サイエンス

オリオンの右肩に輝く赤色超巨星「ベテルギウス」は2019年に暗くなってから明るさの変動周期が変わったという研究結果

by Stuart Rankin

オリオン座の右肩(地球から見て左上)に位置しており冬の大三角の1つでもあるベテルギウスは、周期的に明るさが変動する脈動変光星です。そんなベテルギウスは2019年後半に大幅に暗くなり、「超新星爆発を起こす予兆ではないか」とも言われていました。記事作成時点では、ベテルギウスの明るさは持ち直してきており、研究者らは「ベテルギウスの明るさが変動する周期が変わった」と報告しています。

[2305.09732] Left Ringing: Betelgeuse Illuminates the Connection Between Convective outbursts, Mode switching, and Mass Ejection in Red Supergiants
https://doi.org/10.48550/arXiv.2305.09732


Betelgeuse Is Being Weird Again. What Gives? : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/betelgeuse-is-being-weird-again-what-gives

‘It’s new territory’: why is Betelgeuse glowing so brightly and behaving so strangely? | Astronomy | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2023/may/26/its-new-territory-why-is-betelgeuse-is-glowing-so-brightly-and-behaving-so-strangely

ベテルギウスは全天で21個しかない1等星の1つであり、肉眼で見ることができる恒星の中で最も直径が大きい赤色超巨星です。もしベテルギウスを太陽系の中心に置いた場合、その端は木星の軌道を越えるほどの大きさとのこと。

恒星では軽い元素から重い元素へと核融合による合成(恒星内元素合成)が行われており、まず水素による核融合が行われ、その次にヘリウムの核融合へ、そして炭素や酸素へと反応が進みます。ベテルギウスは星の中心部でヘリウムの核融合が起こっている段階にあるとみられており、10万年以内に燃料を使い果たして超新星爆発を起こす可能性が高いと考えられています。

2019年12月にはベテルギウスの明るさが10月と比べて半分ほどになって観測史上最低を記録したことが報告されたため、「超新星爆発が起こる予兆ではないか」と言われていましたが、その後は再びベテルギウスの明るさが戻ったことが報告されています。

超新星爆発寸前かと思われていたベテルギウスが持ち直してきている - GIGAZINE


その後の研究で、ベテルギウスで発生した大規模な減光は、一時的な温度の低下と星間塵(せいかんじん)が同時に発生したためではないかという説が提唱されています。この説によると、ベテルギウスの表面に冷たい斑点が生じたことでその部分が暗くなり、それと同時に斑点部分に形成された塵が地球とベテルギウスの間に割り込んだことで、地球から見たベテルギウスの明るさが減少したとされています。

「ベテルギウスの大減光」の原因は「温度低下と星間塵」か - GIGAZINE


2022年から2023年にかけてベテルギウスの明るさは徐々に上がっており、2023年4月にはベテルギウスの明るさが通常の156%に達し、5月の時点でも通常より142%明るい状態となっています。これにより、もともと全天で10番目だったベテルギウスの明るさが、全天で7番目になっているそうです。

Now at 142% of my usual brightness! #Betelgeuse pic.twitter.com/S7TuFTcjdj

— Betelgeuse Status (@betelbot)


新たに、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームはプレプリントサーバーのarXivに投稿した論文で、「ベテルギウスは大減光の後に明るさの変動周期が変わった」という研究結果を発表しました。

ベテルギウスはもともと、約400日周期で明るい時期と暗い時期が変動する脈動変光星でしたが、記事作成時点での変動周期は約200日と半分ほどになっているとのこと。この周期はベテルギウス内部の膨張と収縮によって変動していると考えられており、今後5年~10年ほどかけてもとの400日周期に戻るとみられています。

オーストラリア・スウィンバーン工科大学の天体物理学者であるサラ・ウェッブ博士は、「ベテルギウスの最もクールな点の1つは、大きな星の進化の最終段階がほぼリアルタイムで見られるということです」「ベテルギウスの光の増減は、私たちがまだ見たことのない新たな領域に入っています」と述べました。

by European Southern Observatory

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「ベテルギウスの大減光」の原因は「温度低下と星間塵」か - GIGAZINE

超新星爆発寸前かと思われていたベテルギウスが持ち直してきている - GIGAZINE

超新星爆発の兆候を見せるベテルギウスが爆発すると満月級の明るさになる - GIGAZINE

超新星爆発が地球の近くで発生すると何が起こるのか? - GIGAZINE

「夜空が星の光で埋め尽くされていないのは一体なぜ?」に天文学者が回答 - GIGAZINE

夜空がどんどん明るくなって星の可視性が世界的に急速に低下していることが明らかに - GIGAZINE

「ダークマター星」を見つけたかもしれないと天文学者が報告 - GIGAZINE

なぜ夜空の星を「☆」で表現するのかを科学的に解説 - GIGAZINE

宇宙誕生初期に存在したとされる「ブラックホール星」とは? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.