ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州のルール地方は、かつて採鉱と製鉄を中心とする産業でにぎわっていた。現在は、石炭を掘り上げた時に出る土(ぼた)を積み上げてできたぼた山や、文明が滅んだ後の世界を思わせるような工業跡地を再利用し、公園と屋外の文化スペースになっている。
最も有名なのは、野外プールやスケート場、遊歩道などを備え、世界遺産にも登録されているツェッヒェ・ツォルフェライン(ツォルフェライン炭坑業遺産群)だろう。「ルール地方を訪れた人がたいてい驚くのは、緑が非常に多いことです」と、ルール地域連合の理事長、カロラ・ガイス=ネットヘーフェル氏は話す。
ツォルフェラインは、東西に細長い、面積450平方キロメートルに及ぶ地帯を緑化したエムシャー景観公園の一部だ。エッセン市で自転車を借りて、自動車の乗り入れが禁止されサイクリングコースを走ろう。コースの多くは、以前の線路跡に作られたもの。徒歩で楽しむ人には、2021年に開通した全長約155キロメートルのトレッキングルート、ホーエ・マルク山道がある。
「このルートでは、工業用ビルの横を通り過ぎるなど、ほかにはない自然と産業文化の組み合せが見られます」と、ガイス=ネットヘーフェル氏は説明する。最寄りの人気スポット、ハルデ・ホーワードは、1億8000万トンもの鉱山廃棄物でできた高さ150メートルというとてつもなく大きなぼた山で、頂上に巨大な日時計が設置されている。
※「いつか訪れたい旅先25 2022年版 もう一度旅に出よう」ほか、旅の記事は「旅・文化の記事一覧」でまとめてご覧いただけます。
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