サイエンス

GPSの精度が高くなってもなぜGoogleマップの位置情報は精度が高くならないのか?


スマートフォンやカーナビは、GPSを利用することで高い精度で現在位置を特定しています。しかし、Googleマップで現在位置を参照すると点ではなく円で示されることがよくあり、GPSの精度が高くても位置情報はどうしても正確に表示されません。その理由について、科学系ニュースサイトのNautilusが解説しています。

What Happens to Google Maps When Tectonic Plates Move? - Nautilus
https://nautil.us/what-happens-to-google-maps-when-tectonic-plates-move-237678/

アメリカ地質調査所のケン・ハドナット氏によると、Googleマップでズレが生じるのは、GPSの精度だけではなく、地図の座標系を地理座標系に紐付けるジオリファレンスも原因といえるそうです。

たとえば、2008年に行われた研究で先進国の31都市におけるGoogle Earthの画像を調査したところ、1~50メートルの誤差があったことが明らかになりました。この誤差はGPSユニットの精度だけではなく、時間が経過してジオリファレンスにずれが生じたために発生した可能性が示されています。

アメリカ国立測地局(NGS)のドルー・スミス氏は「人々がスマートフォンでセンチメートル単位の精度を求める時代が訪れていますが、いずれ地図とGPS精度が合わなくなって、多くの人が頭を悩ませることになるでしょう」とコメントしています。


地図は測量に基づいて作られています。しかし、測量を行う地面は不動のように思ってしまいますが、実際は目に見えないレベルで動き続けています。1960年代後半から提唱されているプレートテクトニクス説では、地球の表面は「プレート」と呼ばれる厚さ数十キロメートルほどの岩盤に覆われており、この岩盤が絶えず動き続けていると考えられています。

NGSは、北アメリカ大陸の測量のために「NAD83」という基準座標系を設定しています。このNAD83は北アメリカプレートの動きに合わせているため、北アメリカ大陸の測量士にとっては重要な座標系です。一方で、GPSでは地球全体の基準座標系である「WGS84」が使われています。

このNAD83とWGS84には数メートルの誤差が生じており、徐々にズレが生まれていることがわかっています。NAD83は地球の形状や大きさに対する知見を反映しておらず、地球の中心点の座標がWGS84から約2メートルずれているとのこと。NGSはNAD83の更新を2022年に行っていますが、それでも約1メートルのズレが残っているとのこと。


2011年に発生した東日本大震災では、GPSによってリアルタイムにプレートの動きが捉えられました。震源近くの海岸線は最大4メートル水平移動していることがわかっています。以下は、国土地理院のデータに基づいてカリフォルニア大学バークレー校の地学者であるロニー・グラペンシン氏が作成したムービーで、各地点の東西(Horizontal)方向と南北(vertical)方向でズレが生じたのかが地震発生からリアルタイムでまとめられています。

Sendai / Tohoku-oki earthquake displacements 1Hz data - YouTube


このような大きな地震が発生すると、断層に沿って地表が大きくずれることがあり、その変位量は数メートルに及ぶことがあります。こうした変化が地図に反映されるには時間がかかるため、GPSの測位情報と地図のズレはますます広がっているというわけです。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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