世界遺産ストーンヘンジ、有名遺跡の「当たり前でない姿」を撮る

夕方から夜にかけて照明を細かく調整、ナショジオ2022年8月号の表紙に

2022.07.30
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ナショナル ジオグラフィック2022年8月号の表紙写真を手がけたルーベン・ウー氏の撮影現場に同行した。(VIDEO BY REUBEN WU AND PAUL JOHN BAYFIELD)(解説は英語です)

 米国シカゴを拠点に活動する英国人写真家でビジュアルアーティストのルーベン・ウー氏は、子どもの頃、父親が購読していたナショナル ジオグラフィック誌の写真を目にして、その世界に出合った。

 いつか自分の写真が表紙を飾る日を夢見ていたウー氏は、ナショナル ジオグラフィックからある有名な先史時代の遺跡の撮影を依頼されたとき、二つ返事で引き受けた。

 そして2021年夏、ウー氏はイングランドのウィルトシャーにあるストーンヘンジを訪れた。ドローンと人工照明を使って遺跡を撮影していたとき、通り過ぎる車のクラクションを耳にして、現代と先史時代の対比を実感したという。ストーンヘンジのすぐそばには幹線道路A303号線が通っているため、撮影するウー氏とライトアップされたドローンを目にしたドライバーもいるかもしれない。ちなみに、A303号線は2020年の計画案が実現すれば、地下トンネルになる予定だ。(参考記事:「ストーンヘンジに地下トンネル計画、英政府が承認、賛否両論」

 ウー氏は、2020年にナショナル ジオグラフィック協会が主催した「ストーリーテラーズ・サミット」の講演者の一人だった。年に一度、同協会本部で開催されるこのサミットは、写真家、著作家、映画製作者、ジャーナリストを招いて、様々なストーリーを聞くイベントだ。このイベントをきっかけに、ナショナル ジオグラフィック誌の写真編集者が自分の作品と、現代のテクノロジーを利用したストーンヘンジの新たな研究とを結び付けて考えてくれたことをうれしく思うと、ウー氏は話す。

 ナショナル ジオグラフィック誌2022年8月号の表紙に初めて自身の写真が起用されたものの、まだ実感がわかないと語るウー氏に話を聞いた。

約3時間かけて撮影したストーンヘンジのタイムラプス動画。(PHOTOGRAPH BY REUBEN WU)

表紙写真の背景にあるストーリー

 考古学の象徴的な遺跡であるストーンヘンジは、ロンドンから南西に約150キロ離れたソールズベリー平原に、4500年以上前から立っている。その起源は諸説あるものの、いまだはっきりしたことはわかっていない。昔から多くの観光客を魅了し、毎年夏至には日の出、冬至には日の入りの時刻に数千人がこの場所を訪れる。 (参考記事:2022年8月号特集「どこから来た? ストーンヘンジ」

 世界的に有名なストーンヘンジは、とりわけ英国人にとって特別な存在だ。イングランドで育ったウー氏のように、子どもの頃に学校の遠足で訪れたという人も多い。

「もちろん、大人になってからも訪れることはできますが、成長するにつれてそれは違った意味を持つようになります。あまりにもたくさんのストーンヘンジの写真を見ているので、それが当たり前のような存在になってしまうのです」(参考記事:「ギャラリー:英国の世界遺産ストーンヘンジ 写真9点」

ドローンの光の下、ストーンヘンジの巨石の前に立つウー氏、助手でドローン操縦士のザク・ヘンダーソン氏(左)、ストーンヘンジの管理団体「イングリッシュ・ヘリテージ」の警備員ダンカン・ロバーツ氏(右)。(PHOTOGRAPH BY REUBEN WU)
ドローンの光の下、ストーンヘンジの巨石の前に立つウー氏、助手でドローン操縦士のザク・ヘンダーソン氏(左)、ストーンヘンジの管理団体「イングリッシュ・ヘリテージ」の警備員ダンカン・ロバーツ氏(右)。(PHOTOGRAPH BY REUBEN WU)
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次ページ:撮影で目指していたこと

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