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世界初の持ち主以外使用できないスマートガンが間もなく登場


世界初の「登録されたユーザーしか発砲できないスマートガン」が、2023年12月に出荷される予定です。間もなく市場に登場予定のスマートガンとは一体どんなものなのかについて、ウォール・ストリート・ジャーナルがまとめています。

The First Smart Gun Is Finally Coming to Market. Will Anyone Buy It? - WSJ
https://www.wsj.com/articles/the-first-smart-gun-is-finally-coming-to-market-will-anyone-buy-it-67314e0


アメリカでは持ち主しか発砲することができない「スマートガン」と呼ばれる技術の開発が、1990年代から進められてきました。「誤射や銃器の盗難を減らすことにつながる」としてスマートガンを支持する人と、「政府がスマートガン以外の銃器の販売を非合法化する可能性がある」としてスマートガンの普及に否定的な人が存在しています。

しかし、これまでは「スマートガンが思ったように動作しない」という技術的な問題や、「スマートガン否定派からの圧力」といった理由から、スマートガンが市場で広く販売されることはなかったとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘。


そんな中、アメリカ・コロラド州にあるスタートアップ・Biofireが、グリップ部分に搭載されている指紋認証センサーと背面にある顔認証センサーで本人確認を行い、これをクリアした場合にのみ発砲できる9mm口径のスマートガンを、2023年12月に出荷予定です。これが実現すれば、市場で初めて広く販売されるスマートガンが登場することとなります。

Biofireの開発しているスマートガンの価格は1499ドル(約21万円)で、同種の9mm拳銃は通常400ドル(約5万7000円)から800ドル(約11万3000円)程度で販売されています。


銃の所持権を求める団体であるSan Diego County Gun Ownersでエグゼクティブプロデューサーを務めるマイケル・シュワルツ氏は、多くの銃所有者はハイテク機能を搭載したスマートガンに懐疑的であると指摘。シュワルツ氏は「我々のメンバーの多くにとって、銃器を所有する第一の理由は護身であり、シンプルであるに越したことはありません。つまり、110%信頼できるものでなければいけません」と語っています。

これに対して、Biofireの創設者であるカイ・クロプファー氏は、同社のスマートガンが指紋認証システムと顔認証システムの両方を搭載している理由を、「手が濡れていたり顔が見えていなかったりすることで、どちらか一方の生体認証システムが機能しなくなってしまっても、問題なく発砲できるようにするため」と説明。

2012年に起きたサンディフック小学校銃乱射事件以降、ベンチャーキャピタリストのロン・コンウェイ氏やピーター・ティール氏はスマートガン技術への投資を進めているのですが、2014年に設立されたBiofireも、ここから3000億ドル(約42兆5000億円)の資金を調達しています。


クロプファー氏によると、オンラインショップでのみ購入可能なBiofireのスマートガンは、記事作成時点で数千人から予約注文を受けているそうです。ただし、クロプファー氏は詳細な注文数を明かしていません。

Biofireは2023年初頭にメディア向けにスマートガンのデモンストレーションを披露していますが、この際、同社のスマートガンは誤作動を起こしたとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘しています。クロプファー氏は、デモンストレーション時のスマートガンの誤作動について「弾詰まりを起こしたものの、指紋認証や顔認証に問題はなかった」と言及しました。

また、クロプファー氏は銃規制支持者が推進する「スマートガンの義務化」について、「賛成できない」と述べ、その理由を「銃規制を支持することは、Biofireの潜在顧客を遠ざけることにつながりかねないから」と語っています。

ニュージャージー州にはスマートガンが市場に出回ることとなれば、すべての店舗にスマートガンの販売を義務付けることとなる法律が存在します。そのため、Biofireはニュージャージー州で同社のスマートガンを販売する予定はないと語りました。


銃器メーカーのColtは1990年代にスマートガンを開発した最初の企業のひとつになりましたが、このスマートガンはメディア向けのデモンストレーションで正しく動作しませんでした。そのため、消費者がボイコットを実施し、最終的にColt製のスマートガンが販売されることはありませんでした。

ドイツのArmatixも2010年代にスマートガンを開発しましたが、これは銃権運動家の反対を受け、販売店のスマートガン取り扱い中止につながっています。

一方で、スマートガン支持者はスマートガンが銃器の盗難や子どもの拳銃の誤射、銃乱射事件の発生防止につながると主張してきました。実際、2003年の調査によると銃の誤射の37%が、スマートガン技術で防ぐことができると考えられています。

また、ジョンズ・ホプキンス大学が2019年に発表した研究によると、銃を安全に保管している銃所有者の50%がスマートガンを購入する可能性があることが明らかになっています。この他、銃所有者の10人に8人がスマートガンの販売を支持しており、10人に2人がスマートガンを購入する可能性があると回答しています。

なお、Biofire以外にも複数のスタートアップがスマートガンの開発に取り組んでいますが、直近でスマートガンの販売を予定しているのはBiofireのみだそうです。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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