新型コロナの頭痛は何が違うのか、約2割は3カ月続くという報告も

痛みの種類や継続時間によって3タイプ、適切な治療法を

2022.10.05
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米バージニア大学医療センターで撮影された血管造影図。新型コロナウイルス感染に関連する頭痛は、三叉神経への影響を伴う微小血管の損傷に起因する可能性がある。(PHOTOGRAPH BY JOE MCNALLY, GETTY IMAGES)
米バージニア大学医療センターで撮影された血管造影図。新型コロナウイルス感染に関連する頭痛は、三叉神経への影響を伴う微小血管の損傷に起因する可能性がある。(PHOTOGRAPH BY JOE MCNALLY, GETTY IMAGES)
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 10年あまり前に外傷性脳損傷(TBI)を負ったヘザー・シュローダーさんは、頭痛とは長い付き合いがある。乗馬中の事故以来、断続的に襲ってくる片頭痛を投薬とボトックス注射でコントロールしてきた。しかし、2021年7月に新型コロナウイルスに感染したときの頭痛は、まさに「生き地獄」だったと、シュローダーさんは言う。

「TBI由来の片頭痛とは異なり、頭の上からばさりと毛布をかぶせられるように始まりました。だんだんと頭が痛くなるのではなく、突然痛みに襲われて、それが耐え難いほどにつらいのです」。米テネシー州ノックスビルに暮らす52歳のシュローダーさんはそう語る。「普段の片頭痛は、最高レベルを10点とすると、ひどいときで8点か9点くらいで、嘔吐や光過敏、片頭痛後の倦怠感などの症状を伴います。コロナ感染による頭痛は、10点満点中20点でした」

 市販の頭痛薬も片頭痛の薬も、その痛みを和らげてはくれなかった。頭痛は2週間継続し、睡眠も妨げられ、一度に15分から45分程度しか眠ることができなかった。「知人の多くは、コロナ感染による隔離期間を、テレビを見たり読書をしたりして過ごしていましたが、私は頭に冷湿布をのせて、ひたすら頭痛に耐えていました」

 こうした経験を持つ人は、決してシュローダーさんだけではない。2022年5月11日付けで医学誌「Headache」に発表された総説論文によると、急性期の新型コロナ患者の約半数が頭痛を発症しており、約4人に1人は最初に現れた症状が頭痛だったという。新型コロナは呼吸器系疾患に分類されるが、同1月3日付けで医学誌「The Journal of Headache and Pain」に発表された論文によれば、中等症から重症の患者の約5人に1人は、最もつらかった症状として、頭痛、頭の中に霧がかかったようにぼんやりする「ブレインフォグ」、味覚・嗅覚障害などの神経症状を挙げている。

 上記の割合は、実際よりも少なく見積もられている可能性が高い。「頭痛がどの程度報告されるかは、調査対象が入院患者か外来患者かによって異なります」と語るのは、米ニューヨーク大学ランゴーン医療センターの頭痛研究主任で神経科医のミア・トバ・ミネン氏だ。「入院患者の場合、他に注目される症状が多いこともあって、頭痛はおそらく実際よりも少なく報告されていると思われます」(参考記事:「めまい、混乱、言葉が出ない…コロナは軽症でも認知力低下の恐れ」

新型コロナによる頭痛の3タイプ

 頭痛は新型コロナの初期症状として一般的だ。たいていは両側性、つまり頭部の両側で起こるが、「頭全体」が痛いと訴える患者もいる。痛みの強さは、中程度から激痛までさまざまだが、過去の頭痛よりもはるかにきついと言う人もいれば、片頭痛と同じくらいだと言う人もいる。しかし、前出の「Headache」誌の論文によれば、頭痛の既往歴がある人の47〜80%は、新型コロナの頭痛は過去の頭痛とは異なり、突然、強烈な痛みに襲われると述べている。

 例えばシュローダーさんの場合、以前の片頭痛はゆっくりと始まったため、なるべく光を避けたり、薬を飲んだりする時間を取ることができた。一方、新型コロナの頭痛は瞬時に襲ってくるうえ、感染後は片頭痛の症状も変化したという。「片頭痛は以前よりもはるかにコントロールが難しくなり、秋や初春には頻度もかなり増えました」とシュローダーさんは言う。

 シュローダーさんの夫のジェシー・トラックスさんも、スポーツが原因でTBIを負い、妻と同様、ワクチンを接種した4カ月後に新型コロナに感染した。トラックスさんもまた頭痛を発症し、その痛みはTBIによる頭痛とは明らかに異なっていたと述べている。「新型コロナ頭痛の痛みは、歯科医のドリルが神経に当たったときのそれに似ています」。トラックスさんの場合、普段の頭痛は前頭部周辺に帯状に発生するが、新型コロナ頭痛は首の付け根と後頭部に起こり、10日間も続いたという。

 ニューヨーク大学グロスマン医学部の神経学者ジェニファー・フロンテラ氏によると、新型コロナの急性期患者が訴える頭痛は、次に述べるように主に以前から存在する3つのタイプの頭痛と似た症状を示し、「片頭痛類似型」「緊張型」「持続性連日性」に分けられる。

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