サイエンス

8時間の「孤独」が食事を抜いた時と似たようなエネルギー不足と疲労を引き起こすという研究結果


人間の生活において社会的な関わりは重要であり、これまでの研究から「孤独」は精神だけでなく身体にも悪影響を及ぼすことが知られています。新たに、オーストリア・ウィーン大学の研究チームが行った実験では、「8時間孤独でいることは食事を抜くのと似たようなエネルギー低下と倦怠(けんたい)感を引き起こす」という結果が示されました。

Homeostatic Regulation of Energetic Arousal During Acute Social Isolation: Evidence From the Lab and the Field
https://doi.org/10.1177/09567976231156413


Tired of being alone: How social isolation impacts on our energy
https://medienportal.univie.ac.at/en/media/recent-press-releases/detailansicht-en/artikel/tired-of-being-alone-how-social-isolation-impacts-on-our-energy/

8 Hours of Loneliness Can Be as Draining For Some People as Going Without Food : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/8-hours-of-loneliness-can-be-as-draining-for-some-people-as-going-without-food

ウィーン大学の心理学者であるAna Stijovic氏らの研究チームは、一時的な孤独状態が身体にどのような影響が及ぶのかを調べるため、研究施設と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で都市封鎖中の自宅の両方で実験を行いました。


研究施設で行われたテストでは、日常生活で重度の孤独または社会的孤立を経験していない18歳~33歳の女性被験者30人を募集し、3日間に分けて研究施設に来てもらいました。それぞれの実験日は「8時間にわたり社会的接触を行わない日」「8時間にわたり食事をとらない日」「8時間にわたり社会的接触と食事の両方がない日」のいずれかに割り当てられており、被験者は研究施設の一室で各条件に従って自由に過ごしました。「社会的接触を行わない日」はインターネットやスマートフォンへのアクセスが禁じられ、人の写真が掲載された雑誌なども読むことができず、研究者との接触もなかったそうです。

被験者にそれぞれの条件で8時間過ごしてもらう中で、研究チームは被験者からストレスや気分、倦怠感についてのフィードバックを定期的に収集したほか、ストレスの指標となる心拍数や唾液中のコルチゾールレベルもこまめに測定しました。

また、都市封鎖中の自宅で行われたテストでは、オーストリア・イタリア・ドイツに住む87人の被験者に対し、スマートフォンを利用してストレスや倦怠感などを報告してもらいました。報告は1日5回、1週間にわたり継続して行われ、それぞれの日に社会的に孤立していたのか、それとも社会的な接触があったのかについても調査されました。


研究施設で行われた実験で得られたデータを分析したところ、8時間に及ぶ社会的な孤立は、食事を抜いた時と同程度の倦怠感とエネルギーの低下を引き起こすことが判明しました。この結果は都市封鎖中に収集されたデータからも裏付けられたとのことです。

研究チームは、「実験室での研究では、社会的孤立と食事を抜くことの間に顕著な類似性があることがわかりました。いずれの状態もエネルギーの低下と疲労の増加を引き起こしましたが、食事を抜くことが文字通りエネルギーを失わせるのに対し、社会的孤立はそうでないことを考えると、これは驚くべきことです」と述べています。

また、都市封鎖中に行われたテストでは、1人暮らしの人やもともと社交的な性格の人々が、最も社会的孤立の影響を強く受けることが示されました。これらの人々は、社会的交流がなかった日はエネルギーが低下したと報告しましたが、社交的ではない被験者にはこの傾向が見られなかったとのこと。


ウィーン大学の心理学者であるGiorgia Silani氏は、「長期的な孤独と倦怠感が関連していることはよく知られていますが、この関連の根底にある直接的なメカニズムについてはほとんどわかっていません。短期間の社会的孤立の後でもこの効果が見られるということは、エネルギーの低下が『社会的恒常性』の適応反応であり、長期間になっても適応できない可能性があることを示唆しています」と述べました。

科学系メディアのScience Alertは、「エネルギーの減少は、身体の恒常性反応が変化した結果であるように思われます。つまり、社会的つながりの欠如が身体的な反応を引き起こし、ある種のバランスを取っているのです」「孤立している期間が長くなればなるほど、ダメージは大きくなる可能性が高いと言えます」と指摘しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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