動物は感情をもつのだろうか?
イヌやネコが、幸福感やストレス、不満、脅えを感じていることは、これまでの調べでわかっている。イヌの場合は飼い主の感情を察することもできるようだ。(参考記事:「飼い主の感情は犬に「伝染」する、どうやって?」)
ほかの動物たちはどうだろうか? 行動学の研究から、動物たちが認知能力だけでなく感情を持っていることがわかってきた。ナショナル ジオグラフィック2022年10月号の特集「動物たちの心」では、共感や思いやりといった複雑な感情を示す動物たちを紹介することにした。
しかし、動物の心を写真で表現するのは容易でない。今回の企画では、表紙のネコ(スフィンクス)を撮影した写真家ビンセント・ラグランジュ氏のほか、数人の優れた写真家に協力を依頼した。そのうちの2人、ヤスパー・ドゥースト氏とパオロ・ベルゾーネ氏にどのようにして動物の心を写真に収めたかを聞いた。
特集記事の舞台裏
ドースト氏は、鏡に映る自分の姿をじっと見つめるニホンザルと、MRI(核磁気共鳴画像装置)検査を受けるオーストラリアン・シェパードを撮影した。撮影にはそれぞれ違った難しさがあり、その場で考え、解決しなければならなかったという。
オーストラリアン・シェパードを撮影する時は、撮影用の照明が使えなかった。イヌを驚かせてしまうのと、MRI画像に影響が及ぶかもしれなかったからだ。
「読者がイヌと一緒に検査室にいるように感じてもらえるよう、被写体と距離を保ちながらも親近感のある写真が撮れるように工夫をしました」とドゥースト氏は語る。
ニホンザルを撮影したのは、野生のニホンザルが自由に出入りできる公園の中だ。動き回るサルたちに集中力が削がれた。そこでドゥースト氏はサルを追いかけるのではなく、忍耐強く、じっと撮影の機会を待ったという。
撮影は別々に行ったドゥースト氏とベルゾーネ氏だが、今回の特集記事が持つ意味については一致している。
ドゥースト氏は記事を通して読者が動物に対する見方を変え、共感を覚えてくれたらと願っている。人間と動物に「大きな違いはありません」と彼は言う。「見かけや行動が違っていても、まったく異なる存在ではないし、人間が動物よりも重要だということでもありません」
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