ハードウェア

SSDの耐久寿命を伸ばすための技術「ウェアレベリング」に有効性はないという研究結果


近年ストレージとして急速に普及しているSSDは、部品が故障しない限り理論的に永久使用が可能なHDDと異なり、書き込み回数の上限で寿命を迎えます。そんなSSDの寿命を伸ばす技術として「ウェアレベリング」が存在しますが、シラキュース大学フロリダ国際大学の研究者が「ウェアレベリングにはSSDの延命効果が認められなかった」という研究結果を発表しました。

Wear Leveling in SSDs Considered Harmful
(PDFファイル)https://dl.acm.org/doi/pdf/10.1145/3538643.3539750

Wear leveling in SSDs considered harmful | Proceedings of the 14th ACM Workshop on Hot Topics in Storage and File Systems
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3538643.3539750

SSDを構成するNAND型フラッシュメモリは、「ブロック」と呼ばれデータ量単位で消去動作を管理しており、さらに小さな「ページ」と呼ばれるデータ量単位で読み込み・書き込みを管理しています。ウェアレベリングは全てのブロックに対してデータを分散して書き込むようにすることで、特定のブロックが劣化した時のデータ消失や故障を防ぐと同時に、SSD自体の製品寿命を延ばす技術とされています。

ウェアレベリングは主に、データが書かれていない領域にのみ働く「ダイナミック式」、フラッシュチップを対象に働く「スタティック式」、デバイス全体を対象に働く「グローバル式」の3つに分類されます。今回、研究チームはフラッシュファイルシステムのシミュレーターであるFTLSimを用いて、ダイナミック式の「Dynamic Adjust-ment Garbage Collection(DAGC)」と、スタティック式のアルゴリズムである「Dual-Pool(DP)」と「Progressive Wear Leveling(PWL)」という3つのアルゴリズムを使って最大100回のフルドライブ書き込みを行い、書き込み効率(WAF)を計測しました。

WAFはホストコンピューターからSSD書き込まれるデータ量に対するNAND型フラッシュメモリに書き込まれる実際のデータ量の比率のこと。理想的なストレージシステムであればWAFは1.0になりますが、実際に運用されるSSDの書き込み効率はだいたい2~4程度とされています。


半導体企業のSanDiskはSSDの寿命を推測する測定標準のLDE(Longterm Data Endurance)を発表しています。それによると、「書き換え保証回数」×「フラッシュメモリ全体の容量」÷「WAF」=「書き込み可能な総データ量」が示せるとのこと。つまり、WAFが上がれば上がるほど、SSDに書き込める総データ量が減り、SSDの寿命も短くなるというわけです。

研究チームは、対象となる仮想SSDに対して実験前にフルドライブの順次書き込みを1回行い、さらに合計256GiBの順次書き込みと合計768GiBのランダム書き込みを3回に分けて行い、書き込み効率をそろえました。

FTLSimで構築されたSSD構成は以下の通り。
・ページサイズ:4KiB(キビバイト)
・ブロックサイズ:1MiB(メビバイト)
・1ブロック当たりのページ数:256ページ
・ブロック処理:FIFO
・物理容量:284GiB(ギビバイト)
・論理容量:256GiB
オーバープロビジョニング領域:11%

以下のグラフは、計測したWAF(縦軸)とフルドライブの回数(横軸)をまとめたもの。緑がDP、赤がPWL、青がDAGC、点線がウェアレベリングしなかった場合のものです。ウェアレベリングしなかったSSDはほとんど変化しなかったのに対して、DPとDAGCはわずかにWAFが上がり、PWLは75回以降に急速に上がり、最高で11.94を記録したとのこと。


また、研究チームは「システム設計の観点から、SSDは容量固定にする方が簡単です」と認めながら、容量可変での実験も行っています。容量固定のSSDは物理容量が論理容量を下回ると故障と見なされますが、容量可変であれば論理容量もゆるやかに減少していくため、SSDの耐久寿命は延びるといえます。研究チームによれば、容量可変SSDの場合、ウェアレベリングを使うと書き込み効率が最大6.9に達したのに対して、ウェアレベリングなしの場合は書き込み効率が2.89におさまったとのこと。

研究チームは、ウェアレベリングはこれまでかなり研究されているテーマではありますが、実際には正しく運用するのは非常に難しく、結果として「驚くほど効果がなく非効率的である」と評価。さらに研究チームは、ウェアレベリングによってフラッシュメモリの耐久性限界が低下していたことが、近い将来に実例として報告されると予想しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Metaの巨大なデータセンターでメモリを大幅に節約するための「透過メモリオフロード」とは? - GIGAZINE

毎日バックアップしている人がどれぐらいいるのか調査結果発表、データ損失経験の割合も明らかに - GIGAZINE

MicrosoftがPCにHDDではなくSSDを搭載するようメーカーに要求か、切り替え期限は2023年 - GIGAZINE

テラバイトをはるかに上回る「ヨタバイト」の大きさを分かりやすく示す図 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.