サイエンス

ニワトリの「ソニック・ヘッジホッグ遺伝子」を活性化することで脚から羽毛を生やすことに成功


生物の四肢の発生には「ソニック・ヘッジホッグ」と呼ばれる遺伝子が大きく関わっています。ジュネーヴ大学の研究チームは、ニワトリのソニック・ヘッジホッグ遺伝子を発現させることで本来はうろこ状の皮膚で覆われた脚から羽毛を生やすことに成功しました。

Transient agonism of the sonic hedgehog pathway triggers a permanent transition of skin appendage fate in the chicken embryo | Science Advances
https://doi.org/10.1126/sciadv.adg9619


Scales or feathers? It all comes down to a few genes - Medias - UNIGE
https://www.unige.ch/medias/en/2023/ecailles-ou-plumes-tout-se-joue-quelques-genes-pres

ニワトリの体の大部分は羽毛で覆われていますが、脚部はうろこ状の皮膚(脚鱗)で覆われています。羽毛と脚鱗は同じ細胞から分化したもので、発生段階で発現する遺伝子の違いによって羽毛になるか脚鱗になるかが決定しています。ジュネーブ大学の研究チームは羽毛と脚麟の発生を決定付けるメカニズムを解明するべく、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の発現量を変化させる実験を行いました。なお、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子は人気キャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」にちなんで名付けられた遺伝子です。

ソニック・ヘッジホッグ遺伝子を発現させるには、ニワトリの卵の適切な箇所に発現を誘発する溶液を注入する必要があります。研究チームは「卵に強い光を当てる」という方式で溶液の注入箇所を特定しました。


溶液を注入する様子はこんな感じ。なお、注入した溶液は「Smoothened Agonist (SAG)」を「ジメチルスルホキシド(DMSO)」に混合したものです。


実験の結果、溶液を注入した卵から生まれたニワトリの脚(右)は脚鱗ではなく羽毛で覆われました。また、卵に溶液を注入して以降は特別な処置は施しておらず、継続的な処理の必要なく羽毛への変化を保てることも確認されました。


研究チームの一員であるミシェル・ミリンコビッチ教授は「今回の研究は、うろこから羽毛への進化には『ゲノムの構成』の大きな変化が必要でないことを示しており、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の発現量の変化が羽毛の発生を引き起こしていることを示しています」と述べ、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子が動物の進化のメカニズムを解明する上で重要な意味を持っていると指摘しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1o_hf

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