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「模倣」や「オマージュ」ではなく「オリジナル」のものを作る意義とは?


創作に取り掛かっている際に、うまい表現が思いつかなかったり、有名な詩句を引用することで雰囲気や深みを出したり、単純に「あるある」と共感や笑いを生んだりといった目的で、他の作家や作品の「模倣」ないし「オマージュ」を用いることがあります。アメリカの文芸雑誌・AGNIの共同編集者であるウィリアム・ピアース氏が、「書くことの価値とは何か?」というテーマにおいて、模倣やオマージュを用いた作品について語っています。

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ピアース氏はAGNIの編集者として、直接のオマージュや分かりやすい模倣を含んだ作品を多数目にすることがあるそうです。そのような作品は、単なる構造の転用やプロットの流用ではなく、別の作家の言葉や表意方法のクローンと言えるほど徹底したものもあり、驚くほどよいものができあがっていることもあるとのこと。


また、ピアース氏は創作について友人と共同で授業をしたことがあり、その際に模倣による練習を課した経験を語っています。授業では、まだ自分自身の文章の形や表現に対する感覚を養うことができていない生徒でも、自分の思考にうまくからみつく模倣の形に出会えた途端、筆が進むケースが多いそうです。「模倣を始めることで、音域や構文、テンポなどに対して、驚くほど明確な直感を示すのを何度も目の当たりにしてきました」とピアース氏は模倣による効果を語っています。

しかし、模倣は創作のエンジンとして役立ちますが、そうして完成した作品が文芸雑誌に応募作として送られてくると、「その作品は、創作において何が価値を与え、創作の価値というものを構成するのかという疑問を、よみがえらせます」とピアース氏は指摘しています。

創作とは無限に広がる空白のページに時間や空間、人物を配置して物語を展開していく途方もない作業といえます。そこで模倣をすると、空白のページから無限性を取り除き、一定の方向性やスタイルに限定できるので、創作の練習に集中できます。しかし、これらは翻訳の作業と同じように、模倣の元となる作品のリズムやトーン、感情などを引き継ぐかどうか「選択」する行為の連続であり、「全てを持ちうることができるのは、オリジナルのみです」とピアース氏は述べています。


私たちは、まだ誰も書いたことのないものを書こうとするときでも、自分の経験を含む先人たちの文章やイラスト、映像などを、ほんの小さなディティールにさえ利用しています。ピアース氏は「書くことは、あらゆるレベルで借用に依存しています」と表現しています。唯一、借用に依存せず、編集者が「こうした方がよい」とアドバイスすることも難しいものは、作家が「自分」を全力で入れている場所です。より大きなエネルギーを持ち、仮に模倣の中であっても自分の世界の輪郭がページ上に現れているような状態こそ、全ての作家がたどりつきたいと考えている価値であるとピアース氏は語っています。

「価値のある作品を作るためには、あるいは作品を成功させるためには、作家自身が作品に深く関わっていなければなりません」とピアース氏は述べています。想像力豊かな文章を書くことは、作家の本懐である一方で、常に一か八かの賭けだと言えます。何が想像力豊かな表現なのか誰かに教わることは難しく、できあがったものがいかに想像力に満ちた文章なのかと主張することもできません。それでも、優れた文章には定義上何らかの価値があり、読み手としての私たちにも一定の形があるため、作家は常に「価値との出会い」を感じるために自らの想像力を展開させていくことが重要です。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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