クリスマスカードが大事にされる理由は、たいていシンプルだ。孫の小さな手形が押されていたり、海外に住む友人から送られた写真だったり、単にクリスマスらしい喜びをくれるものだったり。
1843年、英国の公務員ヘンリー・コールがクリスマスカードを思いついた時、彼の頭にあったのはもっと実利的な目的だった。彼は友人に頼んで、貧しい者を救うシーンや、家族愛に溢れたシーンを描いたカードをデザインしてもらった。元々1シリングで売られていたこのカードは、現在では、数千ドルという高値になっている。(参考記事:「クリスマスの歴史とトリビア」)
電子的にメッセージを送る方法がいくらでもある現代において、そもそもカードというのはまだ「あり」なのだろうか?
もちろん「あり」だ。だからこそ、米グリーティングカード協会によれば米国人は今年クリスマスカードを16億枚も購入するのだ。デジタルコンテンツの需要は圧倒的だが、消費者は大切な瞬間を手に取れるものとして残したいと考えていると、インターネットベースの出版社、米シャッターフライの企業広報部門シニアディレクター、ソンドラ・ハーディング氏は話す。(参考記事:「サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまで」)
「今も伝統的な家族写真というのはありますが、たいていはもっとカジュアルなスナップ写真が添えられます」。ハーディング氏が言うには、スマートフォンの高解像度カメラで撮った写真を使って、自分たちらしいカードにする人が増えているそうだ。
デジタル印刷技術の進歩で、カードに箔押しやキラキラ加工をできるようになっている。さらにAIを使ったサービスなら、ベストな写真を選び、サイズを調整し、カードにレイアウトまでしてくれる。
一方で、世界的に有名なアーティストたちは、どんなクリスマスカードを送っているのだろう?
米スミソニアン協会アメリカ美術公文書館のメアリー・サヴィグ氏と同僚たちは、寄付された紙きれやメモ、絵などが詰まった大量の箱の中からグリーティングカードを掘り起こし、2012年に『Handmade Christmas Cards Sent by Famous Artists to Their Friends(有名アーティストが友人たちに送った手作りクリスマスカード)』という本を出版した。
著名な芸術家たちが友人や仕事仲間に季節の挨拶として送った、水彩画、エッチング、シルク印刷、描画、ミクストメディア作品等を収録している。
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