南米エクアドルで、新種の陸生ヘビ3種が発見された。いずれもサンゴヘビモドキ(Atractus)属の仲間で、2022年9月15日付けで学術誌「ZooKeys」に記載された。
発見は偶然だった。2021年11月、生物学者アレハンドロ・アルテアガ氏のチームは、絶滅が危ぶまれているヒキガエルを探してエクアドル南部の雲霧林を調査した。しかし、目当てのカエルを目にすることはできず、意気消沈したアルテアガ氏らは、帰り道に食事を求めてアマルサという小さな街に立ち寄った。
「食事を調達できるドライブスルーのレストランのようなものはありませんから、民家のドアを叩いてみるしかありません。もし人がいれば、彼らは喜んで食事をふるまい、いろいろな話を聞かせてくれます」とアルテアガ氏は言う。アルテアガ氏は、エクアドルの生物多様性保護を目指す新たなNGO「カマイ財団」の研究者だ。
ある地元の女性が、アルテアガ氏らを家に迎え入れてくれた。彼女は地元でとれた魚を調理しながら、アルテアガ氏らが両生類やヘビの話をしているのを聞いていた。
「するとその女性が、家族の墓参りに行くとヘビをよく見かけると言うんです」とアルテアガ氏は言う。
女性の説明を聞いたアルテアガ氏は、それはサンゴヘビモドキ属のヘビではないかと考えた。地中で多くの時間を過ごすヘビで、エクアドルの同地域で科学的に記録された例はなかった。にわかに活気づいた研究者らは、少し寄り道をして、丘の斜面にある墓地を何時間か見て回ることにした。
「驚くことに、墓の脇のやわらかい土の中から、ほんとうにヘビが2匹見つかったのです」とアルテアガ氏は言い、調査の間、墓は一切掘り返していないと付け加えた。
腹の黄色いヘビの出現に驚かされたチームは、さらに多くの時間を割いて一帯の調査を進め、地元の学校教師ディエゴ・ピニャンさんが採集したヘビの標本まで集めるに至った。その結果、陸生ヘビの新種を3種、論文に記載することができた。
アルテアガ氏らは、新種のヘビの名称を次のように提案している。Atractus Discovery(アトラクトゥス・ディスコウェリ)は、目が特に小さく、黄色い腹に黒い線が一本入っている。Atractus zgap(アトラクトゥス・ズガプ)は、黄色い腹で線は入っていない。そして、Atractus michaelsabini(アトラクトゥス・ミカエルサビニ)は、3種の中で「いちばんぽっちゃりしている」と、アルテアガ氏は言う。
「地元の人々の観察眼や信仰を決して侮ってはいけません。そこにはすばらしい発見が隠されている可能性があります」とアルテアガ氏は言う。
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