サイエンス

「大麻成分入りグミ」をたった2個食べただけで幼児が血圧低下や呼吸不全などの急性中毒症状に見舞われる危険性がある


近年は世界のさまざまな国や地域で大麻を合法化する動きが進んでおり、大麻の主な有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を含むスナックやドリンクなども登場しています。そんな中、米国小児学会の学術誌・Pediatricsに掲載された論文で、「幼児は『大麻成分の入ったグミ』をたった2個食べただけで急性中毒になってしまう可能性がある」と報告されました。

Toxic Tetrahydrocannabinol (THC) Dose in Pediatric Cannabis Edible Ingestions | Pediatrics | American Academy of Pediatrics
https://doi.org/10.1542/peds.2023-061374


It Only Takes a Bite of a Marijuana Edible to Send a Child to the Hospital
https://www.usnews.com/news/health-news/articles/2023-08-28/it-only-takes-a-bite-of-a-marijuana-edible-to-send-a-child-to-the-hospital

Eating just 2 cannabis gummies can put small kids at risk of toxic effects | Live Science
https://www.livescience.com/health/medicine-drugs/eating-just-2-cannabis-gummies-can-put-small-kids-at-risk-of-toxic-effects

アメリカ・コロラド州は全米で最も早く2014年に娯楽用大麻が合法化された州であり、すでに大麻使用に関連する救急外来数が急増していることも報告されています。大麻の服用によって病院を受診するのは自分の意思で大麻を摂取した成人だけでなく、時には大麻成分入りのグミやクッキーなどをうっかり食べた子どもが急性中毒を起こし、入院するケースもあるとのこと。

「大麻の急性中毒で入院する幼児」が大麻を合法化した地域で激増 - GIGAZINE


そこで、コロラド州の医師らの研究チームは、「大麻成分入りの食品を食べて入院した6歳未満の幼児」の症例を分析し、幼児の急性中毒症状を引き起こすTHC摂取量のしきい値を調べました。論文の筆頭著者で、デンバーヘルスメディカルセンターの救急医療専門家であるレスリー・ペピン氏は、「大麻の合法化が広がることにより、子どもたちが意図せず大麻にさらされる事例が増加しています。幼児の場合、これらの暴露は主に食用大麻製品に起因しています」と述べています。

研究チームはコロラド小児病院ネットワークの医療記録を使用し、2015年10月1日~2022年10月25日の期間中に6歳未満の幼児が大麻成分入り食品を食べて入院した症例を抽出しました。大麻成分入り食品を食べて入院した事例151件のうち、摂取したTHCの量が正確にわかる80件について摂取量と症状、子どもの体重、年齢などの要因を分析しました。


調査対象となった子どもの年齢の中央値は2.9歳であり、摂取したTHCの量は体重1kgあたり0.2mg~69.1mgの範囲で、THC摂取量の中央値は体重1kgあたり2.1mgでした。また、症例の90%近くは子どもが自宅内で大麻成分入り食品を見つけて食べてしまったもので、一部の症例では大人が大麻成分が入っていない食品と勘違いして、大麻成分入り食品を子どもに与えてしまったとのこと。

今回の研究では、心拍数の変化や低血圧などの心血管系の問題、呼吸不全、発作、刺激に対する反応の低下といった症状を「重度」と分類し、症状が安定するまで6時間以上かかった場合に「長期」と判定されました。分析の結果、子どもの年齢や性別に関係なく「体重1kgあたり1.7mgのTHC摂取」が、「重度かつ長期」の急性中毒症状を示すしきい値であることが判明しました。

大麻成分入り食品は体重が数十kgの成人向けに作られており、一般的な「大麻成分入りグミ」は1個あたり10mgのTHCを含有しています。そのため、体重11kg程度の幼児は大麻成分入りグミをたった2個食べただけで、重度の急性中毒になってしまう可能性があるというわけです。


子どもたちの症状は大麻成分入り食品を食べてから早ければ15分後、多くは食べてから1~2時間後に現れました。ペピン氏は、「子どもが食用大麻を摂取したサインとして親が気づく可能性のある初期症状には、眠気や吐き気、嘔吐(おうと)、歩行困難、錯乱、瞳孔散大などがあります。また、目の充血や空腹感の増加など、大麻から連想される典型的な兆候も見られる可能性があります」と述べています。

子どもたちに見られた症状で最も一般的なものは鎮静および嗜眠(しみん)であり、34件の症例では治療を必要とせずに回復しましたが、37件の症例では少なくとも1つ以上の重度の症状が現れ、中央値で20.3時間にわたり症状が続きました。いくつかのケースでは子どもが意識不明になったり、人工呼吸器が必要になったりしましたが、子どもが死亡した事例はありませんでした。

子どもを大麻成分入り食品から保護する方法としては、「大麻入り食品を子どもの手が届かない施錠された場所に保管しておく」ことが最善だとペピン氏は指摘。また、生産者側も1個あたりのTHC含有量を減らしたり、子どもにとって魅力的なお菓子のような形状にするのを避けたりすることで、子どもへの被害を減らすことができるとの意見を述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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