サイエンス

「哲学者プラトンが埋葬された場所」が古代の火山噴火で黒焦げになった巻物から判明


古代ギリシアの哲学者であるプラトンは西洋哲学の基礎を作った人物のひとりであり、「国家」や「ソクラテスの弁明」などの著作で知られます。そんなプラトンが埋葬された正確な場所が、火山噴火によって黒焦げになった古代の巻物が解読されて明らかになりました。

Lo 'sguardo' tecnologico legge i papiri carbonizzati | Consiglio Nazionale delle Ricerche
https://www.cnr.it/it/nota-stampa/n-12655/lo-sguardo-tecnologico-legge-i-papiri-carbonizzati


Plato's burial place finally revealed after AI deciphers ancient scroll carbonized in Mount Vesuvius eruption | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/romans/platos-burial-place-finally-revealed-after-ai-deciphers-ancient-scroll-carbonized-in-mount-vesuvius-eruption

Deciphered Herculaneum papyrus reveals precise burial place of Plato | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2024/04/deciphered-herculaneum-papyrus-reveals-precise-burial-place-of-plato/

イタリアのナポリ近郊にあるヴェスヴィオ火山は西暦79年に大噴火を起こし、ポンペイヘルクラネウムなど古代ローマの都市を壊滅させました。火砕流に埋もれたヘルクラネウムの都市遺跡では、「パピルス荘」と呼ばれる建物から貴重な書物(ヘルクラネウム・パピルス)が多数発掘されています。

このパピルス荘で発掘された巻物の中には炭化してもろくなり、開くと崩れてしまうため普通に読むことができないものも多数含まれていますが、現代では最新のテクノロジーを用いて巻物を解読する試みが進められています。こうした試みのひとつである「ヴェスヴィオ・チャレンジ」というプロジェクトでは、世界各国のAI研究者が巻物の解読に挑み、当初の想定を大幅に超える合計2000字以上のテキストを解読することに成功しました。

火山噴火で黒焦げになった古代ローマの巻物をAIで解読するコンテスト「ヴェスヴィオ・チャレンジ」の優勝チームが発表される - GIGAZINE


そして2024年4月23日、新たにイタリア学術会議のInstitute of Heritage Science(文化遺産科学研究所)が、ヘルクラネウム・パピルスの解読によってプラトンの埋葬場所が明らかになったと報告しました。文化遺産科学研究所は赤外線やサーマルイメージング、分子イメージング、X線断層撮影、デジタル光学顕微鏡などを組み合わせた「バイオニックアイ」というスキャン技術を用いて、ヘルクラネウム・パピルスの解読を行っています。

今回研究チームが解読したのは、エピクロス派の哲学者・ピロデモスが残した巻物です。パピルス荘はユリウス・カエサルの義父が所有していた別荘であり、ピロデモスは一時そこで生活をしていたことがわかっており、パピルス荘からはピロデモスの著作も多数発見されています。

研究チームの声明によると、解読した巻物はプラトンがアテナイの郊外に開設したアカデメイアという学園について記したものであり、これまでにテキストの約30%にあたる1000語以上を解読することに成功したそうです。特に目をひく発見のひとつが、プラトンが埋葬された場所についての事実です。これまで、プラトンがアカデメイアの敷地内に埋葬されたことは知られていましたが、その正確な場所は不明でした。新たに解読されたテキストにより、プラトンは「プラトン学派のために予約されていたプライベートエリア」に埋葬され、そこがムセイオン(学堂)の近くだったことが明らかになりました。


また、これまではプラトンが奴隷として売られたのは紀元前387年頃という説が有力でしたが、今回解読されたテキストからは紀元前404年またはソクラテスの死の直後である紀元前399年に奴隷として売られた可能性が示されているとのことです。

歴史学者のグラツィアーノ・ラノッキア氏は、「これは以前の版と比較してほとんど根本的に変更されたテキストであり、さまざまな学術哲学者に関する一連の新しく具体的な事実が示唆されています。新たな版の記述を理解することで、研究者たちは古代哲学、ギリシアの伝記と文学、そして書物の歴史について思いがけず学際的な推論に到達しました」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
火山噴火で黒焦げになった古代ローマの巻物をAIで解読するコンテスト「ヴェスヴィオ・チャレンジ」の優勝チームが発表される - GIGAZINE

火山灰に埋もれて炭化した古代ローマの巻物を解読したら3000万円がゲットできるチャレンジで最初の単語がついに解読される - GIGAZINE

火山灰に埋もれた古代ローマの巻物を解読したら3000万円がゲットできる「ヴェスヴィオ・チャレンジ」 - GIGAZINE

ポンペイを飲み込む大噴火を起こしたヴェスヴィオ火山の近くで古代ローマの別荘が発見される、「博物誌」の大プリニウスが噴火を見た別荘か - GIGAZINE

古代ローマ時代の火山の噴火で消えた町・ポンペイにおける売春婦の実態とは? - GIGAZINE

ポンペイ遺跡で「ピザのようなもの」が描かれた壁画発見、研究チームは「トマトとチーズがない」とピザ説を否定 - GIGAZINE

約2000年前の古代都市ポンペイの遺跡から馬の姿がまるごと発掘される - GIGAZINE

GoogleのAIは古代ギリシャの碑文解読をものの数秒で行うことができるように - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.