米国カリフォルニア州にあるジャイアントセコイアの木は、世界の人口が現代の日本よりも少なかった時代、つまり3000年以上も前から、その場所に立っている。
ワシントン州のホー雨林(レインフォレスト)では、キノコや湿ったシダの上に、苔に覆われたトウヒやツガの木がそびえている。これらの木々は「科学がこの世界に存在するようになってからずっと、根を土の中に伸ばし、種子を空中に放ってきた」と、科学者のジェリー・フランクリン氏、ルース・カーク氏はその共著書に書いている。
上に挙げた例はどちらも原生林(ひとつは乾燥林、もうひとつは湿潤林)であり、そこでは複雑な生命に囲まれながら、古代の木々が数多く生息している。世界の成熟した原生林は、新たな脅威に直面しながらも、多様な生命を支え、きれいな水を蓄え、地下で異なる木々とメッセージを伝達し合っている。
また原生林は、若い森林よりもはるかに多くの炭素を保持している。オレゴン州にある6つの国有林の調査からは、森林の炭素の42%は、大きな木の上位3%によって保持されていることがわかっている。(参考記事:「森の再生で過去100年分のCO2を帳消しにできる」)
炭素貯蔵量が多い場所では、動植物の多様性がほかの場所よりも豊かになる傾向がある。たとえばホー雨林では、木のてっぺんにのぼってみると、枝の上にのった土から幼木が芽を出しているのが見つかることがある。「森の樹冠には独自の生態系があり、多種多様なコケ類、地衣類、昆虫、鳥が生息しています」と、オレゴン州立大学の原生林の専門家ビバリー・ロー氏は言う。「木の上はまさに別世界なのです」
原生林を守るための最初の一歩
近年、成熟した原生林は、気候変動によってこれまで以上に大きな脅威にさらされている。森林火災や干ばつ、猛暑、暴風雨、害虫の侵入などだ。それにもかかわらず、今も世界各地で原生林の伐採は今も続いている。(参考記事:「世界で巨木が死んでいる、115年間で原生林の3分の1超が消失」)
2022年4月22日のアースデイに、原生林の一部が残るシアトルのスワードパークを訪れたジョー・バイデン米大統領は、米国初となる、国内の成熟した原生林の天然資源調査を義務付ける大統領令に署名した。この大統領令は米国の科学者たちに、それぞれの森林にもたらされる具体的な脅威を詳述するよう求めている。(参考記事:「いまや10億人規模、「アースデイ」はどのように広まったのか」)
「この国の至るところに、かつてはこうした森がもっとたくさんあったのです」と、バイデン氏は述べた。