大陸から遠く離れた外洋は、昔から数多くのサメやエイが暮らす場所だ。地球上で最も高速に泳ぐサメと言われるアオザメは、時速30キロ超のスピードで獲物を追い掛ける。アカシュモクザメは左右に離れた目などの特殊な感覚器で、大洋を探りながら、餌を求めて泳ぎ回る。
外洋は広大で、しかも人も近寄らない。アオザメやアカシュモクザメは外洋を広範囲にわたって移動するから、漁師はもちろん、生物学者にさえ、現在、これらの生物が乱獲で危機にあるとは、にわかに信じられなかった。 (参考記事:「【動画】NY沖に巨大な魚群が出現、サメ乱舞」)
今、サメやエイの個体数の網羅的な調査と、分析で、憂慮すべき現状が分かってきた。学術誌「Nature」に21年1月27日付で発表された論文によれば、カナダ、サイモンフレーザー大学のニコラス・ダルビー氏とネイサン・パコルー氏は、サメとエイ18種の個体数が1970年以降に70%減少していることを突き止めた。
ダルビー氏は、国際自然保護連合(IUCN)サメ専門家部会の共同議長でもあり、「10年前、外洋性のサメの一種を絶滅危惧種に指定するかどうかで、激論を交わしました」と振り返る。
1970年にはありふれた種だったヨゴレの「現在の個体数を計算して、驚きのあまり言葉を失いました」とダルビー氏は話す。
ヨゴレは「この60年で98%減少していました。このパターンは3つの海で一貫していました」(ダルビー氏)。ヨゴレは現在、IUCNのレッドリストで「近絶滅種(Critically Endangered)」に分類されている。 (参考記事:「絶滅危惧の深海サメ、コロナが危機に拍車か」)
アカシュモクザメとヒラシュモクザメも同様の運命にさらされている。外洋性のサメが漁の対象になることはほとんどないが、捕まった場合は、たいてい、肉やひれ、えら、肝油が販売される。
専門家は、サメにとっても海の健康にとっても不安なニュースだと口をそろえる。外洋性のサメは頂点捕食者であり、下位の捕食者を抑制することなどによって、食物網で重要な役割を果たしているからだ。
おすすめ関連書籍
絶滅から動物を守る撮影プロジェクト
今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:3,960円(税込)