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Appleは自らがPWAを廃止した行為を「EUのせい」と責任転嫁しようとしているとの指摘


ウェブサイト上で利用できるサービスを端末上で再現する「プログレッシブウェブアプリ(PWA)」のサポートを、Appleは何の前触れもなく廃止しました。これはEUで施行されたデジタル市場法(DMA)に準拠するためだったのですが、そのようなAppleの言い分は言い訳に過ぎず、競合他社を蹴落とす狙いがあるとして、ChromeやEdgeの開発をリードしてきたアレックス・ラッセル氏が強く非難しています。

Home Screen Advantage - Infrequently Noted
https://infrequently.org/2024/02/home-screen-advantage/

iOS 17.4のベータ版においてPWAのサポートが廃止されていることが明らかになったのは2024年2月初旬のこと。後にAppleから「DMAによりWebKit以外のブラウザエンジンをiOSで許可することになったが、WebKitを念頭に置いて構築されたPWAのサポートを別のブラウザエンジンに拡張するのは現実的ではない」との説明が行われ、EU圏内でPWAのサポートが終わることが確定しました。

ラッセル氏は「一読するとDMAの施行により廃止を余儀なくされたように思えますが、これはウェブがApp Storeにとって真の脅威とならないようにし、自身の悪意ある選択を規制当局のせいにしようとするAppleの衝撃的な試みなのです」と指摘し、Appleがむちゃくちゃなことを言っているとしていくつかの意見を述べました。

DMAは2022年に施行されたEUの法律で、この法律によりAppleを含めたいくつかの企業に複数の規制が課されることとなりました。規制準拠のタイムリミットは2024年3月6となっていて、各企業はこの日までの対応を迫られています。AppleはApp Store以外のアプリストアを経由したサイドローティングや、App Store外のアプリ内決済手段導入等の対応を取らざるを得なくなったほか、WebKit以外のブラウザエンジンもほとんど渋々認可しました。


ところが、Appleが実際に打ち出したのは強く規制に縛られた不自由極まりない機能ばかりでした。例えばサイドローディングは許可されたもののApp Store以外のアプリ配布システムの構築には厳しい条件が課されており、アプリ内決済については12%~27%の手数料を徴収するといったサービス事業者にとって優しくないものでした。

ブラウザエンジンについても同様で、開発条件として多数の要件を設けた上での認可という形が取られており、タイムリミットの数週間前にようやくAPIが公開されるという始末になっています。おまけにこれら機能が認められたのはDMAが施行されるEU圏内のみであり、その他の地域では引き続き以前までのAppleのルールの中で開発者はやりくりしていかなければなりません。

このような状況となったことをブラウザの開発者たちは嘆き、Firefox開発元のMozillaは「Firefoxのようなブラウザに2つのブラウザの構築と保守を強いることになります。ブラウザの開発を可能な限り困難なものにすることで、消費者に選択肢を与えないようにするAppleの戦略です。非常に失望しています」と語っています。


これに加え、WebKit以外の面倒は見きれないという建前で、ついでのような形で廃止されたPWA。ラッセル氏はPWA廃止に関するAppleのQ&Aを引用し、Appleの回答は本来の意図を包み隠した言い訳に過ぎないと説明しています。

Appleは、「EUのユーザーはなぜホーム画面上のウェブアプリ(PWA)にアクセスできないのですか?」という質問に対し、「DMAを順守するため、AppleはEUのデベロッパーとユーザーのために、600以上の新しいAPIと幅広いデベロッパーツールを含む新しい機能を追加するエンジニアリング作業を行いました」と答えになっているようで全くなっていない言葉を返しています。

ラッセル氏はこれを取り上げて「Appleは、『2007年以来iOSの根幹をなしてきた機能をなぜEUだけで壊したのですか?』という質問に、『コンプライアンスを回避するための訴訟で我々はすっかり疲れてしまった。その上、EUの意地悪な連中が我々に追加で仕事をさせた。不公平極まりない』と返したに過ぎません」と批判。これは、そもそも規制以前からやろうと思えばできたことをやらなかったAppleの怠慢だとの考えを示しています。


Appleは基本的に自社のルールに従わせることで強固なセキュリティを維持しており、代替ブラウザに規制を課していることについても、「悪意のあるウェブアプリが他のウェブアプリからデータを読み取り、ユーザーの同意なしにユーザーのカメラ、マイク、位置情報にアクセスするためのパーミッションを奪還する可能性があり、またウェブアプリをシステムにインストールする懸念もある」という観点からの処置であると説明しています。

ところが、ラッセル氏はこれについて「Appleは、ホームスクリーンにアイコンを追加したり、アプリをインストールしたりするシステムAPIを完全にコントロールしているので、このようなことは起こらないとわかっているはずです」と指摘し、これまた対応を行わない言い訳であると考察しました。

ラッセル氏は「Appleの明らかな戦略は、iOSにブラウザを移植するコストを上げ、競合するブラウザの価値を下げることです。他のブラウザが使い物にならないようにルールを設け、セキュリティに関する一連の偽りの言い訳で正当化しています。不愉快で、図々しく、DMAに違反している可能性が高く、法的紛争に発展する可能性があります」と述べました。

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in ソフトウェア, Posted by log1p_kr

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