サイエンス

超大質量ブラックホール「いて座A*」の新画像により渦を巻く強烈な磁場が初めて捉えられる

いて座A*


2022年に、天の川銀河の中心に位置する巨大ブラックホール「いて座A*」の画像を公開したイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が、ブラックホールの周囲で渦巻く磁場の存在を明らかにする画像を新しく公開しました。

First Sagittarius A* Event Horizon Telescope Results. VII. Polarization of the Ring - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ad2df0

First Sagittarius A* Event Horizon Telescope Results. VIII. Physical Interpretation of the Polarized Ring - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ad2df1

天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く強力な磁場を発見 | EHT-Japan
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20240327.1.html

以下は、EHTが今回新しく公開した、いて座A*に関する画像です。線は「偏光」の方向を示しており、ブラックホールが作る影である「ブラックホールシャドウ」の周囲の磁場の様子が捉えられています。

Breaking news: the Event Horizon Telescope team unveils strong magnetic fields spiraling at the edge of Milky Way’s central black hole, Sagittarius A*. This new image suggests that strong magnetic fields may be common to all black holes.

#OurBlackHole #SgrABlackHole pic.twitter.com/BV8eON4Jhc

— Event Horizon 'Scope (@ehtelescope)


EHTによると、ブラックホールの磁場を示す偏光が、これほどいて座A*の縁に肉薄しているのが捉えられたのはこれが初めてだとのこと。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者であるサラ・イサウン氏は、「私たちが今見ているのは、天の川銀河の中心にあるブラックホールの近くに、渦巻くように整列した強力な磁場があるということです」と話しました。


人が物を見るのに必要な光は、振動している、つまり動いている電磁波です。この時、光はある特定の方向に振動することがあり、前述の「偏光」とはこのことを指しています。

ブラックホールの周辺のプラズマでは、磁力線の周囲で渦を巻いている粒子が磁力線に垂直の偏光パターンを与えます。上記の画像は、この働きを利用して作成されました。

So what does our spiral pattern tell us about the magnetic fields around Sagittarius A*? The field is actually strong and ordered!

cr. Crazybridge Studios, EHT Collaboration #MagneticBlackHole #EHTblackhole
????https://t.co/lAWZ5Jiukr pic.twitter.com/Pgd9QCUzDm

— Event Horizon 'Scope (@ehtelescope)


EHTは2022年に、地球から約2万7000光年の距離にあるいて座A*の最初の画像を公開し、2019年に初めて画像化されたM87のブラックホールに比べて1000分の1程度の質量しかないにもかかわらず、いて座A*とM87のブラックホールの様子が驚くほど似ていることを明らかにしました。

地球と同じ銀河に存在するブラックホールの画像が初めて撮影される - GIGAZINE


質量も属する銀河も異なる2つのブラックホールの類似性から、ETHは両者に外見以外にも共通点があると考え、偏光の分析を行いました。そして、物理学雑誌・The Astrophysical Journal Lettersに掲載された2本の論文で、これらのブラックホールの縁に類似した磁場構造が存在することを解明しました。


イタリアのナポリ・フェデリコ2世大学のマリアフェリチア・デ・ローレンティス教授は、「いて座A*の磁場構造がM87と非常に似ているという事実が明らかになりました。これは質量や大きさ、周囲の環境の違いにもかかわらず、ブラックホールにガスが供給され、またその一部がジェットとして放出される物理過程が巨大ブラックホール間で普遍的である可能性を示唆しており、重要な発見です」と述べています。

EHTは2017年から複数回の観測を行っており、2024年4月にも再びいて座A*を観測する予定とのこと。また、今後10年間に計画されているアップデートでは、いて座A*の信頼性の高い動画を作成することで、これまでのところ明らかになっていない「ジェット」の存在を突き止めることが可能になると期待されています。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1l_ks

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