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世の中のエンジニアたちによる「おすすめのレジストラ」はどこなのか?


9月7日にGoogleのドメイン登録サービス「Google Domains」のSquarespaceへの売却が完了し、以降の数か月にわたってドメインの移行が行われる予定です。何らかの事情でSquarespaceを使用したくない人向けに、エンジニア向けのニュースレターを発行しているゲルゲリー・オロシュさんがX(旧Twitter)を利用して「おすすめのレジストラ(ドメイン登録業者)は?」というアンケートを行いました。

Domain Registrars which Developers Recommend - The Pragmatic Engineer
https://blog.pragmaticengineer.com/domain-registrars-which-developers-recommend/


Google Domainsの買収契約は2023年6月15日に締結・発表されていました。当時の発表内容については下記の記事を読むとよく分かります。

Googleがドメイン登録サービス「Google Domains」をSquarespaceに売却してユーザー丸ごと移管予定、既にドメインを購入しているユーザーはどうなるのか? - GIGAZINE


なお、オロシュさんは「決してSquarespaceに反対しているわけではない」と前置きしています。Squarespaceは2020年にドメイン登録業者になっており、すでに100万件以上のドメインの管理実績があります。ただし、多くのドメイン登録業者がほぼ卸売コストでドメインを再販し、ホスティングなどの付属サービスで利益を上げているのに対し、Squarespaceはドメインの販売自体で利益を出すため、登録費用が高めになる傾向があるとのこと。

アンケート結果の前に、管理しているドメイン数ベースでの世界シェアを確認すると下図の通り。10%以上のシェアを持っているのは「GoDaddy」のみで、「Namecheap」が2.8%で2位、「Tucows」が1.7%で3位と続いています。Google Domainsは1.5%で4位でした。


上のグラフで「Other(その他)」と表示されている小さな業者を除き大規模な業者のみで比較すると下図のようになります。


そしてオロシュさんのアンケートの結果は下図の通り。シェアでは圧倒的な存在感を放っていたGoDaddyが消え、Cloudflare、Namecheap、Porkbunの3サービスが10%以上の支持を集めました。


3つのサービスが10%以上の支持を獲得した理由について、オロシュさんはエンジニアたちの声を交えて下記のように解説しています。

◆Cloudflare
Cloudflareについては、「メールの転送がすぐに使えて無料で、リダイレクトのルールも簡単。HTTPSエンドポイントの保護もついてる」「Cloudflareを使ってみて気付いたのは、Cloudflareが単なるDNSサービス以上のものということ」「原価販売で、値上げされたり手数料を請求されたりしない。WHOIS保護やDNSSEC、2FAなどの保護も付いている。しかもCloudflareのネットワークを利用してサイトをブーストできる」など好意的なコメントが寄せられました。

Cloudflareへの言及が多かったので、オロシュさんは実際にCloudflareを利用してみたとのこと。「Google Domainsを思い出させるすっきりしたインターフェース」と述べられています。DDoS攻撃を防ぐ保護機能が最初から付属しているのも見逃せない点です。


オロシュさんがCloudflareに対し、Google Domainsからユーザーが流入しているかを質問してみたところ、新興テクノロジーおよびインキュベーション担当シニアバイスプレジデントのデイン・ネクト氏から返事がありました。

ネクト氏によると、Google Domainsからの流入は大幅に増加しているとのこと。その理由について、多くのユーザーは初回の購入時は安価なのに更新時には高い値段を請求するおとり商法を避けたいからではないかとネクト氏は話しています。


Cloudflareはドメインを実費で販売しているため、初回時・更新時に関係なく同じ値段でドメインを購入・維持できますが、一方でドメインの購入数が増えるほどCloudflareは赤字になってしまいます。この点について、オロシュさんが「どのように収益を上げて事業を継続していくのか」を質問してみると、ネクト氏は次のように語ったとのこと。

「私たちは、2014年にSSLに対して行ったのと同様のアプローチをレジストラサービスに対して採用しました。オンラインで暗号化を行うためにユーザーが料金を支払わなければならないのはおかしいと判断し、2014年、Cloudflareは無料プランであっても追加料金なしで暗号化を利用できると宣言した最初のサービスの1つになりました」

「私たちはドメイン登録でも同じことが起こっているのを目の当たりにしました。TLDの運用にはコストがかかり、それを顧客に転嫁しています。しかし、私たちが実際に行っているのはAPIにpingを送信するだけであり、コストは最小限であるため、顧客が卸売価格以上の料金を支払う理由はありません。2018年にレジストラサービスを発表したときにお客様と交わした約束は、コストを超える値上げを決して請求しないことであり、私たちはその約束を守るつもりです」

◆Namecheap
Namecheapをオススメするエンジニアのメッセージは次の通り。

「2000年代の時代遅れのUIですが、私にとってそれは前向きな兆候です。これは、彼らの中核事業が十分にしっかりしたものであるため、不必要な新機能を恣意的に発明する必要がないことを示しています」
「私の理由は単純です。それは彼らの本業であり、ハッカーニュースコミュニティでも非常に信頼されているからです」
「Namecheapには約5年間在籍しています。大好きです」

多くの開発者は何年もの間特に問題なくNamecheapを使用し続けてこれたとのこと。さらに、X(旧Twitter)でCEOが積極的に活動し、苦情やコメントに対応しているのも良い点として述べられています。

◆Porkbun
Porkbunの特徴は公式サイトがコミカルなキャラクターを使用したキャッチーなものになっている点です。


さらに、TLDごとに固有の子豚のイラストが存在しています。


オロシュさんはPorkbunにもGoogle Domainsからの流入状況を質問してみたとのこと。すると、Squarespaceへの売却の発表後、Google Domainsからの流入が1年前に比べて50倍に増加しているとPorkbunから返信がありました。Porkbunは加えて、開発者からの支持を得ている理由として下記の通り述べています。

「当社はLet's Encrypt経由で無料のSSL証明書を提供した最初のレジストラであり、当社の総合的な価値は誰にも負けません。当社は、業界のニーズと顧客からのフィードバックに応えて、AIをドメイン名検索に組み込む競争の中で、 AI Search Generatorツールを最初にリリースしました」

「さらに、フレンドリーで、楽しく、親しみやすいことの重要性を無視することはできません。私たちは自分たちのことをあまりまじめとは考えていません。だって私たちのロゴは豚の尻ですよ」

Porkbunはドメイン名を安価で販売しており、これはユーザーの財布にとっては良いことですが、ビジネスの持続可能性については疑問です。そこでオロシュさんがPorkbunに、ユーザーはPorkbunが廃業しないとどれだけ確信できるのかと質問してみると、下記のような内容の返信がありました。

「Porkbunはもともと新しいTLDレジストリとして立ち上げられ、『.wiki』『.ink』『.design』『.gay』『.tattoo』を所有していました。しかし、立ち上げ後、PorkbunはGoDaddyのような大手レジストラが、Porkbunが望むような方法でこれらのドメインを販売していないことに気づき、独自のドメインを立ち上げました」

「レジストリサービスは.designの登録ごとに33ドルを稼いでいたので、Porkbunサービスがどれくらい稼ぐ必要があるかを自問しました。標準ドメインのマージンは変わらず、1ドル以下です」

「私たちの無駄のない性質が製品に影響を与えていると指摘できる箇所がいくつかあります。私たちはまだ年中無休のサポートを提供していません。他の国やccTLDに拡大する意欲があります。そして、私たちは口コミの成長とマーケティングに依存してサービスを運営してきました」

そしてPorkbunは、小規模ながらサービスを継続している自社とテクノロジー大手の支援を受けつつも事業を売却されてしまったGoogle Domainsと比較して、皮肉を込めた反応でやりとりを終えました。

「PorkbunとGoogle Domainsはどちらも2015年にスタートしたことを指摘しておきます。Google Domainsは、利益率がはるかに高く、世界で第4位のレジストラに成長しました。それでもなお、Porkbunは依然として長期的に顧客のために取り組んでいます。私たちは自分たちが業界の中にいることを認識しており、レジストラとしての私たちがすぐに消えるわけではないことを強調します」

なお、4位以下の支持を集めたサービスは下記の通りとなっています。

・AWS Route 53
既にAWSを利用している人にとっては明らかな選択肢です。

・Gandi
フランスのプロバイダーで、特にヨーロッパで人気があります。AWSは、多くのドメインで内部的にGandiを使用しています。

・iwantmyname
400以上のドメインをサポートし、15年間運営されているプロバイダー。

・GoDaddy
圧倒的な市場シェアを考えると、この巨大企業を推奨するエンジニアが比較的少ないのは興味深い点です。

・Hover
アンケートでHoverを推薦した回答者のコメントは以下の通り。

「長年使っています。コントロールは優れているほか、非常に広範な知見をもっており、サポートが必要なときに非常に役に立ちます」

・Namesilo
世界中で人気のあるレジストラ。

・DNSimple
2010年から存在するプロバイダーです。

・Name.com
2003年くらいから存在しています。

・Dynadot
2002年に設立されました。

・Vercel
フロントエンドインフラストラクチャとして人気があるフロントエンドクラウドプラットフォーム会社で、サービス内でドメイン登録を提供します。

・INWX
ドイツのレジストラ。

・Hetzner
ドイツのクラウドプロバイダーおよびレジストラ。

・OVH Cloud
フランスのクラウドプロバイダーおよびレジストラ。

・Inonos
1988 年に設立されたドイツの会社。

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in ネットサービス, Posted by log1d_ts

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