2020年12月生まれのミラージュとシーザーは、米オクラホマ州の私設ふれあい動物園「グレーターウィンウッド・エキゾチックアニマルパーク」で生まれた多数のトラの最後の2頭であり、同園における繁殖および虐待とされる扱いのサイクルから逃れた最初の2頭でもある。
同園は2020年10月から入園禁止となっていたが、2021年12月23日、裁判所の判決により、オーナーのジェフ・ロウ氏およびローレン・ロウ氏は、施設やオンラインで動物を一般展示することが永久に禁止された。
同園はもともと、ネットフリックスの人気ドキュメンタリー番組「タイガーキング」の出演者である「ジョー・エキゾチック」ことジョセフ・マルドナド・パッセージ氏が所有していた。氏は2020年1月、殺人依頼と野生動物関連の罪で22年の実刑判決を受けている。園は氏のパートナーだったジェフ・ロウ氏が2016年に引き継いでいた。(参考記事:「トラ虐待と殺人依頼の罪で22年の刑に、米国の“タイガーキング”」)
米司法省は2021年1月、園から生後約7週間だったミラージュとシーザーを押収した。他の幼トラ8頭と母トラ4頭も一緒だった。
現在、ミラージュとシーザーは、コロラド州キーンズバーグにある動物保護施設「ワイルドアニマル・サンクチュアリ」内の4000平方メートル以上の土地で暮らしている。2頭はまもなく、同施設内の8万平方メートルものスペースで暮らす救出された若いトラたちのもとへ加わり、残りの一生を過ごすことになる。(参考記事:「Netflix「タイガーキング」出演者がまた起訴、動物虐待ほか」)
米司法省がオーナー夫妻を提訴
前所有者のジョー・エキゾチックと同じく、ロウ氏と妻ローレン氏も法的トラブルを抱えることになった経緯はこうだ。
2020年11月、司法省はロウ夫妻に対し、動物福祉法および絶滅危惧種法に繰り返し違反したとして民事訴訟を起こした。司法省は、夫妻が動物に獣医学的治療や適切な栄養、スペース、衛生状態を提供しなかったことで、動物たちの健康を「深刻な危険」にさらしていたと主張した。
挙げられた違反容疑によれば、政府検査官は2020年6月、ナラという名前の子ライオンが泥の中で動かなくなっているのを発見した。また、コンクリート床の檻に入れられた関節炎のオオカミ2匹、皮膚の下の骨が見えるほどやせたハイイログマ1頭、片足の不自由なフィッシャー1匹、焼けた瓦礫の下に埋められたトラ2頭の遺体も見つかった。サシバエが遺体にたかり、近くにいたトラやクマ、オオカミの耳も血まみれにしていたという。(参考記事:「失われた動物フィッシャーの再導入に成功、米ワシントン州」)
2020年6月、連邦判事はロウ夫妻に対し、動物保護施設「ビッグキャット・レスキュー」のオーナーであるキャロル・バスキン氏に園を譲渡するよう命じた。両施設の間では長らく訴訟が続いていた。ジョー・エキゾチックはバスキン氏の殺害を共謀したとして有罪になっている。
2020年10月にロウ氏は動物展示の認可が停止され、園の所有権を失った。しかし、ロウ氏はメッセージ動画販売サイト「Cameo(カメオ)」で自分の動物を登場させた動画を販売し続けたとナショナル ジオグラフィックは英語版のニュースで報じていた。当時はオンラインでの動物展示に関わる法律は存在しなかった。
2021年1月から8月にかけて、司法省はロウ夫妻から146匹の動物を押収した。これは司法省が動物園の動物を押収した数としては過去最多だ。動物たちはさまざまな保護施設に引き取られた。