ここ50年で70%減少 外洋性のサメとエイをどう守る?

漁業が減少の主な原因と考えられ、国際取引規制、持続可能な漁業の実現が急がれる

2021.01.31
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絶滅の危機にあるヒラシュモクザメ(写真はバハマ沖で撮影)。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
絶滅の危機にあるヒラシュモクザメ(写真はバハマ沖で撮影)。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 大陸から遠く離れた外洋は、昔から数多くのサメやエイが暮らす場所だ。地球上で最も高速に泳ぐサメと言われるアオザメは、時速30キロ超のスピードで獲物を追い掛ける。アカシュモクザメは左右に離れた目などの特殊な感覚器で、大洋を探りながら、餌を求めて泳ぎ回る。

 外洋は広大で、しかも人も近寄らない。アオザメやアカシュモクザメは外洋を広範囲にわたって移動するから、漁師はもちろん、生物学者にさえ、現在、これらの生物が乱獲で危機にあるとは、にわかに信じられなかった。 (参考記事:「【動画】NY沖に巨大な魚群が出現、サメ乱舞」

 今、サメやエイの個体数の網羅的な調査と、分析で、憂慮すべき現状が分かってきた。学術誌「Nature」に21年1月27日付で発表された論文によれば、カナダ、サイモンフレーザー大学のニコラス・ダルビー氏とネイサン・パコルー氏は、サメとエイ18種の個体数が1970年以降に70%減少していることを突き止めた。

 ダルビー氏は、国際自然保護連合(IUCN)サメ専門家部会の共同議長でもあり、「10年前、外洋性のサメの一種を絶滅危惧種に指定するかどうかで、激論を交わしました」と振り返る。

 1970年にはありふれた種だったヨゴレの「現在の個体数を計算して、驚きのあまり言葉を失いました」とダルビー氏は話す。

 ヨゴレは「この60年で98%減少していました。このパターンは3つの海で一貫していました」(ダルビー氏)。ヨゴレは現在、IUCNのレッドリストで「近絶滅種(Critically Endangered)」に分類されている。 (参考記事:「絶滅危惧の深海サメ、コロナが危機に拍車か」

 アカシュモクザメとヒラシュモクザメも同様の運命にさらされている。外洋性のサメが漁の対象になることはほとんどないが、捕まった場合は、たいてい、肉やひれ、えら、肝油が販売される。

 専門家は、サメにとっても海の健康にとっても不安なニュースだと口をそろえる。外洋性のサメは頂点捕食者であり、下位の捕食者を抑制することなどによって、食物網で重要な役割を果たしているからだ。

ギャラリー:襲撃するサメ集団、産卵するハタ、驚異の光景に密着3000時間 写真7点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:襲撃するサメ集団、産卵するハタ、驚異の光景に密着3000時間 写真7点(画像クリックでギャラリーページへ)
サメに捕らえられたハタ。サメの方がハタよりもずっと勝率は高いだろうと思われるが、実はかなりの獲物を取り逃がしていることに、バレスタ氏は気づいた。「この矛盾に、心が揺さぶられました。サメは、単なる殺し屋というわけではないのです」(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA)

次ページ:世界中からデータを収集。サメを知る動画も

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