サイエンス

ダニにかまれることで40万人以上のアメリカ人が「赤身肉アレルギー」になっている可能性がある


アレルギーとして一般的な例は、そばや小麦粉、甲殻類などが挙げられますが、中には赤身の肉を食べるとアレルギー症状が出てしまう人もいます。赤身肉アレルギーの患者の多くは、マダニにかまれることでアレルギーを発症するとされており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「約45万人のアメリカ人がマダニが原因で赤身肉アレルギーを抱えている可能性がある」と指摘しています。

Emerging Tick Bite-Associated Meat Allergy Potentially Affects Thousands | CDC Online Newsroom | CDC
https://www.cdc.gov/media/releases/2023/p0727-emerging-tick-bites.html


Up to 450,000 in U.S. have red meat allergies due to alpha-gal syndrome spread by ticks, CDC says - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/alpha-gal-red-meat-allergy-lone-star-tick-bites-cdc/

Meat allergy from tick bites is on the rise—and US doctors are in the dark | Ars Technica
https://arstechnica.com/health/2023/07/tick-bites-can-cause-meat-allergies-up-to-450000-people-in-us-may-be-affected/

Over 500,000 Americans are now allergic to red meat because they were bitten by a tick • Earth.com
https://www.earth.com/news/over-500000-americans-are-now-allergic-to-red-meat-because-they-were-bitten-by-a-tick/

赤身肉アレルギーの存在は古くから知られていましたが、研究が進んだのは過去数十年のこと。イギリスのアレルギー研究者であるトーマス・プラッツ・ミルズ氏は2002年に、一部のがん患者が「セツキシマブ」と呼ばれる抗がん剤に対してアレルギー反応を示すことに着目しました。研究の末、ミルズ氏は2008年に、セツキシマブ由来のアレルギー反応の原因は、「ガラクトース-α-1,3-ガラクトース(α-gal)」という炭水化物であることを発見しました。

一般的にα-galは霊長類を除く、多くの哺乳類のタンパク質に含まれています。α-galを含む豚肉や牛肉、ウサギ肉、子羊の肉などを食べた一部の人は、α-galアレルギー(赤身肉アレルギー)を発症することがあります。


また、これまでの研究でα-galはマダニのだ液に含まれていることも報告されており、マダニにかまれると、体内でα-galに対する抗体作られることもわかっています。

体内にα-galに対する抗体が存在する状態で豚肉や牛肉など、α-galを含む食物を食べると、α-galに対するアレルギー反応が発生します。α-galアレルギーが発症した際の症状は「α-gal症候群」と呼ばれており、唇や顔、喉など、さまざまな部分の腫れ、じんましんやかゆみ、腹痛や下痢、おう吐、頭痛などが症状として現れます。また、α-gal症候群はアナフィラキシーを引き起こす可能性もあり、呼吸困難やめまい、失神、脈拍の低下など危険な状態に陥る可能性もあります。

アメリカではα-gal症候群の疑いのある症例が近年急速に増加しており、CDCによると、2010年から2022年の間に、11万件以上もの症例が確認されているとのこと。また、α-gal症候群の診断を行うためには、α-galアレルギーに関する診断と医師による臨床検査が必要になるため、多くの患者がα-gal症候群の検査を受けていないとされています。


CDCの推定では、アメリカ国内で45万人もの人々がα-gal症候群である可能性がある一方で、1500人の医師や医療関係者にα-gal症候群について尋ねたところ、約42%となる635人の専門家が「α-gal症候群について知らない」と回答しました。

また、約35%の約530人の医師や医療関係者が、「α-gal症候群の患者を正しく診断、管理する自信がない」と回答しています。α-gal症候群の原因や診断、カウンセリングに関する基本的な質問に正しく回答ができた専門家はたったの42人と、α-gal症候群に関する周知が進んでいないことが問題視されています。

アメリカにおけるα-gal症候群患者は、だ液にα-galを含むことで知られているローンスターマダニが生息する、アメリカ南部や東部の州で多く確認されています。


CDCは「今後ローンスターマダニの生息地が拡大し続ける場合、アメリカでのα-gal症候群の症例は増加し続けると予測しています」と述べています。さらに、「α-gal症候群は新たな公衆衛生の問題で、一部の患者にとって一生続く健康被害をもたらす可能性があります」と語り、ダニにかまれることを防止するために適切な防虫剤や虫よけの使用や、樹木が生い茂った場所を訪れないことなどを推奨しています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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