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火薬の材料として知られる「硝石」はワインの冷却剤として用いられていた


硝石は江戸時代の日本や中世ヨーロッパなどで火薬の材料として用いられていた鉱物です。硝石には「水に入れると吸熱反応を起こす」という特性があり、火薬としての用法が発見される以前からワインなどの冷却に用いられていました。そんな硝石の知られざる歴史について、歴史ブログのThe Regency Redingoteが解説しています。

Saltpetre:   Regency Refrigeration | The Regency Redingote
https://regencyredingote.wordpress.com/2013/08/09/saltpetre-regency-refrigeration/

硝石は乾燥した地域では民家のトイレや家畜小屋に自然に発生する鉱物です。硝石の研究は古くから行われており、中世ヨーロッパや江戸時代の日本では硝石を用いた火薬が生産されていました。しかし、古代ギリシャや古代ローマでは、硝石は火薬ではなく「冷却剤」として用いられていたとのこと。古代ローマではワインを冷やすために雪や氷が用いられていましたが、雪や氷は1年中入手できるわけではありません。このため、水に硝石を入れて冷却し、ワインの冷却に用いたという記録が残っています。ただし、当時は硝石は希少な鉱物であったため、重要な食事の際にのみ硝石が用いられたとのことです。


その後、ローマ帝国の崩壊と共に、硝石を冷却剤として用いる文化は失われました。The Regency Redingoteは硝石を用いた冷却が廃れた理由について「キリスト教社会では『冷たさ』は死を連想させるものであり、食品を冷やすことは神や自然の法則に反するものと考えられていたのかもしれません」と述べています。

16世紀になると、パドヴァ大学マルクス・アントニウス・ジマーラ博士によって硝石を用いた冷却法が「新発見」として紹介され、ヨーロッパで再度注目を集めるようになりました。しかし、当時の医師の多くは「飲み物を氷や雪で冷やす行為」がマヒや失明、突然死などを引き起こすと考えており、硝石を用いた冷却法についても否定的な意見が多く寄せられたとのこと。硝石の利用に否定的な医師の中には「硝石を混ぜた水にワインのボトルを浸した場合、硝石の成分がガラスを浸透してワインに混入する」と考える者もいました。

硝石を用いて冷却法に関する文献を残した科学者の中で最も著名な人物は、ガリレオ・ガリレイの友人であったジャンバッティスタ・デッラ・ポルタです。デッラ・ポルタの著書である「自然魔術」には硝石と雪を組み合わせた冷却剤に関する記述が存在し、「雪の2倍冷たい状態」を作り出せたことが記されています。


19世紀頃には、硝石を用いた冷却法が雑誌にも掲載されるようになりました。当時広まっていた冷却法はこんな感じ。まず、容積10~12ガロン(約38~45リットル)の木製の容器を準備し、容器に4~5ガロン(約15~19リットル)の水を入れ、細かく砕いた硝石を5~7ポンド(2~3キログラム)加えます。これによって、24度の井戸水が15分後には7度にまで冷却されるとのこと。また、硝石は水を蒸発させることで回収でき、再利用可能でした。

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in メモ, Posted by log1o_hf

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