ロシアとドイツを結ぶ「ノルドストリーム」のパイプラインで複数の爆発とガス漏れ発生、破壊工作の可能性も

2022年9月26日、ロシアからヨーロッパに天然ガスを運ぶパイプラインの「ノルドストリーム」で爆発が発生し、ガス漏れが起きたことが分かりました。各国が事態の究明を急ぐ中、複数の当局者から「破壊工作である」との見解が示されています。

Denmark, Germany and Poland warn of ‘sabotage’ after Nord Stream leaks | Financial Times
https://www.ft.com/content/85f24052-10a6-48de-8eb1-7a6f8be95759

Blasts precede Baltic pipeline leaks, sabotage seen likely | AP News
https://apnews.com/article/russia-ukraine-germany-berlin-00232df3f4b4bc89afd47d4707724e33

Nord Stream pipeline leaks spark sabotage fears
https://www.axios.com/2022/09/27/nord-stream-gas-pipeline-leak-sabotage

ノルドストリームを運営しているNord Stream AGは現地時間の9月26日夜に、ガスパイプラインの圧力が低下したと発表。翌27日の続報で、圧力低下はパイプラインの物理的損傷によるものであることを報告しました。

被害は「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の両方で発生しており、損害が発生した場所はバルト海上にあるボーンホルム島東の2カ所、それぞれスウェーデンとデンマークの排他的経済水域(EEZ)内と特定されています。

パイプラインの爆発により漏れ出した天然ガスが海面から吹き出している模様は、以下のムービーから見ることができます。

Aerial footage of leak in Danish waters from Nord Stream 1 pipeline - YouTube


パイプラインから漏れた天然ガスにより船舶が浮力を失う危険性があるほか、天然ガスが海中もしくは空中で爆発するおそれもあるため、海事当局は十分な警戒を呼びかけています。Nord Stream AGの通報により、両国の沿岸警備隊は被害が発生した場所の周囲5カイリ(約9.26km)の範囲に安全地帯を設定しました。

冬の到来が近づき、ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギー安全保障問題がさらに深刻化する中、ロシアからヨーロッパへの天然ガス輸送の要であるノルドストリームが爆発したことに対し各国は敏感に反応しています。

スウェーデン国立地震学センターの地震学者であるビョルン・ルンド氏は、同国の公共放送局・Sveriges Television(SVT)に対して「爆発が起きたことは間違いありません」と証言しました。

また、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、「これは意図的な行動の結果であり、事故ではないというのが当局のはっきりした評価です」と述べて、破壊工作であるとの見方を示しました。デンマーク当局によるこれまでの調査によると、爆発は合計3カ所で起きていたとのこと。フレデリクセン首相は、具体的に何者が破壊工作を行ったかについては不明としています。

ノルドストリームのヨーロッパ側の玄関口であるドイツの当局者は、「両方のパイプラインの圧力が突然失われたのは、『標的型攻撃』の結果の可能性があると懸念している」との政府見解を伝えました。ドイツ当局は、ロシアの関与を「排除することはできない」としています。

ウクライナ戦争の当事国であるロシアとウクライナも、この問題を認識したとの声明を出しました。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は27日、記者団に対して「漏えいは懸念材料です」と述べて、破壊工作の可能性を認めました。ペスコフ報道官は、「いかなる選択肢もすぐには排除できない」として、何者が関与したかは不明であることを強調しています。

また、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問であるミハイロ・ポドリャク氏はTwitterで、「ガス漏れは計画的なテロ攻撃であり、EUに対する侵略行為に他なりません。ロシアはヨーロッパの経済状況を不安定にし、冬を目前にパニックを引き起こしたいのでしょう」と述べて、ロシアを非難しました。

伝えられるところによると、ノルドストリームは爆発が発生する前から、ヨーロッパに圧力をかけたいとのロシア側の思惑により稼働を停止していたとのこと。このタイミングで破壊工作が疑われる爆発が発生したことについて、Financial Timesは「今回のガス漏れは、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの支援を抑止するためにヨーロッパへのロシア産ガス供給を減らしている中で発生しました。パイプラインは稼働していなかったため、ロシアからのガスの流れには直接影響はありませんが、デンマークを経由してノルウェーのガスをポーランドへと供給する『バルティック・パイプ』が開通した矢先での出来事です」と指摘しました。