この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2022年6月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。
スペインオオヤマネコは、20年前には絶滅の瀬戸際にあった。だが、スペインで進められてきた飼育下での繁殖や、人目を避ける習性のおかげで、数が回復しつつある。
絶滅が危惧されていたスペインオオヤマネコは、わずか20年で保護活動の成功例に転じた。2002年、イベリア半島の地中海沿岸に生息する個体数は100匹以下だった。
だがその後、10倍に増え、現在は少なくとも1100匹がスペインとポルトガルに生息している。
この劇的な復活は、飼育下での繁殖や、自然遺産としての地位、そして保護活動家でも驚くほどの適応能力によるものだ。
2002年、欧州委員会の「ライフ」プロジェクトの下、20を超す団体が結集してスペインオオヤマネコの救済に乗り出した。当初、主な食料であるアナウサギが感染症や乱獲によって激減したことで、スペインオオヤマネコは絶滅しかけていた。
しかし、スペインオオヤマネコは飼育下でも容易に繁殖し、スペインやポルトガルの生息地に放された個体の大部分は生き延びている。そうして再導入された地域の一つが、スペイン南部のシエラ・デ・アンドゥハル自然公園の周辺だ。オオヤマネコたちは、民家の近くやオリーブ農園、幹線道路沿いなどで、人目につかないように生きる方法を学んできた。
こうした適応能力のおかげで生息数が増え、2015年には国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト」で、近絶滅種から絶滅危惧種へと絶滅の危険度が引き下げられた。
スペイン南部のアンダルシア州でスペインオオヤマネコの回復計画の地域コーディネーターを務めるフランシスコ・ハビエル・サルセド・オルティスは、その様子を見てきた。
「スペインオオヤマネコはイベリア半島の自然の象徴であり、その保護活動は私たちの責務でした。20年にわたる取り組みのおかげで、今や世界的にも有数の成功例となっています」と、サルセドは話す。