦いではあるんですけれど、自分の力が出し切れるようにがんばりたいと思います。

共同通信：
編入試験は今後考えたいとのことですが、女性初の資格獲得ということについては？

里見：
勝率を上げられたことについては素直にうれしい気持ちがあります。自分の中では、それとは別に編入試験があるという感じです。今まであまり考えなかったので、また考え直したいと思います。

共同通信：
ちなみに10勝4敗という成績、自分の中での手応えは？

里見：
強くなったと実感することはあまりないですが、棋王戦に関してはすごく苦しい将棋もあったので、そういう局面でも諦めずに指せたことが自分の中では良かったかなと思います。4時間という長い持ち時間の棋戦の中で、体力的な面でもしっかりと自分の力を発揮できるように戦えたかなと思います。

朝日新聞：
編入試験について、ちょうど1年前にインタビューを行ったとき「今のところ考えていないです、考える状況にもなっていないと思う」という趣旨の回答でした。約1年経ち「考えてみます」という答えは前向きなのかなという印象ですが、その点は？

里見：
あまり前向きではないですけれど(笑)、編入試験を受けるということはそれなりに覚悟もいることで、大きな決断になると思うので、本当に受けるという気持ちは、今のところはあまり考えていない状況です。ただ、現実にそういう資格を得たということで、新たに考え直したいなと。そこまで前向きではないかもしれないです。

毎日新聞：
編入試験のこと、しつこくて申し訳ないですが、考え直すにあたってたとえば誰かに相談しようかなとか、そのあたりはどうでしょうか。

里見：
状況によると思いますけれど、まずは自分の中で考えて、周りの方にも意見を求めることもあるかもしれないです。まずは自分の気持ちが第一かなと思っております。

中日新聞：
今回、本戦に女性として初出場。答えにくいかもしれませんが、そこまでの結果を残した要因というのは？本戦入りをずっと目指してきたのか、なにか取り組みを変えたとかあるのでしょうか？

里見：
もともと女流棋戦で4時間という持ち時間は、私が女流棋士になった当初はなかったので、新たなタイトル戦では経験することもあったが、体力面でスタミナが切れてしまうこともあって、将棋の体力面もなんとかしないとというのはありました。体力面を自分でも考えていく中で、なんとか自信を持って戦える状況に持っていけたかなと。苦しい将棋もたくさんありましたので、順当に勝ち上がったとはいえないですけれど、諦めずに、あまり先を見ることもなく、目の前の対局に集中したことが良かったかなと。あと、強い先生方と指せるという喜びが別の感情としてあって、それがすごく将棋に対して楽しいと感情に変わり、いい結果になったかなと思います。

中日新聞：
本戦進出、編入試験資格、ともに女性初。里見さんは女流トップを走ってきて、「女性初」の期待を一身に受けてきた側だと思います。プレッシャーなどありますか？それとも、あまり意識せず？

里見：
注目していただくことに関してはすごくうれしく思っています。ただ自分の受け取りとしては、あまり意識することなく、自分の棋力を上げることを第一優先にしているので、それが巡り巡って結果に表れたことがうれしく思いますし、そういう形で現れて良かったなと思います。

読売新聞：
体力面の話で、体力上げるために何かしましたか？また持ち時間について、使い方で何か工夫を？

里見：
体力面はいろんな要素があるので、日常的に健康に過ごす、対局中は集中力が切れたときに自分の中で休憩を取って戦う、など。あまりパターン化はなく、その場その場で臨機応変に対応しました。戦い方も、あまり「4時間だからこう使おう」というのはなく、戦型によって要所要所で急所を見極めて、と。持ち時間はそこまで意識することはなかったです。飛ばすところは飛ばして、要所で時間を使うことは意識していました。

読売新聞：
変わったのは緩急？

里見：
そうですね、あとは内容的なものですが、自分の試したい形を自由に試す。真剣勝負ですが、その中でも自分の中で楽しい要素を取り入れて指すようにしていました。

読売新聞：
今日の対局終局後、レコーダーを多数差し出されたときに驚いたように見えました。自分としては大一番の意識はなかった？

里見：
そうですね(笑)、普通に感想戦をしていたのでびっくりしました。たくさんの方に来ていただき、注目していただいたことはうれしく思っています。

神戸新聞：
編入試験の話に戻りますが、そこまで前向きではないかもとのこと。奨励会三段におられて、棋士まであと一歩ということもありましたが、いろいろな覚悟もあるということで、具体的にはどういったことが決断に難しいところだとお考えですか？

里見：
自分の気持ちですかね。自分の中で受けたいという気持ちが出てきたらという感じです。周りの方々には応援していただき、声は届いているのですが、自分の中で強い気持ちが出てきたらということだと思います。