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オープンソースOS「SerenityOS」開発者はいかにして生計を立てているのか?


既存のOSからフォークしたのではなく、ゼロから生み出されたOSとして2018年に登場した「SerenityOS」を生み出したアンドレアス・クリング氏が、オープンソースプロジェクトの開発を行いつつどのように生計を立てているのか、その詳細を公開しています。

How I make a living working on SerenityOS – Andreas Kling – I like computers!
https://awesomekling.github.io/How-I-make-a-living-working-on-SerenityOS/


クリング氏は2018年に「SerenityOS」の開発をスタート。プロジェクトは1人で立ち上げましたが、その後メンバーが加わって、数百人単位の開発者が活発に議論を行うオープンソースコミュニティとなっているとのこと。

その中でクリング氏は2021年5月からは「SerenityOS」開発をフルタイムの仕事として生計を立てています。


主要な収入源は「個人協賛・寄付」です。クリング氏は2019年4月からパトロン募集サービス「Patreon」に登録。また、開発者への支援を求めることができるGitHub Sponsorsにも登録しています。

2022年10月29日時点で、クリング氏はPatreonに268人のパトロンがいて月額1411ドル(約20万9000円)、GitHub Sponsorsに263人のスポンサーがいて月額2136ドル(約31万7000円)の支援を受けているとのこと。このほか、5人未満のPayPalユーザーから月額200ドル(約2万9600円)未満、同様に5人未満の仮想通貨ユーザーから月額50ドル(約7400円)未満の支援があるそうです。

当初は数字を細かくチェックしていたものの、やがてストレスになったので、今は数字のチェックは月1回の会計の時だけだとのこと。

クリング氏の副収入源となっているのは「YouTube」です。クリング氏はSerenityOSの開発のかなり初期のうちからYouTubeに動画をアップしていて、登録ユーザー58人から月額65ドル(約9600円)を得ています。規約により詳細は明かせないものの、2022年10月はスーパーチャット8件で50ドル(約7400円)の収入もあり、前述の登録ユーザーのものもふくめて月額315ドル(約4万6800円)を手にしたそうです。

さらに第3の柱に位置づけられているのが「グッズ販売」。これは「ノートPC用のステッカーとかをもらうと、プロジェクトをもっと気分良くサポートできる」という声もあって始めたもの。ただ、Tシャツなどは1度買うとしばらくは不要になるため売り上げは安定せず、2022年9月は0ドル、2022年10月は101ドル(約1万5000円)だったとのこと。

一方で、収入源になりそうな候補として、モバイルゲームやVPNサービス、プログラミング講座などの広告を出すよう声がかかったそうですが、「個人的に使っていないものは宣伝しない」というルールを自らに課したクリング氏は、こうしたオファーを一切受けていません。なお、開発環境「CLion」の開発元JetBrainsからは、CLionを使い始めたころに年間ライセンス3本が送られてきてYouTubeの視聴者プレゼントになったとのこと。クリング氏は日々、YouTubeの内外でCLionを使っていることから「喜んでパートナーになりたい」と思っているものの、まだ「単なる友達」なのだそうです。

このほか、ベンチャーキャピタルからの声かけもあったそうですが、「1人の大規模な投資家に指示されるより、私を信じてくれる数多くの小規模な慈善家がいるほうがいい」という考えから、断っています。

ということで、クリング氏の月間収入はおよそ4200ドル(約62万3000円)。クリング氏が住むスウェーデンは税金が高いことで知られますが、クリング氏夫妻は質素な暮らしをしていて、収支はちょうど帳尻が合うぐらいのバランスだとのことです。

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in メモ, Posted by logc_nt

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