サイエンス

よくネットを使う高齢者は認知症のリスクが圧倒的に低いという研究結果


インターネットの使用に関する議論は主に子どもや青少年が中心ですが、近年では中高年でも日常的にインターネットを使用する人が増えています。認知症のない中高年を追跡した研究では、「インターネットを使う高齢者は認知症のリスクが低い」という結果が報告されています。

Internet usage and the prospective risk of dementia: A population‐based cohort study - Cho - 2023 - Journal of the American Geriatrics Society - Wiley Online Library
https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.18394


Regular internet use may be linked to lower dementia risk in older adults, study says | CNN
https://edition.cnn.com/2023/05/03/health/internet-use-dementia-risk-wellness/index.html

Older adults who regularly use the internet have half the risk of dementia compared to non-regular users
https://www.psypost.org/2023/09/older-adults-who-regularly-use-the-internet-have-half-the-risk-of-dementia-compared-to-non-regular-users-183597

インターネットに存在するさまざまなコンテンツを楽しんだり、インターネットを通じて他の人とコミュニケーションしたりすることは、高齢者の脳を刺激して認知機能の維持に役立つ可能性があります。実際に過去研究では、インターネットユーザーの高齢者は非インターネットユーザーと比較して全体的な認知能力が優れていることが示されています。

その一方で、過去の研究は経時的な変化をほとんど追跡していないか、追跡したとしても非常に短期的なものにとどまっていたとのこと。そこでニューヨーク大学医学部の研究チームは、インターネットの定期的な使用が高齢者の認知症リスクとどのように関連しているのか、インターネットの使用時間による影響の変化はあるのかについて研究を行いました。

研究チームが利用したのは、アメリカに住む50歳以上の中高年を対象にしたHealth and Retirement study(健康および退職研究)という調査のデータです。この調査では、1966年以前に生まれた合計1万8154人の被験者を追跡しており、調査項目の中にインターネットの使用頻度や認知症の症状なども含まれています。


健康および退職研究では、「電子メールの送受信、オンライン通販での買い物、情報の検索、旅行の予約またはその他の目的で、ウェブまたはインターネットを定期的に使用していますか?」という質問で、2002年から隔年でインターネットの使用についてインタビューしています。また、被験者らは毎日の平均的なインターネットの使用時間についても回答しました。さらに、認知症の症状についても電話インタビューによって2年ごとに評価されたとのこと。データの収集期間は2002年~2018年の間で、被験者の年齢は調査開始時点で50~65歳、追跡期間の中央値は8年でした。

調査結果をまとめたところ、被験者のうち65%が定期的にインターネットを使用しており、35%は不定期なインターネットユーザーであることが判明。調査期間中にインターネットの使用習慣が変わったのは21%で、53%は変わらずで、残る26%は追跡調査中に何らかの原因で連絡が取れなくなったか、認知症を発症したか、あるいは死亡したとのこと。調査中に認知症を発症したのは被験者のうち5%で、8%が死亡またはその他の要因で研究から除外されたそうです。


これらの調査結果と人口統計データをあわせて分析したところ、研究開始時点でインターネットユーザーだった中高年は認知症発症リスクが1.54%だったのに対し、非定期的なインターネットユーザーはリスクが10.45%でした。調査開始時点で認知症の兆候がない人に対象を限定した場合、インターネットユーザーの認知症発症リスクは非定期的なインターネットユーザーの62%と、やはり定期的にインターネットを使用する人は認知症リスクが低いことが示されました。

また、インターネットの使用時間との関連を見ると、最も認知症リスクが低かったのは1日あたりのインターネットの使用時間が6分~2時間のグループであり、2時間を超えると次第に認知症のリスクは増加していく傾向がみられたとのことです。


今回の研究はあくまでインターネットの使用と認知症リスクの関連を示したものであり、一体どういうメカニズムでインターネットの使用が認知症のリスクを減らすのかは特定されていません。しかし、論文の共著者であるニューヨーク大学のバージニア・チャン准教授は、「オンラインでのエンゲージメントが、加齢による認知力の低下を抑える『認知予備力』の開発と維持に役立ち、それが脳の老化を補って認知症のリスクを減らすことができるのかもしれません」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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