サイエンス

植物の成長システムをシミュレーションして3Dモデリングに反映した書籍「植物のアルゴリズム的美しさ」とは?


The Algorithmic Beauty of Plants(植物のアルゴリズム的美しさ)」とは、ポーランドのコンピューター科学者であるプシェミスワフ・プルシンキェヴィチ氏とハンガリーの生物学者であるアリスティド・リンデンマイヤー氏が執筆した書籍で、植物の発生と成長プロセスに現れる特定のパターンをコンピューターシミュレーションで分析した最初の包括的な本として知られています。1990年の初版発行以来繰り返し論文として引用されている他、本書で紹介された植物のアルゴリズム的美しさを、実際のプログラムで再現するといった動きも複数見られています。

(PDFファイル)The Algorithmic Beauty of Plants
http://algorithmicbotany.org/papers/abop/abop.pdf
001


Algorithmic Botany: Publications
http://algorithmicbotany.org/papers/


The Algorithmic Beauty of Plants [pdf] | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=36853206

「植物のアルゴリズム的美しさ」は、植物の成長プロセスをはじめとしたさまざまな自然物の構造を記述・表現できるアルゴリズムについて、架空の植物モデリングに応用した最初の本として重要視されています。このようなアルゴリズムは、著者であるリンデンマイヤー氏の名前から「リンデンマイヤーシステム」もしくは「Lシステム」と呼ばれており、自然物の複雑な分岐構造を記述するための他、人工生命の研究にも役立っています。

1990年に初版が発行された「植物のアルゴリズム的美しさ」は、出版は既に終了していますが、プルシンキェヴィチ氏および同僚の研究者、学生によって発行された論文や書籍についてまとめた「BMV Publications」というサイトでPDF形式のダウンロードが可能です。書籍は章ごとにダウンロードできるほか、本全体を高品質版(約17メガバイト)と軽量版(約4メガバイト)のいずれかでダウンロード可能になっています。書籍には多くの図やイラスト、3Dモデリングの例が含まれているため、十分に理解するためにはできるだけ高品質版を読むことが推奨されています。


本の第1章では「Lシステムを使用したグラフィカルモデリング」について取り扱っており、その冒頭で研究テーマについて解説しています。その内容によると、Lシステムは植物の発生に関する数学的理論として考案されたものですが、もともとは植物のトポロジー、すなわち細胞間や植物機能間の図形的位置関係に重点を置いたもので、包括的なモデリングを可能にするほど詳細なものではなかったそうです。そこで「植物のアルゴリズム的美しさ」では、Lシステムの幾何学的解釈について基本的な概念を解説しつつ、植物のアルゴリズムをモデリングに反映する試みをしています。


第2章以降では、Lシステムを用いた実際のモデリング例について見ることができます。ここでのモデリングは、例えば枝分かれする樹木を描く場合、とある三角形のグリッドを1つ着色し、そこからアルゴリズムのシミュレーションによって得られた頂点のセルを着色し、ということを繰り返していくことで枝の成長や枝分かれのパターンを構成しています。


また、第4章では茎に対する葉の配列様式である葉序(ようじょ)についてもLシステムを用いた分析とモデリングを行っています。以下の画像は、ヒマワリの花について色と形状をLシステムによってアルゴリズム化したモデルで、この構造は630ステップで生成されているとのこと。


「植物のアルゴリズム的美しさ」については、Lシステムについて具体的な植物のモデリングを用いることで優れた理解を提供している他、植物の3Dモデリングについてただ見た目上のものではなく理論上に本物らしいものを制作できる点でも評価されています。一方で、コーネル大学の統合植物科学部で名誉教授を務めるカール・J・ニクラス氏は、「この本は、よりリアルに風に揺られ、成長していくサイバー植物を作りたいグラフィックアーティストや、植物にパターンがあることを理解したい人は楽しめると思います。ですが、この本は発生生物学の観点から植物の形態を理解するという課題については不十分であり、本格的な科学としては懐疑的な面もあります」と批評しています。

しかし、架空の植物をモデリングする背後にあるアルゴリズムを説明した最初の本として「植物のアルゴリズム的美しさ」を評価する声は多く、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは本に影響を受けた人のコメントが複数寄せられています。あるユーザーは、本の内容に従って、マイクロソフトのF#を用いたプログラムで全ての図を作成してGitHubに公開しています。


また、同様に自然物の構造とアルゴリズムについて解説したジャネット・E・キューブラー氏の「The Algorithmic Beauty of Seaweeds, Sponges and Corals(海藻、海綿動物、サンゴのアルゴリズムの美しさ)」や、プルシンキェヴィチ氏もゲスト著者として寄稿しているハンス・マインハルト氏の「The Algorithmic Beauty of Sea Shells(貝殻のアルゴリズム的な美しさ)」のファンでもあるというユーザーは、本に掲載されている図を実際のアルゴリズムで再現している他、さまざまなパラメータで貝殻の3Dモデルを生成できるサイトを公開しています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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