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画像生成AIによる作品の無許可使用を主張した写真家が逆に損害賠償を請求される


人間が撮影した写真には著作権肖像権などさまざまな法律による規制が課せられています。しかし、急速に発展・普及するAIの分野では法律による規制が追いついていないのが実情です。そんな中、自身の写真をAIの学習に使用されたと主張する写真家が、逆に損害賠償を請求されていることを明かしています。

AI used photographer's photos for training, then slapped him with an invoice
https://www.diyphotography.net/ai-used-photographers-photos-for-training-then-slapped-him-with-an-invoice/


LAION e.V. macht ernst: Schadensersatzforderung an Urheber für KI-Trainingsdaten - Alltag eines Fotoproduzenten
https://www.alltageinesfotoproduzenten.de/2023/04/24/laion-e-v-macht-ernst-schadensersatzforderung-an-urheber-fuer-ki-trainingsdaten/


2023年はじめ、ドイツの写真家であるロバート・クネシュケ氏が、画像生成AIに自分の作品が勝手に使われたかどうかを検索できるサイト「Have I Been Trained?」で検索を行ったところ、インターネットから権利者に相談することなく収集した画像の大規模なデータセット「LAION」に自身の作品が多数含まれていることを発見しました。

画像生成AIに自分の作品が勝手に使われたかどうかを検索できる「Have I Been Trained?」 - GIGAZINE


そこでクネシュケ氏は、LAIONに対して「自身の作品をLAIONの学習データから削除してほしい」と依頼しました。すると、LAIONを担当する法律事務所Heidrich Rechtsanwälteから、「LAIONは人工知能という意味での自己学習アルゴリズムをさらに開発し、一般に公開することを目的とした自主研究を行っています」「LAIONはインターネット上で公開されている画像ファイルへのリンクを含むデータベースのみを保存しており、画像データ自体は保存していません」という、クネシュケ氏にはLAIONの学習データから自身の作品の削除を要求する権利がないと主張する内容の回答が届きました。Heidrich Rechtsanwälteは同じ内容の書簡を他の写真家にも送付したとされています。

Heidrich RechtsanwälteはLAIONによる著作権侵害を否定しつつ「私たちHeidrich Rechtsanwälteは、LAIONに対する不当な請求があった場合、ドイツの著作権法に従い、損害賠償請求を行う権利があることをクネシュケ氏に指摘します。LAIONはこれまで損害賠償請求を控えていましたが、いつまでも甘え続けるわけにはいきません。LAIONは不当な請求に対する防御のためにこれまで弁護士費用を負担していましたが、これは本来LAION側が負担するものではありません」と述べてクネシュケ氏に合計887.03ユーロ(約13万円)の損害賠償を請求しています。


Heidrich Rechtsanwälteの担当者は「LAIONが行った学習に伴う複製行為は一時的なものであり、ドイツの著作権法による制限が適用されます。しかし、LAIONではデータベースのみを保存しており、画像データそのものは保存していません。LAIONはいわゆるクローラを使った自己学習アルゴリズムの学習のために、インターネット上で画像ファイルを見つけ、その情報を得るために記録や評価を行っています。そのため、著作権侵害にはあたらないと考えています」と述べています。

LAIONにおけるクローラの使用にHeidrich Rechtsanwälteが言及したことについてクネシュケ氏は「ほとんどの写真投稿サイトがクローラの使用を禁止している事実を踏まえると、LIONがクローラを用いたとする主張は興味深いです」と述べるとともに、「LAIONが設立される前にすでに画像共有サイトから削除されていたはずの写真を、LAIONがどこから入手したのか気になります」とも指摘しています。

Heidrich Rechtsanwälteは「LAIONは、写真家の皆さまが自身の作品を一時的とはいえ、複製してAIの学習に利用されることを好まないことを根本的に理解しています。しかし、この行為は法律で明示的に許可された行為です。したがって、クネシュケ氏には、自身の作品をデータセットから削除するという要求を取り下げていただかなければなりません」と主張しています。


一方でクネシュケ氏は「LAIONのようなAI関連企業は、大量の著作物を使用して学習を行い、利益を上げようとします。そのため、『学習データから写真を削除してほしい』という私の要求に対して『損害賠償請求を行う可能性がある』と警告することは極めて妥当なことです。しかし私も学習を行った作品データに対する削除請求を行う正当性の立証を行い、裁判で争うつもりです」と述べています。

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in ソフトウェア, Posted by log1r_ut

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