氷床の上の湖が27%も増加、グリーンランド

20年間で急増、「変化は今起きており、とどまるところを知りません」と研究者

2019.12.17
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グリーンランドの氷床が解け、表面にできた湖。こうした湖によって氷床表面は「暗く」なり、より多くの太陽光を吸収し、さらに氷が解ける可能性がある。解けた水が流出すると、海面上昇につながる。(PHOTOGRAPH COURTESY NASA GODDARD)
グリーンランドの氷床が解け、表面にできた湖。こうした湖によって氷床表面は「暗く」なり、より多くの太陽光を吸収し、さらに氷が解ける可能性がある。解けた水が流出すると、海面上昇につながる。(PHOTOGRAPH COURTESY NASA GODDARD)
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 グリーンランドの氷床が思いもよらぬスピードで崩壊しつつある。その勢いはとどまるところを知らず、現在、地球の海面を上昇させる最大の要因となっている。

 最近の研究では1992年〜2018年の間に流出した氷は3兆8000億トンに達すると推定されたほか、もし氷床全体が完全に解けると、海面はおよそ6メートル上昇すると言われている。(参考記事:「グリーンランドの氷床で異変が拡大、流出加速」

 グリーンランドの氷床については、得られているデータ量が多いため、科学者はこれまでそのすべてを処理・解釈しきれていなかった。

 しかし今回、そうした膨大なデータを最新手法で処理することで、グリーンランドの氷床に関して詳細な知見が得られた。解析したデータは、NASAの地球観測衛星テラが20年かけて撮影した1万8000枚もの画像だ。その観測範囲は氷床全体に及び、2000年〜2019年にかけて毎年、融氷期の氷床を毎日記録した。

 これほど多くの画像データを処理するには通常なら1年以上かかる。しかし今回はグーグルアース・エンジンを利用したクラウド処理によって、わずか5日で全データを解析することに成功した。

氷床の上にできる湖は27%も増えていた

 解析の結果、氷床にできる湖の数は、過去20年間で平均27%も増えたことが明らかになった。この9年間は特に極端な状況が続いており、2019年に出現した湖は過去5番目に多かった。これより多かったのは、2011年、2012年、2015年、2016年だ。

 この成果は、12月9日〜13日に米国サンフランシスコで開催された米地球物理学連合(AGU)の年次集会で発表された(論文は未発表)。これによると、2019年の北極地方の夏は暑く、グリーンランドの氷床のいたる所に氷が解けてできた湖が見られたが、こうした状態がグリーンランドの「新たな標準」になる可能性もあるという。(参考記事:「未曾有のペースで進む グリーンランド氷床融解」

 この研究では、単なる数字上の議論にとどまらず、湖が現れた場所にも注目した。グリーンランドの氷床はややドーム状になっており、内陸に行くにつれ標高が高くなり気温が下がる。ところが衛星画像によると、内陸の標高2000メートルの氷床にも湖が出現していたことがわかった。2050年まで湖は現れないだろうと予想されていた場所だ。

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