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YouTubeで陰謀論やフェイクニュースを追いかけてしまう「ウサギの穴」現象はほとんど確認できなかったという実験結果


YouTubeのおすすめアルゴリズムで表示された動画を延々と見続けてしまったという経験がある人は多いはず。このおすすめアルゴリズムをたどっていくことで視聴する動画のジャンルが限定されていく現象は「ウサギの穴」と呼ばれ、視聴者が過激なコンテンツや陰謀論を語る動画にはまってしまいやすくなるといわれています。しかし、ダートマス大学のブレンダン・ナイハン教授の率いる研究チームが、おすすめアルゴリズムによる「ウサギの穴」で過激なコンテンツや陰謀論にはまるという現象はほとんど確認できなかったという実験結果を報告しています。

Subscriptions and external links help drive resentful users to alternative and extremist YouTube channels | Science Advances
https://doi.org/10.1126/sciadv.add8080


The World Will Never Know the Truth About YouTube’s Rabbit Holes - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/technology/archive/2023/08/youtube-rabbit-holes-american-politics/675186/

2016年に行われたアメリカ大統領選挙をきっかけに、YouTubeを拠点に活動するオルタナ右翼や陰謀論者が激増したといわれています。こうしたチャンネルの動画を視聴すると、YouTubeのおすすめアルゴリズムによって同様の動画がおすすめされるようになります。厄介なのは、必ずしも過激なコンテンツを探していたわけではない人でも、一度うっかり過激なコンテンツをクリックしてしまうと、アルゴリズムが過激な動画をおすすめし続けてくるという点。インターネットを中心に陰謀論や過激な思想を抱える人は、YouTubeの「ウサギの穴」現象によって増加しているという指摘もあります。


YouTube側は「ウサギの穴」現象を否定しており、有害なフェイクニュースや過激なコンテンツをおすすめに表示することを減らすため、おすすめアルゴリズムを調整したと2019年に発表しました。同時に、YouTubeはヘイトスピーチに関するポリシーに従わないYouTubeクリエイターの共有広告収入プログラムをブロックするなどの措置を取っています。

ナイハン教授が率いる研究チームは、1181人を対象に既存の政治的スタンスについて調査を行い、ブラウザの拡張機能を使って、2020年末から数か月間にわたってYouTubeのすべての活動を監視しました。その結果、過激派の動画を視聴していたのは参加者のわずか6%であることが判明。さらにそのうちの大半は、少なくともひとつの過激派チャンネルを意図的に登録していたこともわかりました。そして、これらの人々はYouTube内からではなく、外部リンクから過激な動画にアクセスしていることが多いことが明らかになりました。

ナイハン教授は、「一連の視聴パターンからは、『ウサギの穴』現象は見られませんでした。素朴なユーザーが突然、知らず知らずのうちに憎悪に満ちたコンテンツに流れていくのではなく、もともと性差別や人種差別の強い思想を持つ人が同様のコンテンツを求めていることがわかります」と主張しています。アメリカの月刊誌であるThe Atlanticは「ナイハン教授らの研究は、『ウサギの穴』現象の具体的で技術的な定義を提唱しているという点で、依然として重要です。『ウサギの穴』という言葉は、一般的な会話だけではなく学術研究でもさまざまな使われ方をしてきました。ナイハン教授らの研究チームは、『ウサギの穴』現象を『人がおすすめに従って、それまで見ていたよりも過激なタイプの動画にたどり着くこと』と定義しました」と評価しています。


ただし、ナイハン教授は、YouTubeはおすすめ機能によって過激な動画へ誘導することをやめておらず、ユーザーが過激派の動画を公開することも許可し続けていると指摘し、今回の研究がYouTubeにとって「全面的な免罪符」にはならないと注意を促しています。

一方でThe Atlanticは、ナイハン教授らの研究では「データが収集された2020年以前にYouTubeで起こったことは説明できません」と指摘。ナイハン教授らは論文で「2019年以前から、影響を受けやすい人々がすでに過激化していた可能性がある」と論じていますが、YouTubeがおすすめアルゴリズムを調整する前に「ウサギの穴」現象が起こっていなかったかどうかは検証できておらず、「ウサギの穴」現象はほとんど起こらないとは言えないのではないかというのがThe Atlanticの主張です。The Atlanticは「結局のところ、過激なコンテンツは依然としてYouTubeに存在し、一部の人々はまだそれを見ています。YouTubeで動画を見る過激派と、YouTubeで過激なコンテンツを広めるYouTuberと、どちらが先に登場したのでしょうか?」と疑問を提起しています。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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