サイエンス

「和食」を食べる女性は西洋型の食事をしている人より脳の衰えが少ないことが判明、なぜ女性だけなのか?


西洋型の食生活がアルツハイマー病のリスクになる一方で、地中海料理が認知症の予防に役立つとの研究結果が報告されるなど、認知機能を維持するには伝統的な食生活が重要なことがわかってきています。新たな研究により、伝統的な日本の食生活を送っている人は脳の萎縮が少ないことが突き止められましたが、そこには性差があることも判明しました。

Associations of dietary patterns and longitudinal brain-volume change in Japanese community-dwelling adults: results from the national institute for longevity sciences-longitudinal study of aging | Nutrition Journal
https://link.springer.com/article/10.1186/s12937-024-00935-3

Traditional Japanese diet associated with less brain shrinkage in women compared to western diet, says research
https://theconversation.com/traditional-japanese-diet-associated-with-less-brain-shrinkage-in-women-compared-to-western-diet-says-research-226347

イギリス・リバプール大学で認知機能について研究している心理学者のジョバンニ・サラ氏と、日本の国立長寿医療研究センターの張姝氏によると、伝統的な日本料理である和食は、大豆、みそ、海藻類、きのこ類などの食材を豊富に使用することや、赤身の肉をほとんど食べないことなどが特にユニークだとのこと。

伝統的な地中海料理が脳の萎縮を予防することに着想を得たサラ氏らの研究チームは、同様のパターンが日本の食生活と日本人の脳の容量にも当てはめられるのかを明らかにするため、40~89歳の日本人1636人を対象とした調査を実施しました。

参加者らは使い捨てカメラを配布され、食事の前後に料理の写真を撮影して、3日間摂取した飲食物をすべて記録するよう依頼されました。


その結果、1636人の日本人のうち589人が伝統的な日本の食生活を送っている一方、697人は精製された炭水化物や高脂肪食品、アルコールやソフトドリンクを特徴とする典型的な西洋食を食べていることがわかりました。また、残りの350人は平均より植物性の食品と乳製品が多い食事を食べており、研究チームはこの食生活を「野菜・果物・乳製品食」と名付けました。

研究チームはさらに、食生活以外の要素が調査結果に与える影響を除外するため、認知症の遺伝的素因、喫煙の有無、運動量、脳卒中や糖尿病の既往歴などを含む生活習慣や健康要因のデータも収集しました。

そして、2年の研究期間中に行われたMRIによる脳スキャンの結果と、参加者の食生活を照合して分析したところ、和食を食べている女性は、西洋型の食事をしている女性と比べて脳の萎縮が少ないことがわかりました。なお、「野菜・果物・乳製品食」を摂取した人では食事と脳の大きさの関係がはっきりわかりませんでしたが、これはサンプル数が少なかったためと考えられています。


サラ氏らが「興味深い」としているのは、和食による脳萎縮の抑制が見られたのは女性だけだったという点です。男性の場合、伝統的な日本の食生活を送っていても、他の食生活を送っている人と同様に脳のサイズが縮小していました。

分析結果に性差が出た理由は、大きく分けて2つ考えられます。1つ目は生物学的な違いによるものです。例えば、豆類のイソフラボンをはじめとする植物性エストロゲンや、マグネシウムといった特定の栄養素は、男性の脳より女性の脳に対する保護効果の方が高い可能性があるとのこと。


2つ目は、男女間の食生活の違いです。研究では、喫煙など健康的な食事の利点を相殺してしまうマイナス要因は、女性に比べて男性の方がはるかに一般的なことがわかっています。また、男性の参加者は伝統的な食生活から逸脱することが多く、和食中心のグループに分類された男性であっても、女性に比べると麺類やアルコール飲料の摂取量が多い傾向がありました。

精製された炭水化物が多い西洋型の食事やアルコールの摂取は、いずれも脳の萎縮との関連性が指摘されています。

1日缶ビール半分のアルコールでも脳は萎縮することが判明、飲めば飲むほど指数関数的に悪化 - GIGAZINE


サラ氏らによると、日本食にはビタミンやポリフェノール、ファイトケミカル、不飽和脂肪酸が豊富なので、これが脳にポジティブな影響をもたらしている可能性があるとのこと。これらの栄養素はいずれも抗酸化作用や抗炎症作用を持っており、脳組織や脳神経の機能を最適に保つのに役立つとされています。

サラ氏らは、「食生活と脳の健康の間に見られた男女差を掘り下げるためには、今後さらに研究を行う必要があります」とした上で、「魚介類、大豆、みそ、海藻、シイタケなど、伝統的な和食の要素を食事に取り入れることは、認知機能だけでなく体全体の健康の改善にも役立ってくれるでしょう」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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