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人間関係が希薄化する「ソーシャル・リセッション」が社会活動・友情・セックスなどに及ぼす影響をグラフで解説


近年はインターネットの発展でいつでもどこでも他人とつながれるようになった一方で、友人の減少や社会的孤立といったトピックが頻繁に議論されています。こうした人間関係の希薄化は「Social Recession(ソーシャル・リセッション/社会的不況/交流の減少)」とも呼ばれており、ライターのAnton Stjepan Cebalo氏が、さまざまなグラフを用いてソーシャル・リセッションの影響についてまとめています。

The Social Recession: By the Numbers
https://novum.substack.com/p/social-recession-by-the-numbers

インターネットの発達により他人とつながる手段は以前よりも増えているにもかかわらず、「現代人は孤独である」ということがよく指摘されます。孤独であることは心身に大きな悪影響を及ぼすため、ソーシャル・リセッションについてさまざまな点から分析することは重要な意味を持っています。

実際にCebalo氏が例示する「ソーシャル・リセッションの影響が浮き彫りになっている分野」が以下の通り。

◆社会活動への参加
著名な政治学者であるロバート・パットナム氏が2000年に発表した著作「孤独なボウリング」は、1950年代以降のアメリカにおいて宗教・ボランティア・スポーツ・趣味のクラブといった団体の参加者が減少し、共同体が衰退してきたこと定量的に示しました。ただし、記事作成時点ではすでに刊行から20年以上が経過しており、やや時代遅れかもしれないとCebalo氏は指摘しています。

たとえば、パットナム氏も著作で取り上げている「教会の信徒数」について、調査会社のギャラップ2021年に発表したグラフが以下。「Bowling Alone」が刊行された時点ではアメリカの成人の70%が何らかのキリスト教会・シナゴーグモスクに属していましたが、2020年には47%と過半数を割り込みました。


2000年の時点では、インターネットを日常的に使用する人の割合や使用時間が現代より大幅に少なく、インターネットが普及した現代はまた異なった様相を見せています。アメリカ人は平均で1日7時間以上をインターネットに接続したアクティビティに費やしており、31%は「ほぼ常にオンラインである」と回答したという調査結果も報告されています。これらの点からも、パットナム氏が研究を行った時代と現代は人々の関係性がまったく異なっていることがうかがえます。

◆友情
ソーシャル・リセッションにおいて注目するべき指標の1つが「友情」です。Cebalo氏は、「過去数十年の間に友人の輪が急速に減少し、友人がまったくいない人々が増えています」と指摘。たとえばSurvey Center on American Lifeの調査では「親しい友達がまったくいない」と答えたアメリカ人が12%に達して1990年の4倍になりました。


また、「友達の数に満足しているかどうか」を調べた調査では、友人の数が増えるほど満足度も高くなることが示されています。


「親友がいるかどうか」についての調査では、1990年の時点では75%が「いる」と回答したのに対し、2021年の調査では59%しか「いる」と回答しませんでした。


1980年代~1990年代中盤に生まれたミレニアル世代を対象とした2019年の調査では、「友人がいない」と回答した人の割合は22%に上り、「親友がいない」と回答した人の割合も30%に上りました。この調査は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前に行われたため、パンデミック後はさらに悪化している可能性もあります。

◆人生のマイルストーン
1990年代以降に生まれた人々においては、さまざまな人生のマイルストーンを経験する時期が遅くなっていることも指摘されています。1976年~2016年にかけてアメリカの若者の活動を分析した2017年の研究結果を、わかりやすくグラフにしたものが以下。高校3年生にあたる年齢の若者が特定のイベントを経験した割合について示したもので、左から「運転免許証の取得」「飲酒」「デートに行く」「働いて給料をもらう」となっています。いずれのイベントについても、1994年の若者と比較して2014年の若者は経験者の割合が大幅に減っていることがわかります。


同じ論文で紹介された「中学生や高校生が親の同伴なしで外出する頻度」についてのグラフを見ると、中学2年生・高校1年生・高校3年生相当のいずれでも、1人で外出する頻度が減少していることがうかがえます。


また、シカゴ大学が行っている総合的社会調査によると、30歳以下の人々が「18歳以降は性的パートナーがいない」と回答する割合は、男女ともに増加傾向にあるとのことです。


上記で取り上げた傾向は必ずしも「悪いこと」と断じることはできませんが、各年代ごとにうつ病率を示した以下のグラフを見てもわかるように、若者のメンタルヘルスが悪化しているのは確かだとCebalo氏は主張しています。


◆信頼
Cebalo氏は、あらゆる社会性の構成要素として「信頼」が重要であると考えており、過去50年間にわたりアメリカ社会において相互の信頼が失われたことが、ソーシャル・リセッションの原因であると主張しています。以下は、ギャラップが調査した「アメリカの機関に対する信頼度」の結果をグラフにまとめたもの。1979年には40%を超えていた社会に対する信頼度が2022年には27%まで低下しており、社会に対する信頼が失われていることがわかります。


また、以下はピュー研究所による「大衆の政治的判断に対する信頼度」の(PDFファイル)調査結果を示したグラフです。1970年代にはアメリカ人の過半数が「とても信頼できる/信頼できる」と回答していたのに対し、2010年代は過半数が「ほとんど信頼できない/まったく信頼できない」と回答しています。


以下のグラフはギャラップの調査結果に基づいたもので、緑線が「立法府を信頼する人の割合」を、青線が「アメリカ人を信頼する人の割合」を示しています。立法府を信頼する人の割合は21世紀に入ってから過半数を割り込み、アメリカ人を信頼する人の割合もそろそろ過半数を下回りそうなことがわかります。


Cebalo氏は、「信頼はあらゆる社会の接着剤です」「政権が崩壊するのは、それ自身に対する信頼の欠如が原因です。公的機関に対する信頼の低下は、他の人々に対する信頼の低下にもつながります」と主張。問題を解決するためにはまず現状を認め、社会的交流を念頭に置いたインターネットインフラストラクチャーの再考が必要ではないかと訴えました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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