米インコの絶滅、やはり人間が原因か、DNAで判定

百年前に絶滅したカロライナインコ、遺伝子に衰退や感染症の兆候みられず

2019.12.17
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カロライナインコ(Conuropsis carolinensis)の標本。スペイン、ジローナの個人コレクションの中で保管されていた。20世紀初頭に収集されたと考えられている。(PHOTOGRAPH BY MARC DURÀ)
カロライナインコ(Conuropsis carolinensis)の標本。スペイン、ジローナの個人コレクションの中で保管されていた。20世紀初頭に収集されたと考えられている。(PHOTOGRAPH BY MARC DURÀ)
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 今から百年以上も前、米国の空は今よりも彩り豊かだった。オレンジ色、黄色、緑色をまとったカロライナインコの群れが、まるで白昼の花火のように、大空をめまぐるしく舞っていたからだ。

 インコとオウムの仲間としては、カロライナインコ(Conuropsis carolinensis)は米国で唯一の在来種であり、ニューイングランド(米国北東部の6州)南部から南はフロリダ州、西はコロラド州まで広く分布していた。だが、個体数は激減し、ついに1918年、オハイオ州のシンシナティ動物園で飼われていた最後の1羽が死んだ。以来、カロライナインコは米国で絶滅の危機を象徴する存在となった。世界でドードーが担っているのと同じ役回りだ。(参考記事:「ドードー、絶滅種再生の可能性」

 最後のカロライナインコが米国の空に羽ばたいてから1世紀経った。しかし、絶滅をめぐる謎はいまだ消えていない。体長30センチほどのこの鳥を絶滅へと追いやったのは、果たして人間だけだったのだろうか? 

 確かに、カロライナインコは農家から作物の害鳥とみなされ、群れごとやすやすと駆除された。死んだ仲間の周りに集まるという、不運な習性があったからだ。20世紀にはその羽が帽子の飾りとして人気を博し、羽を得るために狩られた。さらには主に農地の開拓により、営巣に使っていた木々がなくなり、生息地が破壊された。

 だとしても、別の要因を考える専門家もいる。火災や洪水などの自然災害により生息域が分断されたり、家禽(かきん)を通じて悪い病気が広まったりしたことも関係があるのではないか、という見方だ。

 このほど、国際研究グループがカロライナインコのゲノム解読に成功した。そして、この鳥の突然の減少は、人間の干渉によって招かれたものであり、そのせいで絶滅した可能性が高いと結論付けた。論文は12月12日付けで学術誌「Current Biology」に掲載された。

「こうした研究は不可欠です。保全に携わる現代の人々にとって、いま危機にある種への脅威を予測し、減らすのに役立つかもしれませんから」と、ニューヨークにあるケリー生態系調査研究所(Cary Institute of Ecosystem Studies)の生態学者で、米コネチカット大学のケビン・バージオ氏は評価する。なお、氏はこの研究に参加していない。

 今後の保全計画のため、「どの人間活動の打撃が最も大きかったのか、どうすればほかの種に同じことが起こるのを防げるのか、解明しなければなりません」とバージオ氏は話す。(参考記事:「インコとオウム、その人気がはらむ危機と問題」

【動画】減りゆくオウム、原因は?
オウムは知能が高く、愛嬌もあり、ペットの鳥では一番人気と言っていい。ところが今、ペット取引や生息地破壊による危機に直面し、鳥類の中で最も絶滅が危ぶまれるグループの1つになっている。(解説は英語です)

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