「ほかの場所で安価に販売するのは禁止」というAmazonのポリシーを批判したセラーが「Amazonの弁護士につぶされる」と訴える

Amazonで自社製品を販売している教育玩具メーカーのCEOが、かつてAmazonが定めていた「Amazon以外のプラットフォームでは、Amazonより安い価格で販売しないこと」という規約を批判したところ、Amazonから報復措置を受けてしまったと報告しています。

教育玩具メーカー・Viahartの創業者兼CEOであり、知的財産に特化した訴訟ファンド・Edisonの共同設立者であるモルソン・ハート氏は、2019年に「Amazonのビジネス慣行がアメリカの消費者にどのような害を及ぼすのか」と題するブログ記事を投稿しました。その中でハート氏は、物議を醸して投稿の4ヶ月前にひっそりと終了した前述の規約と、Amazonが法外な手数料を定めていることについての問題点について言及しました。ハート氏の主張としては、AmazonはAmazon以外で商品を安く売ることを認めておらず、もしそうするならばAmazonはその商品を隠すなどの措置をとるというもの。そのため、Amazon以外での価格は高く維持され、消費者にとって不利になるとの考えでした。

この規約は中小企業の競争を妨げるとして当時から問題視されており、ヨーロッパでは同じ規約がすでに廃止されていて、アメリカではリチャード・ブルメンタール上院議員の主導で司法省や連邦取引委員会法に調査を求める運動が進められていました。一連の運動の中でハート氏は議会で証言もしましたが、しばらくは具体的な動きは起こりませんでした。

その後2021年5月、ワシントンD.C.のカール・ラシーン司法長官が独占禁止法違反の疑いでAmazonを提訴します。この訴訟では当該規約が主な争点となり、Amazonの不当な慣行のせいで市場全体の価格が高くなってしまっているとの主張が行われました。

Amazonが「市場価格を不当に引き上げている」として訴えられる - GIGAZINE

続く2022年9月にはカリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官が同様の問題を争点としてAmazonを訴え、AmazonはAmazon以外の場所で安く商品を売っている出品者に対して商品の表示順位を下げたり、目立たなくしたり、新規出品を全面的にブロックしたりするなどのペナルティを与えていると主張しました。これはハート氏の訴えと重なるもので、裁判ではハート氏も証人として選ばれていたとのこと。

しかし、一連の騒動の中で、ハート氏は「Amazonに訴えられてしまった」と主張しています。ハート氏によると、Amazonの弁護士は「ハート氏がうそをついているか、間違っているかを証明したい」という目的を果たすべく、ハート氏にさまざまな書類の提出を要求しているそうです。

ハート氏は「問題は、この手の手続きが際限なく発生することにあります。どれだけ書類を出そうが、証言録取に同意しようが、Amazonの弁護士は『十分ではない』と言ってきます。もはや法的費用を払う余裕はありません」と述べました。

この問題について、ニュース共有掲示板のHacker Newsでは「ハート氏は訴訟開示のために召喚されただけで、ハート氏自身が訴訟を受けたわけではないように思えます。ハート氏はこの部分を混同しているのではないでしょうか。とはいえ、Amazonがカリフォルニア州司法長官事務所が要求したものを上回る追加情報をハート氏に要求していることは間違いなく、これはハート氏の証人としての信用を失墜させるようなものを見つけ出すためのものに違いありません」とのコメントが寄せられました。

ハート氏は「Amazonは私を『Amazon批判者』と呼びましたが、私はAmazonのポリシーを批判しているだけで、Amazonそのものを批判しているわけではありません。訴訟が続けば、私ではなくAmazonが破滅することになります」と述べました。